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ジェフ経営情報'16後編 次の強化ビジョンは

 前編に続いて後編へ。
 タイトル通り今回は経営の話だけでなく、サッカーの話もかなりしています。
 当たり前ですがサッカークラブの運営が本業ですから、本業がうまくいっているか否かが経営状態にも大きく影響を与えているはずです。
■今回も「特別損益」が大きく響く


 今年は表に「特別損益」をつけたしました。
 近年Jリーグの発表している経営情報には記載されていますが、以前には出ていなかった項目です。
 こちらで計算して過去のものも出しています。


 ジェフは例年「特別損失」が大きく、今回も7800万円もの損失が出ています。
 そのため「広告料収入」の増加もあって黒字転換し、「営業利益」、「経常利益」では1億円以上の利益を出していますが、最終的な「当期純利益」では3700万円の利益に終わっています。
 また、前年度も赤字経営ではありましたが、「営業利益」、「経常利益」の段階では約4000万円の赤字とそこまで大きな額ではなかったものの、最終的には8900万円の赤字にまで膨らんでいます。



 「特別損失」には様々な科目が含まれると思いますが、過去のデータから考えても監督の「違約金」が大きいのではないかと思います。
 昨年は監督解任がなかったので「特別損失」も出ないのではないかと思っていたのですが、大きな「特別損失」が出ていることからみると、鈴木監督は3年契約だった可能性が言えるのではないでしょうか。
 15年度の「特別損失」が14年度の「特別損失」に比べておおよそ倍の額になっているのも、14年途中に鈴木監督を解任したため14年度は半年分の違約金が発生して、15年度には1年分の違約金が発生したのかもしれません。
 実際、鈴木監督は実績のある指導者ですし、3年契約を結んでいたとしても何ら不思議ではないでしょう。


 今年の監督交代でも前田社長は関塚監督との契約解除には至っていないことを示唆しており、そのため長谷部監督は「代行」の肩書が外せない状況となっているようです。
 関塚監督解任をここまで引っ張ったのも、長期契約が残っているからなのかもしれません。
 もし来季以降も関塚監督との契約が残っているのであれば、来年度も大きな「特別損失」が残る可能性があります。



 毎年のように少なくない「特別損失」が発生していることを考えると、選手の「移籍金」以上に大きな問題なのではないかと思います。
 ネームバリューのある関塚監督なら長期契約を結んで大丈夫だろうという判断だったのかもしれませんが、過去にも失敗していることを考えると、甘かったと言わざるを得ないのではないでしょうか。
 今後は監督の選定や契約の結び方を慎重にやってほしいところだと思いますし、やはり監督の選定がどのように行われているかがこのクラブにとっては大きな問題なのだろうと思います。
 これに関しては長くなるので以前書いたエントリーに譲りますが、そこがチームだけでなく、経営問題にも影を落としていると言えるのではないでしょうか。


 最後に資本の部に関して。
 「流動負債」が増えているのが気になりますが、それ以外は大きな問題がないと思います。
 「繰越損失金」に関しては、徐々に減らしていくしかないでしょう。
 最終的な「純資産」は4億8000万円ということで、「債務超過」にもなっていません。


 今季は黒字に終わったことで、クラブライセンス制度の「3期連続赤字」に関しても、「債務超過」に関しても問題なく終わっています。
 特に「債務超過」に関しては大きなクラブ体制の変化などがなければ、不安なくやっていけるのではないでしょうか。
 ただし、「特別損失」が大きいだけに、1つ間違えれば赤字になる可能性もある。
 そこは注意しないといけないのかもしれません。
■次のビジョンを打ち出せるか
 最後に改めて「移籍金」とオフの大幅選手入れ替えに関してですが、前編でも話した通り「尋常ではない移籍金」が動いたわりには変化が見られませんでした。
 加えて高橋GMがあのような言い方をされたということで、大きく経営が傾いた可能性も心配していたのですが、少なくとも15年度に関しては問題がなかったように思います。
 そうなってくると、果たして「移籍金」がどこまで本当にクラブ経営全体に影響を与えていたのか…ということになってくるのではないかと思います。
 もちろん今年度の経営に影響を及ぼす可能性はあるでしょうし、今年から予算が減少した可能性なども考えられるのでしょうが。


 ただ、考えてみれば「移籍金」の残金をなくすためにという話ではありましたが、「移籍金」が残っている選手は一部だったはずで、あそこまでの大量移籍に繋がるのもおかしな話だと思います。
 赤沼圭子氏も水野、キム、大岩は関塚監督の構想に入っていたと書かれていましたが、逆にいえば他の選手は構想外だった可能性がある。
 西部謙司氏は大量入れ替えによって「指導部不信という最大のリスクは回避できた」と話していますし「移籍金」以上に監督の構想外であることや、監督不信による影響が大きい可能性もあるのではないでしょうか。
 他サポを中心に「あれだけ選手が入れ替わっては監督がかわいそう」という意見を目にしましたが、実際には関塚監督が継続したことで大量入れ替えをしざるを得なかったのではないかとも思います。



 戦力的には昨年より今年の方が、厳しい状況だったのではないかと思います。
 特にDFラインはマイナス面が大きく、ボランチも万全ならプラス面も多かったでしょうが、実際には怪我人と人数不足で大いに悩みました。
 攻撃陣は良い補強が出来たという意見もありましたが、昨年の水野、谷澤、ペチュニク、森本、松田なども決して悪くはない選手たちだったと思います。


 ただし、関塚監督好みの補強は出来た。
 DFラインには全員高さのある選手を補強し、ボランチは自ら攻守にゲームを作れる選手たちを集め、アタッカーには個人技で突破できる選手たちを揃えたことになります。
 それゆえに関塚監督はやりやすい面もあったとは思いますが、クラブの将来という意味ではどうだったのか。



 個人的には、クラブ状況によっては移籍金を使うことは決して悪いことではないと思います。
 長引く不況のせいか無駄遣いは嫌われコストパフォーマンスが優先される時代ではありますが、「安物買いの銭失い」ということわざもあるように、使うべきところには使わないと逆に損をしてしまう可能性もある。
 特にジェフの場合は若手・中堅の育成が長年出来ておらず、ベテランを補強しては1,2年しか持たずに苦しみ、その穴埋めをまたベテランで補強して失敗する…というパターンを繰り返し、チームのベースを作れていない状況が続いています。


 だからこそ、13年に就任した齋藤TDはオナイウ、北爪、ナム、キム、栗山といった新人を補強しつつ、中村や田代、金井、森本などを中堅選手を他チームから補強してチームのベースとなる部分を作ろうとしていたのではないかと思います。
 もちろん全員が成功したわけではないし時間もかかる方法ではありますが、現状を打破するためには我慢をしてでも中長期的視野で立て直さなければいけないという発想だったのではないでしょうか。
 その際の「移籍金」が市場よりも高過ぎるというのであれば問題ですが、長年ベースがないクラブにとっては必要な"投資"だった部分もあるのではないかと思います。
 その分、齋藤TDは「ベテランは補強しない」と話しており、年俸の高いベテラン選手を補強しないことで、「移籍金」を賄おうとしていたのかもしれません。



 それでも新任GMからすれば「移籍金」の残額が大きいと、自分の自由にできる予算は限られてしまうわけで、どうにかしたいと考えるのも自然なのかもしれません。
 ただ、オフから気になっていたのは、それによって浮いた予算分をどう使ったのかと言うこと。
 高橋GMは「移籍金が選手の給料の首を絞めているような状況だった。そうするといい選手を取ることはできない」と話しているわけですが、ではその分「いい選手をとることが出来たのか」が次の話になってくるはずです。


 そもそも本当にいい選手はフリーにはならないわけで、移籍金なしではいい選手は獲れないのではないかというのが大きな矛盾になってくるのではないかと思います。
 だから、齋藤TDなどはは移籍金を払ってでも、いい選手をとろうとしたのではないか。
 そこで高橋GMが行き着いたのは働き盛りの若手や中堅のいい選手は移籍金がかかっているので、ベテランのいい選手を移籍金なしで補強しようという考えだったのでしょうか。


 ただし、その分年俸はかかるでしょう。
 加えてベテランはどうしても怪我やコンディション面に不安があり、長期的に見ても厳しいところがある。
 実際、今季も近藤、大久保、阿部、アランダ、エウトン、富澤、勇人と、主軸として期待されたベテラン選手はことごとく怪我で戦列を離れてしまいました。
 やはりベテラン中心のチーム作りは難しいと改めて感じたシーズンで、ベテランに頼って失敗するという流れは齋藤TDの前に戻ってしまったかのような印象も受けました。



 それでも選手の入れ替えが監督続投による不可抗力であるのなら、真っ新なチームを作るために経験豊富なベテラン選手に頼るという考えは仕方のないところもでもあると思います。
 ただ、そこで気になるのは、高橋GMによる次の強化ビジョンではないかと思います。
 齋藤GMはベテランに頼らず、移籍金がかかっても中堅を補強して、新卒と共に中・長期を戦えるチームのベースを作るというビジョンだったのではないかと思います。


 しかし、それはあの発言で否定されたわけで、では次の策はどうするのか。
 千葉県高校出身の選手を集めるなんて話はあくまでも付加価値的なものであって、強化策と口にするには貧弱すぎる。
 強化ビジョンも振出しに戻ってしまった感があるだけに、どういった強い意志を持って新たなクラブの方向性を作り上げていくのかが重要となってくるのではないでしょうか。



 それだけに、大事なのは次のオフではないかと思います。
 ただ良い選手を獲得し、ただ足りない部分を補強するという考えだけではクラブの強みは作れないでしょうし、経営面においてもどこに力を入れて、どこは捨てるのか…といった取捨選択を明確にしていかなければ、平凡なクラブのまま進歩なく終わってしまう。
 関塚監督も退任してまたオフに大きく動く可能性もあるのかもしれませんが、その時に何をクラブに残し、どこはクラブとして譲れないのか。
 そこを打ち出せるかどうかが、クラブの将来にとって重要なのではないかと思います。