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江尻監督「ボールを動かすことにフォーカスした」

 栃木戦では茶島に代わって、ゲリアがスタメン復帰を果たしています。
 ゲリアのスタメン出場は、4月28日の大宮戦以来でした。

 栃木戦での立ち上りのゲリアは、足元でのボールさばきにおいてミスが多かったですね。
 チームとしてビルドアップが出来ていないこと、久々の出場だったことも影響したのかもしれません。
 しかし、もともとゲリアは足元の技術に不安があるので、それが出てしまったという印象のほうが強かったように思います。


 後半に入ってからのゲリアは高い位置を取って、増嶋などからのロングボールのターゲットになる動きが見られました。
 ゲリアはスピードもあってフィジカルも強いので、裏へのスピードを活かすというだけでなく、ラフなボールに競り勝ってほしいという意図もあったのではないでしょうか。
 ただ、ロングボールなので確率は高くないし、それでマイボールにしてもゲリアが自ら仕掛けたり、周りとの連携で崩したりといったパターンがないだけに、その後の展開に苦慮することが多かった印象です。

 また、為田も後方でボールを触って活きるタイプではなく前で仕掛ける選手ですし、ゲリアも高い位置をとって縦に突進していくとなると、チーム全体としてのバランスが悪いようにも思います。
 しかし、一方で江尻監督は以下のように話しています。

江尻 篤彦監督「しっかりとボールを動かすほうにフォーカスしました。簡単に言えば、ボールを失わなければカウンターはされないので」(Jリーグ

 このコメントとは試合展開が全く逆の方向になってしまったことも残念ではありますが、そもそも左に為田、右にゲリアを置いて、「ボールを失わない」サッカーを目指したことに疑問を感じてしまいます。


 もちろん3バックと2ボランチだけでうまくボールを回せるのであればWBのサポートも必要ないかもしれませんが、江尻監督が就任してからうまくその5人でボールを動かせたことはなかったと思います。
 ハイプレスで相手を押し込みセカンドボールを拾って波状攻撃を仕掛けるという展開はあったとしても、遅攻で相手を揺さぶれたことはなかった。
 むしろボールを持ってもプレスに苦しんで、ボールを失った試合のほうが目立っていたと思います。

 その状況で何ら大きな工夫もなく、選手起用もポゼッションというよりはむしろアタッカーやフィジカルを重視したように感じる采配のようにも見えます。
 茶島の右WB起用もそこまではまっていたようには見えませんでしたから、その選手起用の1つ1つを見ると大きな問題はなかったかもしれません。
 しかし、ピッチ全体のバランスと、監督のやりたいこと…ようするに今回は「ボールを動かすこと」まで考えると、ゲリアなどの起用はチグハグなようにも感じてしまいます。


 DAZNの実況やその他のメディアなどでも言われていましたが、栃木戦では右WBとして山本がスタメン出場する可能性もあったようです。
 そう考えると、ゲリアを使いたかったというよりは、茶島の代わりに誰かを起用しようと検討したのでしょう。
 前節長崎戦でジェフは右サイド裏を取られることが多かったため、茶島と新井をスタメンから外したということなのでしょうか。

 さらに大量失点してしまったことを受けて、優也ではなく鈴木を起用したということなのかもしれません。
 ただ、栃木戦ではハイプレス・ハイラインではなかっただけに、長崎戦とは状況が大きく違ったと思います。
 また、ゲリアもフィジカル面では強さを見せており、悪い面ばかりではなかったともいえると思います。


 長崎戦では戦術の裏を突かれた印象が強いですし、選手を入れ替えただけでは大きな改善は難しい状況だったのではないでしょうか。
 改めてチームとして、何をしたいのかですね。
 「ボールを動かす」ことを念頭に置くにしてはあまりにもパスワークが各駅停車で、パスを受ける動きにしても、パスを出す動きにしても工夫を感じられない状況となっているように思います。

 さらに選手起用にも疑問があって、ゲリアだけでなくボランチなども変更を考えなければいけないのかもしれません。
 やはり矢田などはボールを持ち上げる能力はあるもののパスを散らすといったタイプではないし、熊谷も鋭い縦パスなどもありますが一人でゲームを作れるような司令塔タイプではないように思います。
 ただ、怪我人が多い上にそもそもアタッカータイプが多く、ビルドアップに貢献できる選手が少ないという選手構成もあって、悩ましい状況になっているのかもしれません。

 それでも山本や工藤などパサータイプはいるわけで、まったく選手がいないというわけではないでしょう。
 「ボールを運ぶ」サッカーをするというのであれば、もっとそれに集中して取り組まなければいけないのではないでしょうか。
 現状ではそれが中途半端で、何をしたいのかわからないチームになりつつある気がしてしまいます。

ジェフのハイプレスと栃木の連動したプレス

 栃木戦でのジェフは、栃木の連動したプレスに苦しんだ試合だったと思います。
 3-6-1に戻した栃木ですが、システムが変わっても安定したプレスを実行してきました。
 後半は少し足が止まってしまいましたが、プレスの構築という意味でジェフを上回っていたのではないでしょうか。

 ジェフが最終ラインでボールを持つと、栃木は5-2-3のようなシステムで対応。
 この時のポジション取りが、非常にうまかったと思います。
 1トップはボランチの前に立ち、2シャドーはその脇に位置する。


 これによって、縦にもサイドにもパスを通させないポジショニングをしていた印象でした。
 ちょうど1トップを中心に、傘をかけるような守り方ですね。

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 図のように、増嶋がボールを持ったら、縦のコースは1トップが限定して、左右前方へのボールはシャドーがコースを切る。
 これによって増嶋の選択肢はかなり絞られることになり、栃木からすれば相手の行動を予測しやすくなって、守りやすい状況となります。


 この状況で、もしボランチなどが動いて、ボールを受けても前を向かせない。
 そして、バックパスをさせたところで、同時に選手たちが前へとプレスをかけていく方法だったと思います。
 プレスをかけるタイミングがはっきりしているので、栃木の選手たちは迷いなくプレッシャーをかけることができていたのではないでしょうか。

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 この時、左右のシャドーはサイドへのボールを出させないポジション取りをしつつ、ジェフの左右CBへプレスにもいける位置取りをする。
 後方へのコースを消しながら前方へチェックにも行ける位置に立つことによって、相手を追い込んでからチェックに行く、効率の良いプレスをかけることができていたのだと思います。
 ジェフのハイプレスは栃木のプレスとは異なり、基本的にどんな状況でもがむしゃらに前へとプレスをかけていく。


 確かにその方が相手が戸惑うかもしれないし、それでプレスがはまれば相手を押し込むこともできるかもしれません。
 しかし、プレスにいくタイミングが個人に依存している印象なので、相手の戦い方によってはプレスがはまらないし、ポジショニングもまちまちなのでパスコースができやすい状況になってしまう。
 さらに基本的には数的同数でプレスをかけるので、1人でもプレスが外れてしまえばその後方にスペースが空く傾向があります。

 ようするにリスクの大きなプレスと言えるでしょうが、栃木のプレスはまずパスコースを限定することから始める。
 そこから相手を追い込む形でプレスに行くため、プレスをかわされることが少ないし、良い状態で寄せに行くことができる。
 その分ボールを持たれてしまうのかもしれませんが、リスクは少なく済むことになるし、全てを追うわけではないだけに無駄に消耗することも避けることができるのではないでしょうか。


 印象的だったのが、前半に栃木が右サイドでプレスをかけにいったときに、チェックにいこうとした選手が後方をちらっと見たこと。
 ジェフの選手のポジションを確認して、パスコースが消せていることを確認してから、前へと寄せにいったのだと思います。
 それだけパスコースを消すことを重視しているのでしょうし、無暗に突っ込まない守備の約束事がしっかりと出来ているように思います。
 
 それに比べるとジェフはハイプレスがはまる試合もあるとはいえ、選手の走力に依存している傾向が強く、チームとしての約束事がまだまだアバウトなのではないかと思います。
 だから、プレスがはまる時間帯とはまらない時間帯が明確にできてしまうし、試合によっても状況が大きく違ってしまうのかもしれません。
 プレッシングサッカーを目指すのであれば、より安定したプレスの構築といったものが必要になってくるのではないでしょうか。