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今季ジェフが試してきた左右のアイソレーションと2インサイドと偽SBの関係性

 今日から少しずつ、日常の更新も再開していきたいと思います。
 お休みをいただいていた間も、サッカーのことというか、ブログで何を書くのかは常に考えていました。
 その中でも、特に横浜FC戦前までに考えていたのがこちらの内容。

 今年のジェフはなかなか有効なビルドアップができず、特に中央へ縦パスを送れていない印象で、この点において昨年以上に苦労しているイメージもあります。
 1つには何度も取り上げたように、1アンカー2インサイドを固定化したことによって、後方のビルドアップに参加する選手が減ってしまったこと。
 2インサイドにすることで1トップとの関係で打開しようという意図かもしれませんが、逆に中盤前方が詰まってしまうことも多いように思います。


 それと関連するのが、表題にもある左右のアイソレーション。
 アイソレーションとは直訳すると「分離、隔離、独立」などといった意味があるそうですが、主にサイドなどで味方アタッカーにあえてサポートせず孤立させて、1対1で仕掛けられる状況を作る動きのこと。
 近年の日本で言えば三笘のタスクなどでイメージが湧きやすいと思いますが、広義で言えばオシム監督時代のジェフも片方のサイドでタメを作り、逆サイドの村井や水野に仕掛けさせる展開を作っていたわけで、古くから発想自体はあるものではないかと思います。

 さらに言えば、ジェフも昨年から右サイドの田中がワイドに張って、アイソレーションの形を取っていました。
 しかし、今年は主に右に田中、左に椿と、左右のサイドでアイソレーションを展開してきたことになります。
 その分、中央では2インサイドを固定して、前線に厚みを加えようとしているという見方も出来るでしょう。


 この形を試している理由は、ドゥドゥを左サイドに起用してゴール前に飛び込ませると、中央のスペースが少なくなり小森との相性が悪いこと。
 あるいは、そもそも小林監督は就任当初も2インサイドで戦っており、本来これがやりたい形だった可能性があること。
 または、チームのさらなる進化・変化への期待などさまざまな思惑が考えられますが、小林監督はあまり戦術の詳細を話したがらない監督なので、細部に関してはわかりませんし今後もわからないまま終わるかもしれません。

 この変化によってYoutubeなどでもお話ししたように、CBなどから大きく展開して左右をワイドに仕掛けるエスナイデル監督風のビルドアップになりましたが、その分中央を縦に繋ぐパスワークは少なくなってしまったように思います。

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 左右が大きく開いて縦に仕掛ける形は、5レーン理論にも通ずるところがあるでしょう。
 左右SHがタッチライン沿いにいて、2インサイドがハーフスペース付近を狙い、中央には1トップが構えることで、5つのレーンに選手が配置されることになる。
 小林監督はそこまで5レーンを意識しているわけではないようにも思いますが、欧州などでも珍しくはない立ち位置だとは思います。

 ただ、左右SHがワイドに開いて待つ形になると、中盤中央の人数は少なくなる。
 例えば、3-4-2-1なら中盤中央は2ボランチと2シャドーの4枚。
 古典的な4-4-2でも2ボランチに加えて2SHが中央に入ってきたり、前線の1枚がトップ下のような位置取りで中盤に絡むこともあるでしょう。


 そこで昨今生み出された形が、偽SBと呼ばれる守備時はSBの位置を取り、攻撃時はボランチの役割を果たす選手を置くことで、中盤の薄さを補う手法。
 ジェフも本来はボランチの高橋を、昨年途中から右SBで起用していることにはなります。
 ただ、思ったよりも、偽SB的な仕事にはなっていない印象を受けています。

 もともと高橋はそこまでパスワークの起点になれるタイプではなく、どちらかといえばミドルシュートや大きな展開がウリのMFだったこともありましたが、それでも高橋が右SBに入ったことでDFラインのビルドアップの逃げ道になったことは事実。
 ただ、チームとして見てみると、最終ラインで回している時の左右SBは、左右に開いた位置で関わっていることが多い。
 日高がポケットを狙った飛び出しを見せたり、高橋がハーフレーンからミドルシュートを狙うこともありますが、あくまでもそれは相手を押し込んでからで、ボールが後方や中盤にある時は外でパスワークに関わることが多いと思います。


 ようするに、高橋や日高などパスを出せるSBを起用していることは事実ですが、偽SB的なボランチの仕事を果たしているとは言い難い。
 そのため、左右SHがワイドに開くと中盤は3枚と薄いままで、構成力の面で苦労している部分もあるのではないかなと思います。
 結果的に小森などが引いてくることも増えている印象ですが、それも良し悪しなところがあるでしょう。

 もちろんそれだけが問題ではなく、例えば各選手のビルドアップ能力。
 後方の選手だけでなく、横山なども縦への鋭いプレーが武器の選手だとは思いますが、細かな繫ぎや周りを活かしたプレーはあまり得意ではないように見えます。
 オシム監督時代の日本代表に羽生や山岸といった選手が選ばれた要因には守備力、運動量などもありますが、細かなビルドアップ能力の高さも評価されたのではないかと言われていました。


 シンプルに素早くパスを繋いで、動き直して、また繋ぐ。
 目立った動きではないですが、そういったパスワークの潤滑油になるような黒子的な選手が少ないようにも思いますし、それらはどのポジションでも求められる基礎的な動きとも言えるのかもしれません。
 そういった意味で間でスッと受けてパスを繋げる風間などは、オシム監督風に言えば"サッカーを知っている選手"と言えるのかもしれませんが、ちょっと調子に波があるのと最後の質に課題があるのかもしれませんね。

 小林監督1年目は前への勢い重視で戦ってきたチームではありますが、ここからは縦への仕掛けばかりではなく細かな動きや連動性なども問われるのではないでしょうか。
 チームとしても、このまま大きな展開とサイド攻撃を中心としたチームで良いのかどうか。
 球際だとか1対1の勝負ももちろん大事だとは思いますが、それだけではサッカーは成り立たないと思いますし、もう一歩大人なサッカーを目指せるかが注目ではないかと思います。