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負傷交代した小島と先発を外れた熊谷

 新潟戦ではスタメン出場していた小島が33分に負傷交代し、熊谷が途中出場しました。
 熊谷は町田戦、新潟戦と、スタメンを外されていたことになります。
 2017年にアンカーに抜擢された熊谷は、そこからレギュラーとして出場し続け、昨年もチーム内で最多出場選手となっていました。

 それだけに、熊谷がスタメンを外れたというのは、大きなニュースでもあったはずです。
 チームが勝ち星から遠ざかっていることも大きいのでしょうが、熊谷自身も良いプレーができていなかった印象でした。
 単純にコンディションももう一つなのか悩みでもあったのか、プレーにキレがなかったように思います。


 また、以前からブログでは話していましたが、熊谷は決して守備がうまいというわけではないと思います。
 あくまでもフィジカルコンタクトに強く、対人守備でのボール奪取に秀でた選手。
 だから、前からハイプレスをかけて相手チームの選択を限定し、アンカーのところでボールを奪う状況を作れれば強さを発揮することができる。

 しかし、昨日も話したように、今はプレスをはめきれていない印象ですし、ハイプレスも諦めたように見えます。
 そうなると、ボランチは自らピッチ全体のバランスを取ったり、カバーリングしたりといった能力が求められる。
 その状況だと気の利いた守備が得意ではない熊谷などは、苦戦してしまうところがあるのかなと思います。

 さらに攻撃面でも、前を向いてボールを持てば鋭いパスを出したり大きな展開を作ることが出来る。
 そのため、相手を完全に押し込めば持ち味を出せる選手ですが、そうではなく細かくパスを繋いでゲームを作るような展開を求められると良さが発揮できないところがあるように感じます。
 そのあたりが、ここ2試合スタメンで外された要因ではないでしょうか。


 一方でここ最近スタメンでの出場が増えている小島も、確かに矢田などよりは守備時のスタートポジションがしっかりしているように思います。
 それもあって、大宮戦では1ボランチに抜擢されたのでしょうか。
 しかし、そこからボールへのアプローチや球際での勝負、守備への戻りなどは緩い印象です。

 また、攻撃面でもパスワークが作られた中に入って、うまくボールに絡みパスセンスを発揮する展開は得意なのだと思います。
 一方で自らパスを散らしたり展開をするなどして、ゲームメイクをする能力に関しては意外と期待しづらい選手なのかもしれません。
 小島もコンディションなどがもう1つな印象もあるのでその影響も大きいのかもしれませんが、"この選手がピッチに入れば絶対にボールが回る"というようなタイプではないようにも感じます。


 熊谷も金沢では2列目でプレーしていましたし、小島も愛媛では守備的ボランチの藤田とコンビを組んでいました。
 そう考えると本来は攻撃面で良さのある選手たちであり、ボランチでプレーするにしても守備的な選手とコンビを組ませるのがベストなのではないでしょうか。
 しかし、ジェフにはベテランの勇人くらいしか守備的なボランチがいないわけで、やはり選手構成に問題があるように思います。

 また、攻守において組織的な形が作れれば熊谷と小島のコンビでもやっていけるのではないかと思いますが、そこがうまく構築できていないため苦戦しているというところも大きいのでしょう。
 プレスに関してもビルドアップに関しても、チームとしてうまく整備しているとは言い難い状況だと思います。
 そうなると、ピッチの中心に位置するボランチは、どうしても迷いが生じるところがあるのかもしれません。


 ただ、一方で2人は自らパスを散らしてゲームを作り、自ら守備をしてバランスを整えるということが出来ていないこともまた事実。
 その点において田坂や工藤といった選手たちはベテランということもあってか、自分の動きでチームの攻撃を構築しようとしていたところがあった印象です。
 また、勇人も今年のプレーにはさすがに衰えを感じますが、自らのプレーから全体の守備を改善しようという姿勢は感じられます。

 その点で、物足りなさを感じるところがあるのも事実ではないでしょうか。
 これは熊谷や小島だけでなく、矢田などその他のボランチ候補にも言えることでしょう。
 あるいはボランチに限ったことでもないのかもしれませんが、理想で言えばボランチがリーダーシップを取って、チームを支えるという状況が"手っ取り早い"ように思います。


 ボランチはチームの中心だと言えると思いますし、攻守にボランチのプレーが安定すればチーム全体も落ち着いてくるところがあると思います。
 しかし、一方で現在のジェフは2列目の補強を重視し、ボランチなどの補強にはあまり積極的ではなかった印象を受けます。
 そのことがチーム体制が変わったこともあって、今になって響いてきたところもあるのではないでしょうか。

 ただ、一方で熊谷や小島ももちろん、ポテンシャルのある選手たち。
 もっと自発的に動いて、積極的にチームをリードしてほしいという気持ちもあります。
 プロ選手なのですからある種のポテンシャルを秘めているのは当然であるともいえるわけで、それをどこまで発揮できるのかという点で今は大きな岐路に立たされているのかもしれません。


 江尻監督に対してピンチだからこそ選手に火をつけるチャンスではないかと話したこともありますが、それは選手に対しても同じことが言えるでしょう。
 厳しい状況に陥った時こそ、立ち向かえる姿勢を見せられるのかという点は、プロ選手として極めて重要なポイントだと思います。
 勇人は「プレッシャーを感じている」と話していましたが、それを跳ねのけるメンタルを見せられる選手は誰なのか。

 それによって、選手たちの今後の立ち位置や運命も大きく変わってくるのかもしれません。
 特にチームの中心に立つべき存在であろう熊谷や小島には、ぜひとももう一歩踏み込んで頑張ってほしいところではないかと思います。
 もちろん、それ以外のリーダーが表れることも歓迎したいと思いますが、逆にここでプレッシャーに潰されるような選手がいれば、今後の成長は期待できないかもしれない。
 そういった意味で、選手たちにも様々なものが問われるシーズン終盤となってくるのかもしれません。

江尻監督「戦術的な部分よりもメンタル的な部分」

江尻 篤彦監督「前半立ち上がりの消極的な戦いが、すべて結果につながってしまったかなという感想です。」
(中略)
試合に消極的に入ってしまった原因は。
「戦術的な部分よりも、メンタル的な部分。勇気のなさ。強く行くところ。本当にサッカーの基本的なベースが、立ち上がりはできなかったと思います。」(Jリーグ公式サイト

 新潟戦の前半はあえてセーブして戦っているのかなと思ったジェフですが、このコメントを読むとそうでもないのでしょうか。
 あるいはセーブするつもりはあったけれど、あそこまでやられるつもりはなかったのか。

 江尻監督は、戦術的な問題よりもメンタル的な部分という話もしています。
 確かに気持ちの部分で消極的になってしまった印象もありますが、その要因は何なのか。
 単純に勝てていないからとも考えることが出来るのかもしれませんが、やりたいことがはっきりしないから…ようするに戦術が定まっていないから、メンタル面にも影響を及ぼしたという可能性もあるのではないでしょうか。


 試合後にも話しましたが、ジェフは守備の整備が出来ておらず、特に相手ボランチを誰が掴むのか曖昧なところがある印象です。
 わかりやすいのが40分のシーン。

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 新潟は後方で、右サイドから左サイドへとパスを繋いでいきました。
 そして、左SB堀米が中央のボランチ戸嶋に繋ぐと、フリーでボールを持ててしまいます。

 慌てて勇人はレオナルドのマークを捨てて前に出ますが、交わされて縦に繋がれてしまいます。
 そこからレオナルドが受けて、シルビーニョに繋がれたところで熊谷も交わされる結果に。
 最後はシルビーニョと両SH、パスを出して走り込んでいった戸嶋の4人が攻め、後方で残ったジェフの3人が守る数的不利な展開となりましたが、シルビーニョが外してくれたため失点は免れました。


 この場面でも見られたように、ジェフは相手ボランチをフリーにしてしまうことが多い印象です。
 ジェフのボランチが前に出て対応すれば、バイタルエリアを狙われてしまう。
 特にレオナルドとシルビーニョは足元で受けるのが好きな選手で、バイタルエリアを狙ってくるため、簡単にそこを空けてはまずい試合だったと思います。

 それを40分間戦って感じ取ったこともあり、この場面での勇人はまずレオナルドを見ていたのでしょうか。
 しかし、そうなると今度は相手ボランチが空いてしまうので、結局前に出ていかざるを得なくなった。
 ただ、遅れて出ていったため、簡単に交わされてしまった展開ということになると思います。


 単純にここでは船山の戻りが遅かったともいえるのでしょうが、そもそも船山がはっきりとボランチを見るという約束事にもなっていないように感じます。
 さらにここでの問題は、相手がサイドチェンジしたところで、堀米と米倉が前にプレスに行っている。
 相手にサイドチェンジされたところで、逆サイドの選手が前に出ていってプレスをかけるという動きは、3バック時代から江尻監督が実施している動きではあります。

 しかし、堀米と米倉のプレスも中途半端なので、楽にボランチに繋がれてしまう。
 そして、後方の選手が前に出ていってもプレスがはまらないとなれば、困るのは後方の選手ということになります。
 この場面では鳥海がサイドに開いて対応せざるを得なくなっていますが、そうなれば中央が薄くなってしまいます。


 さらに中央でも勇人も前に出ざるを得なかったため、最終的には3人で守らなければいけなくなってしまった。
 この場面以外でも勇人が前に出ていくも交わされて、その裏を取られるという展開が多い試合となってしまいました。
 そうなってくると、劣勢に立たされるのも当然だと思います。

 勇人としては自らが積極的に前に出ていくことで、他の選手もついてきてほしいという発想だったのかもしれません。
 しかし、新潟戦前半のジェフは運動量が足りていなかったし、前に出ていこうという姿勢が感じられなかった。
 さらに堀米、小島、為田と守備が得意ではない選手が中盤に並んでいるだけに、中途半端な守備に終始していた印象です。


 それならばボランチは引いて守ってスペースを埋めればいいのか…という考えもできるでしょうが、そうなると上記の図のように相手ボランチをフリーにしてしまうかもしれない。
 だから、引いて守るのであればFWも下がって守備をする状況を作りたいはずですが、そこの約束事がはっきりとしないため簡単にフリーな相手選手が生まれる状況になってしまっている。
 かといって、前から追いかけるプレスをかけるには、クレーベも左右SHも守備に意欲的ではないだけに実現が難しい…という状況になっているのではないでしょうか。

 新潟はその点で割り切っていて、レオナルドが無理に追うことがないですが、低い位置でジェフのボランチにボールが入れば、必ずFWが見るようにという約束事だったのではないかと思います。
 ジェフの場合は2トップが相手ボランチを見つつ、状況に応じて相手CBも追いかけるということになっているのではないでしょうか。
 そこでもし2トップのプレスが交わされ、相手ボランチにボールが入ったら、ジェフのボランチが前に出ていけ…という指示なのかなと思います。


 結果的にFWが相手ボランチも相手CBも見るという発想で、うまくいくのであればそれが理想なのかもしれません。
 しかし、クレーベが1トップにいる以上はプレスをかけ続けるのは難しいし、プレスがはまらないと船山も諦めてしまうところがある印象です。
 そう考えていくと、理想的なプレスばかりを追い求めるのではなく、現実を見る必要もあるのではないでしょうか。

 江尻監督はそうやって理想を追い求めつつも、あまりハードワーカーは好きではない印象で、FWには巻やアランではなくネットやクレーベといった一発を持った選手が好きなところがある印象です。
 理想的なサッカーというのは言い方を変えれば、オーソドックスなサッカーともいえるのかもしれません。
 しかし、ネットやクレーベのようにプレスをかけられないCFを起用するためには、どうしてもオーソドックスなやり方だけではなく現実を見据えて変化や工夫を施すことも必要になるのではないかと思います。

 その現実を加味したサッカーを作れないことが、大きな問題になっているのかもしれません。
 いずれにせよ、プレスをはめきれない、マークの担当がはっきりしないという状況なのであれば、そこはメンタルではなく戦術的な問題も大きいと言わざるを得ないと思います。
  中盤も含めて守備的な選手が少ない問題も大きいとは思いますが、そういった部分も踏めて今いる選手の中でうまくチームをまとめ上げることが監督に求められる資質なのではないかと思います。