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2013シーズンを振り返る 戦術編前半

 戦術面や選手起用の変化をまとめながら、今シーズンを振り返っててみたいと思います。
 今回は、当時のブログや選手のコメントなどを引用するという手法を試してみました。
ジャイール問題と米倉のSB起用
 今年初めのちばぎんカップでは、0トップ気味に谷澤をいわゆる"偽9番"のように起用した布陣で戦ったジェフ。
 2列目から米倉やナムが飛び出し、左サイドからジャイールが仕掛ける攻撃により3-0で勝利しました。
 ただ、同時から懸念はしていましたが、ネルシーニョ監督からの柏がちばぎんカップでは本気を出さないということもあり、コンディションの差が大きかったのではないかという面があります。
 また、柏の守備は裏のスペースへのケアがかなり弱かった印象があり、サイズ的には問題があるものの流動的な0トップがそこにうまくはまった印象もありました。

良い試合ではあったと思うのですけど、ジェフの選手たちのほうが体が仕上がって動けていましたし、そのまま比較するのは難しいだろうなと思います。
(中略)
後半は特にカウンター気味の展開になっており、前半のような遅攻の際にどれだけ攻撃の形を作れたかというと、若干物足りない部分があったのかなと。
ジャイールも前を切られると弱そうなところがありましたし、カウンターは良くても遅攻では苦労しそうな気もしますから、ジャイールに頼っているようだと心配かなとも思います。(2/18-ゆっくりいこう

 天皇杯FC東京戦途中からの0トップも似た展開で、相手の裏にスペースがあればカウンター気味の0トップでも前を向いてプレーできますが、その他の試合ではケンペスが不在だと高い位置で前を向く形を作れませんでした。
 相手に引かれた状態では、FWが起点になって2列目以降が拾うという展開がないと攻撃を作るのはなかなか難しいのかなと感じたシーズンでした。


 ちばぎんカップでは快勝したジェフですが、開幕戦ではトップ下に移った谷澤や米倉などの動きも少なく、2列目が高い位置でボールを受けようとしすぎて前線が渋滞。
 1トップとして起用されたケンペスも調整不足で動きが重い状態でした。
 その時はケンペスの起用は失敗ではないかと思いましたが、その後の活躍を見るとこの起用法も一概に間違いとは言いづらく、事実第2節では2ゴールをあげています。


 左サイドのジャイールに関しては、守備に戻ってこない課題がこの時点ですでに浮き彫りになっていました。

ジャイールが基本的に相手SBのオーバーラップについてこない。
相手から見て低い位置でボールを持った時にはさすがにチェックに行きますけど(ボールを奪えば攻撃に移れるという発想もあるのでしょう)、相手がオーバーラップすると簡単にキムが一対二の不利な状況になってしまう。(3/4-ゆっくりいこう)

 左SBも渡邊の負傷で本職の選手がいなくなり、代わりに入った不慣れなキムも守備を期待されての起用だったのでしょうが、ジャイールの穴を埋めきることは出来ませんでした。
 ジャイールは攻撃でも強引なドリブルからの大きな展開や正確なシュートなど個人技はありましたが、近くの選手を活かすプレーは出来ず自力での打開ばかりを狙う傾向にあってボールロストも多く、攻撃のリズムを作る上では支障がありました。
 それでも一発に期待したいという意図は、今季パスサッカーを目指すからこその停滞感を危惧したものではないかと思いますし、その狙いはわからなくはなかったとも思います。


 良くも悪くもジャイールが攻守に目立ってしまった序盤でしたが、チームとして目指すスタイルはこの頃から1年間一貫して「相手の間を取るパスサッカー」でした。
 ピッチを広く使うショートパスから、トップ下が相手のDFラインとMFラインの間でボールを受ける形と、そこを見せつつのサイドアタック。
 特にバイタルエリアを狙うことが序盤の第一目標で、これに関してはトップ下起用が多かった谷澤のコメントからも意図は明確に見えていたと思います。

谷澤達也「僕自身はマークされても相手の間でボールを受けることは意識しているし、うまく自分に食いついてくれればその裏のスペースをみんなで狙って行こうと話していたので。」(4/14-J's GAOL

 ただ、チームとしての意図はあったとしても、実際にトップ下が前を向いた状況でボールを受ける形を作れる回数は少なかったのも事実かと思います。
 序盤はパスを繋げても停滞感があり、そこから仕掛けられずシュートまで持ち込めない試合も目立っていました。


 引き分けが多く勝ちきれない試合が続きましたが、大きな変化があったのは3月末の北九州戦。
 右SB高橋が負傷し、右SHで起用されていた米倉が右SBで出場。
 2列目では前への意識が高すぎて行き詰ることの多かった米倉ですが、SBで起用されることにより積極的にアップダウンし精度の高いクロスを活かすことができるようになりました。
 これによって、ジェフは攻撃面で大きな武器を手に入れることになります。
■積極的な選手起用からの6連勝
 この頃の守備はDFラインが低く、押し上げも足りず中盤で後手に回ったり、セカンドボールが拾えなかったりといった問題がありました。
 ジャイールの穴の問題もあありましたが、スピードに不安のある山口智や竹内が裏のスペースを心配していたところもあったのではないかと。
 それに対して健太郎はプレスが効いていないのが問題だけれど、「後ろから押し出して前をいかせる」守備ができれば…という話をしています(4/7-ジェフ公式サイトにて)。
 そして、この発言の後からDFラインが極端に下がることが減り、若干問題が解消された印象でした。
 また夏場に全体が動けなくなってラインが下がってしまうのですが、これによりラインを上げようという意識はそれなりに高まっていったのではないかと思います。



 4月下旬から徐々にジャイールの出場機会が減っていきます。
 あれだけ守備が出来ず攻撃でも一発展開しか狙えなかったのだから妥当な判断だったと思いますし、個人的にはむしろ引っ張り過ぎた印象すら受けました。
 そして、右SHにも兵働のようなパサータイプの選手を起用し、ダブルトップ下のような布陣が増えていきました。

松本山雅戦では兵働と谷澤の2人が、ボールを受けて、反転して、パスを散らして…というような、トップ下のような仕事をメインにやっていた印象で。
2人がトップ下の仕事を一緒にやることによってマークが散らされ、1人では難しかった仕事もうまくいっている部分があるのかなと思います。(5/21-ゆっくりいこう

 これによってCBからバイタルエリアを狙う縦パスの受け手が、トップ下1人だけでなく2人なってターゲットが増え縦パスが通りやすくなっていった印象です。
 加えて右SHにパサータイプを置くことで、タメが作れて米倉を前に押し出す形も作りやすくなりました。
 これも今期の戦術において、非常に大きなターニングポイントの1つだったのではないかと。
 SHが中に絞って中盤を形成し両SBが積極的にアップダウンするという形が、今季デザインの大枠になります。


 シーズン終盤には左SHの田中も受ける動きがうまくなっていって、2列目の選手たち全員が縦パスを引き出して受けるプレーが出来るようになっていきますが、その原型がこの頃から見られたということになると思います。
 それまではジャイールや米倉など2列目にアタッカーも使っていこうという意思を感じた鈴木監督でしたが、この変化によってサッカーの方向性がより明確になり、ピッチ全体でパスを回していこうという形が出来ていきました。
 特にシーズン前半見られたのが、CBから斜めにトップ下やFWにパスを出して、斜め後方のボランチに落として、ボランチがまた斜めにサイドなどへ展開する…と、ジグザグにつないでいくパスワークですね。



 6月からはトップ下でスタメンとして大塚が起用されます。
 大塚は相手ブロックの間でボールを受けるのがうまいだけでなく、決定的なパスを出せる技術と視野を持った選手で、今季の狙いに非常に良くあう選手でした。
 谷澤と比較してシンプルにパスを出せる大塚が入ったことで、より効果的に素早くボールを動かせるようになっていった印象でした。


 同じ時期に、左SBには怪我から復帰した高橋が出場。
 当初は慣れない左SBでのプレーに戸惑っていた印象もありましたが、当初は主に守備面で貢献。
 それまで起用されていた大岩はドリブル対応などに課題がありましたので、その穴を埋めたことになります。


 左SBに慣れてくると、ビルドアップでも活躍するようになります。
 後方からタイミングよくスッと上がることでボールを引き出し、2列目の高さに入ることでボールの受け手を増やす形に。
 そこから健太郎や2列目の選手が近づいてきてシンプルにパスを繋ぎ、パスワークでタメを作って高橋が飛び出しいく…あるいは、右サイドに大きく展開する。
 高橋のビルドアップ能力はサイドを広く使うパスワークを狙うチーム戦術においても、右サイドのスペースを駆け上がる米倉を活かすために左サイドでタメを作る上でも、非常に重要な存在だったと思います。


 また、最終ラインでは粗削りな面もあったもののフィジカルの強いキムが入ることで、スピード面と強さがプラスされることになります。
 特に両CBはスピード面ではっきりと課題が出ていた印象ですから、裏への対応において重要な戦力だたと思います。


 こうしてジェフは、まだチームとしての課題は多かったものの若い選手たちの起用もあって、6月下旬から7月下旬にかけて6連勝を達成することになります。