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2016シーズンを振り返る 長谷部監督編 その1

 報道の通りエスナイデル監督の就任内定が発表になりましたが、先日すでにお話ししましたのでそちらをご覧ください。
 Twitterでいろいろお話していて思ったのですが、若く成功経験のない監督ですから信頼のおける外国人コーチもセットで招聘する可能性もあるのかもしれませんね。
 スペイン人監督の決まった東京Vも同郷のコーチを招聘しましたし、ブッフバルト監督とエンゲルスコーチやストイコビッチ監督とジュロヴスキーコーチのように優秀なブレインと良い関係性を築ければ、うまくいく可能性も見えてくるのでしょうか。


 ただし、その場合はエスナイデル監督が優秀な副官を招聘出来るか、クラブが用意した同郷のコーチを手懐けられるだけのカリスマ性があるかどうかが求められるのかもしれません。
 副官が配置されれば長谷部コーチが残ったとしても監督との距離はまた遠くなるでしょうが、そもそも若いスペイン人監督が同世代の日本人コーチに耳を貸すのかといった疑問もありますし、エスナイデル監督を招聘した時点で"長谷部コーチ"は難しい立場になることは見えていたのではないでしょうか。
 ともかく、エスナイデル監督はスペイン系の監督ということで物珍しさという意味で初めは楽しめるのかもしれませんが、基本的には大きな期待をせずに見守って行くことになるのかなと思います。



 さて、どうしてもブログでは後手に回ってしまいますが、個人的には今季の反省をして方向性を再度検討し直してから、監督人事などを考えるべきだと思います。
 そのため、まずは今季の反省が大事だと思いますし、今年も監督を中心にチーム全体の総括をしていきたいと思います。
 しかしながら、今年のジェフは7月途中に監督を交代しています。


 そのため、監督交代までの総括は以前のエントリーに譲ります。
 基本的に関塚監督は、残念ながら組織のベースを作れなかったという印象が強く残ります。
 交代直前の4.5バックに関しても詳しくこちらで説明しましたが、どうしても埋められなかった守備のスペースを人数で埋めようというかなり苦しい状況だったと思います。


 そこからバトンを受けて始まった長谷部監督体制。
 退任した監督に対してあまりきつく言いたくはありませんが、長谷部監督が就任してから戦術の基礎や約束事がどんどん固まっていって、結果的に関塚監督時代の問題がより鮮明に浮き彫りになっていった印象でした。
 ただ、長谷部監督もそこから勝利に結びつけるところに関しては、足りない部分もあったのかもしれません。
■長谷部監督就任直後の変化と課題
 長谷部監督の初陣となった横浜FC戦では1-2の敗戦で、2戦目の愛媛戦では0-0の引き分けに終わりました。
 しかし、横浜FC戦後にも話した通り、初戦から確実に変化は見えていたと思います。
 特に守備において選手たちが細かくポジションを修正しバランスをコントロールしようとする動きは、それまでの2年間で全く見られなかったことで大きな変化だったと思います。


 また攻撃においてもこの頃はまだアバウトなものでしたが、チームとしてどこを狙うのか明確化していこうという意図を感じました。
 横浜FCはこの頃から好調期に入り、愛媛戦ではジェフのコンディションにも問題があって結果は出ませんでしたが、今のジェフに足りないモノを的確に捉え、そこを改善していこうという姿勢には可能性を感じました。
 そして、続く北九州戦ではアランダが前半のうちに退場したにもかかわらず、2-0で長谷部監督の初勝利を上げます。



 真夏の連戦による影響もあって熊本戦では0-3の大敗となってしまいますが、次の岡山戦は2-0での快勝でこの試合で1つの形が生まれたと思います。
 こちらで図を使って説明したように、左SH町田が中央に絞って2トップに絡み、その外を比嘉が走る。
 逆サイドの菅嶋はバランスを取り、丹羽は前線にフィードを送る。


 そして、攻撃の中心は船山を中心に"裏狙い"というパターンが、明確に作れるようになった。
 これによって全選手がボールを持ったらまず裏を狙うという意識を持つようになり、攻撃においての意思疎通が図れるようになっていきました。
 まず船山を見てそこがだめなら、エウトンに預けて落としてまた裏へ…。
 それまで関塚監督は攻撃も守備も個人判断に任せるところが大きかったですから、攻守に共通理解が築けたことは極めて重要なことだと思います。



 ただ、守備においても、課題がなかったわけではないと思います。
 エウトンと船山の2トップは守備に難があり前からプレスをかけきれず押し込まれたり、サイドでも中から外に出ていく動きはできるようになったものの、それによって空いたサイドと中央の間を取られる場面が見受けられたり。
 カバーリングや細かなサポートの関係など、状況に応じた対応に関してはもう1つといった印象もありました。


 2トップの選択に関してはシーズン途中の就任で短期間で結果を求めれたため、個人での打開力のある2人を採用せざるを得なかったという面もあったのかもしれません。
 また攻撃においては裏を狙う展開には可能性を感じましたが、後方でのビルドアップにおいてはロングボールが多かった。
 細かなビルドアップが出来ず、それによって簡単にボールを失うシーンが目につきました。



 ジェフは岡山戦から2連勝。
 しかし、続く山口戦では試合終了間際に失点し、1-1の引き分けに終わってしまいます。
 当時も話しましたが、試合終盤に3バックに変更して守りを固めた策は個人的には良くなかったと思います。


 4バックでバランスを修正しながら守ろうという意識付けで戦ってきたにも関わらず、結果的にその流れを止めてしまった。
 試合展開としては間違っていなくても、より根本的なチームのポリシーには反する場合もある。
 それがどこまで影響したのかはわかりませんが、結局そこからジェフは失点が増え成績も落ちていきました。
■10月に4連敗を喫すも11月に改善
 山口戦で引き分けた翌戦、東京V戦でも1-1でも引き分けに終わってしまいます。
 そして、その次の群馬戦から徳島戦まで、4連敗という結果に終わってしまいました。
 1つにはプレッシャーという問題があったのかもしれません。


 長谷部監督就任から3勝2敗1分と好成績をあげたジェフですが、山口戦からの2試合に引き分けてPO進出に黄色信号が灯ってしまった。
 結果的に監督交代時はまず無理だろうと思われていたPO進出が、就任後に好成績を収めたことで可能性が見え始め、逆にそこから追い詰められてしまったように思わなくもありません。
 当然、課されたノルマが圧力になった部分もあるのでしょう。



 実際の試合にもそれが現れていた印象で、勝点3を欲するあまり後方の選手も前に出すぎて、守備でスペースが出来てしまった。
 それによって長谷部監督就任によって改善された、丁寧な守備が損なわれてしまった印象です。
 これに関しては、管理しきれなかった長谷部監督にも課題があったのかもしれません。


 また、この時期の失点はゴール前での個々のミスも目立っており、こちらは個人能力の問題も大きかったと思います。
 セットプレー時の失点も多かったですが、これは今季サイズの小さな選手が多くなったことも影響したのでしょう。
 オシム監督時代もセットプレー時の失点は多く、「うちは小さな選手が多いので仕方がない」という趣旨の話をオシム監督が話していたように選手構成の問題も大きいように思います。
 それを経験し技術もサイズもある若い選手を育てようと獲ったのが、青木考太や米倉などということになるはずです。



 4連敗中はコンディショニングにも問題を感じました。
 特にアウェイゲームでは動きが落ちることが多く、怪我人も多かった。
 ここはフィジカルコーチ不在の影響もあったのではないでしょうか。


 攻撃に関しても相手に研究され、まず"裏抜け"を狙うジェフに対して、ともかく縦を切ることによって攻撃を遮断されるようになっていきました。
 そこで長谷部監督は10月途中から徐々にポストプレーを絡めた攻撃を展開し、ビルドアップもより丁寧に繋ぐ形を目指すようになっていった印象です。
 関塚監督は一度相手に研究されると次の一手が作れず低迷していくことが多かったので、ここでもチーム作りにおける差を感じました。


 すぐには細かなビルドアップや攻撃の組織作りはできませんでしたが、シーズン終盤に向け徐々に改善されていったと思います。
 ボランチなどからCFに楔のパスを当て、トップ下に配置した長澤や町田が落としを受け、そこから中央を突破していく展開には可能性も感じました。
 これがシーズン終盤に機能し、成績も回復していきました。



 また、DFラインの個人能力に課題が見えた中で、岡野、乾といった若い選手を抜擢。
 この2人が粗削りながらも勢いのあるプレーを見せたことによって、チームの雰囲気も変わっていったように思います。
 特に岡野の積極的なプレーで前で潰せるようになったことが、全体の守備において良い変化を与えていったのではないでしょうか。


 加えて、連敗でPO進出の可能性がなくなったことで、プレッシャーからも解放されていきます。
 4連敗後の長崎戦で引き分けると、11月3日のC大阪戦では3-0の快勝し、続く金沢戦でも2-1の勝利。
 ラスト2試合は勝ちきれず残念でしたが、11月は2勝1分1敗と好成績で終えることが出来ました。
■長谷部監督の特徴
 長谷部監督の特徴は基礎戦術を植え付けられることと、理論的にチームを作り上げることができることではないかと思います。
 シンプルなサッカーではあると思いますが、チームとしてベースを築けることは今のジェフにとって大事な部分でしょう。


 守備にも課題はありましたし、がっつり守備的なチームを作る監督ではないのかもしれません。
 しかし、理詰めで守備だけを作ることができる監督は珍しくないと思うのですが、長谷部監督はその分攻撃で形を作ることができる可能性を見せた。
 攻撃面においては、同世代の石丸監督や吉田監督、木山監督などより、期待できるのではないかとも感じました。



 かといって、感覚的に頼るタイプではなく、左SBに運動量が足りなければ比嘉を抜擢したり、中盤で激しさが欲しいとなれば勇人を起用したり。
 場合によっては相手DFに高さがないと思えば、オナイウを投入してロングボールを供給してみたり。
 攻守両面で足りないと感じたところを確実に察知して、確実に改善しようとすることができる理論的な指揮官なのではないかと思います。


 また、タスクが明確になったことによってボランチ長澤が活躍できるようになったことをはじめ、就任当初は右SHの菅嶋やスーパーサブの北爪などを積極的に起用。
 そして、シーズン終盤には岡野や乾を大抜擢するなど、勇気ある起用法も目立ったように思います。
 積極的な起用法が当たることが多かったことも長谷部監督の大きな特徴で、それもベースにあるのはしっかりとした理論ではないかと思いますし、岡野や乾の起用も長谷部監督の中では「大抜擢」ではなかったのかもしれません。


 加えて、オナイウの跳躍力を活かした形を築き上げるなど、選手の良さを引き出すパターンを作り上げることにも長けた監督なのではないでしょうか。
 ホーム最終節後に監督自身が、「選手たちの良さを出せることが増えた」と話していたのは、そういった意味だと思います。
 船山の裏抜けや長澤のボランチ起用などもそれにあたると思いますが、船山は決定力がもう1つだったところが痛かったですね…。



 とはいえ、コンディショニングの問題もあってか、試合ごとにチームの波が目立った。
 また、守備においても連敗してからはバランスを崩すことが多く、後方でのビルドアップも作り切れずに前からプレスをかけてくる相手に苦労する試合も多かったと思います。
 加えて、4連敗時に素早く立て直せなかったことも事実でしょう。



 総じてチームの完成度としてはまだまだだったと思いますし、勝たせきれなかったことも確かだと思います。
 カリスマ性のあるタイプではないと思いますし、そこを物足りなく思うサポや関係者もいるのかもしれません。
 とはいえ、4.5バックから始まったチームであり、守備で大穴を作ることもなくなったし、攻撃でテンポよくつないで相手を崩す形も作れるようになっていった。


 確実にチームとしては改善していったと思いますし、何よりも若い選手の起用も含めて、将来に向けて可能性を感じられるチームを作っていたと思います。
 その可能性といったものをどれだけ感じたかかは人それぞれだと思いますが、少なくとも近年のチーム状況を考えれば前向きに捉えることができる内容だったのではないかと私は思います。