長い前編が前置きで、本番はここから。
小室が生音を大事にしていたからこそ、サポートメンバーを重要視していたわけですが、その中で木根はどのように立ち位置にいたかと言うと、マルチプレーヤーとして活躍していました。
ピアノ、キーボード、エレキギター、アコースティックギター(12弦ギターも)、ブルースハープ…と数多くの楽器を演奏できる木根。
TMは小室の移り気が激しいこともあって、ポップス、ロック、バラードファンク、テクノ、ハウス、トランス、プログレ、EDM…と様々なジャンルをこなすユニットだっただけに、木根のマルチな才能は重要性の高いものだったと思います。
エレキギターに関してはソロなどは弾くことは少なくカッティングなどがメインですけど、アコースティックギターに関しては定評があり、TMはもちろんですが渡辺美里やKcoのソロアルバムにも参加したことがあるほどです。
また、コーラスに関してもTMにおいて非常に重要な存在で、TMの楽曲には欠かせないものとなっています。
高校生の頃からウツと木根はボーカルとハモりの関係を続けていて、息はピッタリ。
デビューが決まる前からレコード会社の関係者に高く評価されていたとのことで、現在も大事な役割となっています。
ウツは昨年すい臓腫瘤が見つかり、7月にTMのライブ『-START investigation-』で復帰するわけですが、その時もまだ痛みがあったそうで。
その分木根のパートを増やし、今年発売の新曲『LOUD』でも「木根がコーラスを頑張った」と2人言われています。
そして、もう1つ木根の重要なポジションが作曲家としての存在。
特に木根バラとよばれる、オーソドックスでも綺麗なメロディにはファンが多く、TMの幅を広げている存在だと思います。
『Fool On The Planet』、『TIME PASSED ME BY』、『GIRLFRIEND』、『WINTER COMES AROUND』、『CUBE』と数多くの名曲を作り出しています。
小室からは「THE BEATLESのYesterdayのような曲を作って」とか曲を聞かせて「こういった曲を作って欲しい」といった話が降られることが多いそうですが、そんな無茶振りに応じられるのもそれだけの対応力や知識がなければ難しいはずで。
また、TM終了後はプロデューサーや作曲家としても活躍。
渡辺美里、日置明子 、椎名へきる、前田愛などを中心に、鈴木あみ、tohkoなど小室ファミリーにも楽曲を提供。
その中でも佐々木ゆう子の『PURE SNOW』は、小室や桑田佳祐も絶賛したという話があるそうです。
また、小室哲哉との共作も有名で、『STILL LOVE HER』、『Electric Prophet』はどちらもTMの中でも名高い名作となっています。
この関係は小室プロデュース期にもいくつかのアーティストに共作を出していて、特にglobeのアルバム『outernet』における『another sad song』、『soft parade』は名曲だと思います。
この時期はTMとしての活動を行っていませんでしたが、それでも共作を行ったというのは、それだけ小室は木根の作曲家としての実力を評価していたのでしょう。
『outernet』に関しては、タイトルからしても小室がglobeの今後に行き詰まりを感じていたところで、木根に変化を求めたという部分があったのかもしれません。
小室は先にオケを作るタイプの作曲家で、そこに木根の優しさの感じるメロディが乗ることで、素晴らしい楽曲が生まれてきたのだと思います。
その他にもTMのライブではパントマイムや竹馬に乗るなどのパフォーマンスを担当。
そして、『CRAOL』で小説家としてもデビューし、『ユンカース・カム・ヒア』はアニメ映画にもなっています。
近年では舞台俳優としても活躍。
もちろんソロアーティストとしてもCDを出しており、NHKの「みんなの歌」等でも使用されました。
そして、何よりも一番重要ではないかと思うのですが、木根の人格ではないかと思います。
木根への曲のファーにせよ、パフォーマンスにせよ、小説家にせよ、基本的には小室の無茶振りから全ては始まっています。
あるいはさまざまなジャンルにチャレンジしてきたのも、TMのスタートも小室の多少強引なアイディアから生まれたものだったと思います。
もちろん小室としてはTMをよくしようという意識からやってきたものであり、それがTMを支えるものであることは間違いないはずですが、時には奇抜すぎるアイディアもあったわけで、それにもっとも振り回されたのはメンバーだったと思います。
一方でウツは基本的に口数が少なく、あまり積極的に自分からアイディアを仕掛けるタイプではない。
小室とウツは今では非常に仲が良く、TM休止時にも小室がウツのソロをプロデュースするほど良い関係で、ウツの病気後のライブもいかにウツの負担をなくそうかと小室が演出を考えていたほどでした。
けれども、初対面ではウツが「友達にはなれない」と思っていたようです。
その間にいたのが木根で、2人の間をコミュニケーションをとるという意味で非常に大事だったのではないかと思います。
あるいは、サポートメンバーやスタッフにも無茶振りの矛先は向くわけで、そこで温厚な木根の存在が大事だったのではないでしょうか。
だから、周りの関係者に「木根がいなければTMは成り立たなかった」とか、一部では「影のリーダー」と言われているのでしょう。
もっとも小室は冗談で「TMのマネージャー」と話していましたが(笑)
一度は終了したにもかかわらず、30周年仲良くやってこれたのも、木根のような存在がいたからこそ、ではないかと思います。
音楽に関わらず、こういった人がグループや団体にいなければ、才能ある人材だけを集めても、良いものは生まれないもので。
そういった意味で、木根の存在意義というのはもっと評価されるべきではないかと私は思います。