最終節山形戦後の小林監督のコメントを、振り返っていきたいと思います。
もっと短く引用しようかとも思ったのですが、細かく切って誤解を生むのも良くないので、長めに使わせていただきます。
小林慶行監督
「後半からチームでもう一度、戦術的な部分を確認し、1人少ないにもかかわらず、あれだけレベルの高いチームに対してしっかりとボールを奪うシーンや前進するシーンが作れました。もちろんゴールまでは届きませんでしたが、1人少ない状態であれだけの戦いができたということを考えると、前半に喫してしまった3失点目はすごく自分たちにとって重くのしかかったと思います」
後半からの戦い方に関しては、私も試合後に取り上げた通り、思ったよりもうまくいった部分はあったと思います。
ジェフは1人少ない状況だったため、4-1-2-2にして、2トップと2インサイドが中央でプレスをかけて、カウンターを重視するスタイルに変更。
山形が中央寄りなビルドアップをしてくることも大きく、結果的に山形専用の戦い方になったとも言えるでしょう。
これによって、ある程度攻める回数を稼げたとは思います。
ただ、これを監督が成功だと言うにはさすがにちょっと違和感があって、あくまでも1人少ない状況においての妥協案で生まれた形だと思います。
実際、中央に寄った4-1-2-2のシステムということもあって、守備ではサイドが空くことが多く、そこを相手に突かれることも多かった。
それでもジェフ側は人数が少ないのだから、多少隙が生まれても仕方がないという捨て身のシステムであったわけで、11人で戦っていたらあれは良しとはならなかったでしょう。
何よりも皮肉めいているのは、今季は左右のアイソレーションにチャレンジした1年だった。
しかし、最終節でその左右のアイソレーションを両翼共に捨てて、プレス重視で中央を厚くして戦ったわけですから、それでうまくいったということになれば、今年全体のスタイルを否定しかねない。
あくまでも、仕方なく4-1-2-2に変更したわけで、臨機応変な変更が出来たとは言えるでしょうが、退場者が出ていなければああはならなかったであろうことも考えると、手放しにそこを評価することは出来ないのではないかなと思います。
さらに「もちろんゴールまでは届きませんでしたが」という話にも、ちょっと疑問を感じてしまいます。
というのも、ジェフは4月の水戸戦で後半早々に秋田に退場者が出て、その後ジェフが先制したにもかかわらず、試合終盤に2点を取られて負けています。
もちろん、今回のジェフはもっと早い段階で退場者を出し、前半のうちに0-3になってはいて、状況が違うことには間違いない。
しかし、あそこからの逆転は簡単ではなかったにせよ、せめて1点くらいは返してほしかったし、点も奪えずに良い評価を与えるのはさすがにどうなのか。
むしろ後半からハイプレスをかけていったジェフは、後半中頃には失速してもう1点を山形に奪われて敗れています。
そう考えると、あの戦い方もうまくいったのはせいぜい25分くらいだったと思いますし、4月に対戦した秋田は1人少なくとも試合終盤までガス欠を起こさず、最後に逆転ゴールを浴びせられたことも考えると、ちょっとカッコがつかない内容とコメントではないかと思います。
また、山形もジェフが捨て身の攻撃を仕掛けてくると踏んで、後半序盤は無理をしなかったのではないでしょうか。
それによってジェフが前進できていただけであって、あの時間帯は山形にやらせてもらえていた流れだったのではないかとも思います。
何せ山形には高橋、後藤優介などのスーパーサブがいますし、彼らが投入されたタイミグでもう一度加速するというのがいつものパターンになっているため、それまでは相手に浪費させておこうという判断だったのではないでしょうか。
それを裏付けるかのように、小林監督も山形戦前に、山形を「大人なチームだと思う」と話しています。
「したたかで、いろんな経験値があるチーム」という評価で、ジェフ戦もそれを発揮した試合だったのではないでしょうか。
ただ、ジェフも年齢層はそこまでの大差はないわけですし、経験値で言えばそこまでの違いはないでしょう。
大人になることを否定してきた小林監督ですが、大人なチームである山形に敗れたことを、どのように受け止めるのでしょう。
小林監督は山形戦後の会見で、試合後に見せたサポーターの前向きな反応にも触れ、チームや選手たちを讃えています。
ただ、選手たちが頑張りを見せてくれたのは事実だと思うのですが、一方で今年は本来自動昇格を目指すべきチームだったはず。
現実問題として、サッカーというスポーツはどんどん選手が入れ替わるわけで、今季昇格できなかった結果によって失うものも大きくなる恐れがあるわけですから、今年の結果は美談だけでは済まないところがあるのではないでしょうか。
例えばこれがオシム監督時代のジェフのように、カテゴリーの中でも予算が少なく、すべてがうまくまらなければ優勝などは狙えないようなチーム状況であれば、選手たちが頑張って、アグレッシブなサッカーを見せて、サポーターも楽しく応援できれば、それでいいのかもしれない。
しかし、現状のジェフは結果を問われているはずです。
実際、J1とJ2の収入の差はどんどん開いていく傾向にあるし、秋春制度になればまた大きく状況も変わってしまうかもしれないわけで、これ以上周りに取り残されないためにも早期のJ1昇格は必須。
よりシビアに結果を求めなければいけない年だったはずで、そうなってくればもっと大人なサッカーを展開して、賢く戦うべきシーズンだったとも思うわけですが、クラブはどのように評価していくのでしょうか。
個人的には小林監督が大人になることを否定した上で、大人なチームと評価した山形に0-4で敗れ、前年の順位も下回ってしまったという結末は、なかなか皮肉で残酷な最終節だったようにも思います。