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特定選手のシステムとジャイールシステム

 ジェフは第5節から左ウイングのジャイールが空けた左サイドのスペースを、トップ下のナムが埋めるために戻ってくる守り方をしています。
 ジャイールは大岩が左SBに起用されSBがオーバーラップを仕掛けると中盤で中に切り込んでくるので、守備時にはちょうどジャイールとナムが入れ替わるような形になります。
 ジャイールの課題である守備と推進力をナムと大岩がフォローし、ジャイールはその分ボールを持った時の攻撃面で貢献する。
 利便上、勝手に"ジャイールシステム"と名付けましたけど、1つの考え方としてはなるほどなと思うシステムです。



 特定の選手を活かすためのシステムにトライするというのは、そこまで珍しいことではないと思います。
 例えば2007年のジェフでは、日本人には珍しい決定力のある新居を活かすシステムが作られていました。
 前年の途中オシム監督からチームを引きついだアマル監督ですが、基本的な戦術はオシム監督時代と同じでした。


 守備に関しては基本リベロは誰もマークを見ず、その他の選手が相手CB1人を残してマンマークで付く形でした。
 そのため、相手が3-5-2ならジェフも3-5-2で対応し、相手が4-4-2ならジェフは3-4-3で対応することになります。
 07年のJリーグはちょうど主流システムが、3バックからジェフの苦手としていた4バックへ移行が完了した時期でした。
 ほとんどのチームが4バックとなり、ジェフは今までの戦い方だと3トップで戦わなければなりません。
 それまでのオシム流のサッカーでは3トップの場合セカンドストライカー(林やハースなど)とトップ下(羽生など)がウイングになって相手SBを見ることになるわけですが、ウイングでは新居のよさである決定力は活きてきません。
 かといって1トップをこなせるようなタイプでもなく、ジレンマが生まれました。


 練習では4バックも試していたこともあったようですけど、長年3バックで戦ってきたジェフはSBが不在でうまくいかなかったようです。
 もしアマル監督がもう1年指揮を執っていれば4バックに移行していたのかもしれませんが。
 そこでアマル監督は中盤から前をゾーン気味に変えて、トップ下の羽生が相手のアンカーを見ながらSBへの守備にも行くシステムに変更。
 これによって相手が4バックでも3-5-2を維持できるようになりました。



 お父さんのオシム監督は、その07年に日本代表で俊輔システムをしき、アジアカップを戦っていました。
 雑誌のインタビューでオシム監督自身が、俊輔を活かすためには運動量豊富なSB、クロスを受けられるCFW、サイドチェンジを受けられる選手などが必要だという話をしており、実際にそれをやった形です。
 俊輔のスピードや守備などの課題だけでなく、クロス等を受ける選手を起用し俊輔の良さも活かそうという狙いが感じられます。
 しかし、俊輔だけでなく同時に憲剛や遠藤を起用した結果、運動量やスピードに欠けたチームになってしまった印象で。
 西部謙司さん攻撃を重視していたと分析されていますが、オシム監督は攻撃的なサッカーとは走ることだと言っていたほどの人で、スピードの重要性も常日頃から行っていただけにスッキリしない部分があります。
 ポゼッションを重視したのは事実なのでしょうけど、それだけの理由では納得しにくいですし、いろんな人の意見を呼んでも未だにどういった意図だったのか消化しきれていない部分があります。



 ジャイールシステムを見て最初に思い出したのが、石崎監督の頃に柏が行っていたフランサシステム。
 攻撃時はフランサがトップ下の位置でチャンスを作り李忠成が前線でプレーし、守備時は李忠成が相手ボランチまで下がって守備をしてフランサはそのまま前に残るといった感じだったはずです。
 攻撃に特徴のある選手が攻め残って守備はせず、他の選手が懸命に走って穴を埋めるという意味でジャイールシステムに近い印象を受けます。


 ただ、先日の群馬戦では、ナムはあまり左サイドを埋める役割を行っていないようにも見えました。
 ナムが裏へ飛び出す役割を任されていたため左サイドまで戻る余裕がなかったのか、相手が3バックだったため戻る必要がないと考えたのか、あるいはジャイールシステム自体が考え直されたのか…。


 しかし、実際の群馬は5-4-1でサイドには2人いたことが多く、その影響でサイドから攻め込まれることも多かったと思います。
 群馬戦の前半には健太郎が左のカバーに入って、中央が1人になったため逆サイドの谷澤が大きく中に絞らなければならず、その分右が空いてしまうという問題も見受けられました。
 例えば一般的に3バックで守る場合でもサイドやボランチがDFラインまで下がって4人で守ることが多いように、3人で広いピッチをカバーするというは困難だと思います。
 ですから、今期の試合後半によく見られるように、ポジションを明確に変えて4-4-2でジャイールがFWで、ナムなどが左サイドで固定してプレーする時の方が、綺麗に整列して穴なく守れているように思います。


 ならば初めからジャイールがFWでプレーして、ナムなどを左サイドで使ったほうが良いのではないかという話になるかもしれません。
 しかし、これまでの4-4-2を見ていると、ジャイールは中盤の狭いエリアでボールを受けたりシンプルにパスを回すというような中盤の選手としてのプレーが得意ではないため、トップ下が不在という形になり中盤とFWの距離が空いてしまうことが多い。
 かといって、ジャイールのプレーを見ていると1トップで体を張ったり、ポストプレーで周りを活かすというような選手でもないため、ジャイール1トップの4-5-1も無理がある。
 基本的にスペースがあって前を向いてボールを持てれば良さの出るジャイールですけど、細かなプレーというのは苦手な選手ですから、比較的スペースのあるサイドから自由に攻撃させてあげたほうが本人も活きるし、周りもスムーズに戦えるのかもしれません。
 ジャイールをFWにおいた4-4-2も、守備固めや相手が疲れてスペースが出てきたときのカウンターなら有効ですけど、メインとして使用するのは今のところどうなのかなぁと思います。


 ただ、ジャイールシステムにも課題はあって、トップ下(ナム)への負担が大きいこと。
 どうしてもトップ下がサイドにスライドしてスペースを消すため、守備ブロックを作るのに時間や動きにラグができてしまうこと。
 そして、中央に切り込んでいったジャイールが、今度は中央で守備の穴になってしまうということです。


 ジャイールも目の前に相手ボールホルダーが行けばチェックを仕掛けていきますが、基本的にそれは自分がボールを奪ってカウンターに持ち込めそうな時だけ。
 あくまでも自分で攻撃をするための守備でしかなく、他の選手と連携して守ろうとか後方の選手の助けになろうという意思感じられません。
 言ってしまえば気まぐれな守備でしかなく、健太郎草津戦後に前からコースを限定できていないと言っていたのも、ジャイールの守備の緩さが1つの原因になっていると思います。
 現代サッカーでプレスをかけない選手が1人でもいれば、そこから亀裂が生じてしまうわけで…。
 特に攻守の切り替えが遅く、攻めたら一度そこでプレーが切れてしまい、守備に戻ることもしないですから、どうしても相手の守備から攻撃への切り替えに対してそこで一歩遅れてしまいます。



 どのようなシステムを組むにしても、ジャイール本人の守備意識の改善は必須だと私は思います。
 ジャイールは年齢から考えてもまだまだ若く、将来のある選手。
 今からあまりにも特別優遇されて、手を抜くことばかりを覚えてしまってはもったいないというか、今後が心配になってしまいます。
 守備では大きな期待はいまさらしていませんけれども、ポジションに戻ること、攻撃から守備に移った際にしっかり反応すること。
 攻撃でも周りをシンプルに活かす形を増やして、圧力が厳しい状況でもプレーできるようになり、簡単にボールを失わないこと。
 シーズンを通して、このあたりを少しでも覚えていってほしいところではないかと思います。
 コメントなどを読むとピッチの外を出れば根は真面目な性格なのだと思いますし、ぜひ日本で成長して更なる一歩を踏み出してほしいですね。