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クレーベの背後を取られて失点を浴びる

 ちばぎんカップでの1失点目は、クレーベの背後を江坂にとられたところから、裏へのパスを配給された展開でした。
 これは試合前に私が懸念した内容と、言っていいでしょう。
 まず、1失点目の展開を図にしてみました。

 2020年初のフォーメーション図ということで、新しいツールTCTICAListというものを試してみました。
 アニメーション画像などを作れる素晴らしいツールなのだそうなのですが、私の使用方法が悪いのかWindows環境だからかうまくいかないのかなぜか選択できず、作成時の表示にも問題がありました。
 使いこなせればやれることが増えて便利そうですが、その分図を制作する時間もかかりそうな気もしますので、そのうち元に戻すかもしれません(笑)

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 この場面の前にジェフが中盤でボールを奪い、田坂が縦にボールを出します。
 それを処理した古賀に対して、クレーベが追いかけます。
 しかし、試合前から心配していたように、クレーベは古賀へは追いかけるものの、そこで足を止めてしまい、ポジションにも戻ってきません。

 それによって、黒い四角で表示したエリアがぽっかりと空きます。
 そこで江坂がボールを持つと、フリーな状態のまま余裕をもって前進し、オルンガに縦パスを供給し失点してしまいます
 オルンガへのCBの対応にも問題はあったのでしょうが、これだけ余裕をもって中盤でボールを持たれれば、良いボールが供給されると思った方がいいでしょう。


 
 試合後にも書きましたが、組織的な守備を構築しようとしている尹監督だからこそ、1つの綻びが出来たらそこから一気に混乱状態に陥る可能性があると思います。
 ようするに今季は4-4-2の10人で、ボックスを形成することを前提としている。
 この場面に関して具体的に言えば、FW2人が4×4の前で相手ボランチエリアをしっかりと埋めていることを仮定して守ろうとしているわけですから、1人でもFWがフラフラと歩いていると、そこからその前提が崩れてしまい、守備に穴が生じてしまうのだと思います。

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 これはあくまでもボックス守備のイメージです。
 作ったあとから分かりにくいなと反省したのですが、選手を囲った四角いエリアが守備範囲で、選手全員で作るのがボックス守備といわれている状態です。
 これがボックス守備の基本的な考えだと思いますし、全員でまとまって守ることによって相手のボールをボックス内に入れさせないことが目的となるはずです。

 逆にこの守備範囲が1つでも欠けると、全体のボックス隊形が崩れてしまう。
 例えばFWが守備をさぼればそこからDFライン裏への距離は近いわけですから、ボックスの前から裏へパスを出されても仕方がない。
 それでは残った他の選手がいくらボックスを形成しても、意味はなくなってしまうはずです。


 逆に前からのプレスがハマれば、他の選手が連動して動き、隙の無いボックスを形成したまま、相手を押し込めることもできる。
 ただ、もしも1人でもさぼったら、あるいは1人のプレスが簡単にかわされる状況だったら。
 周りの選手は「前に付いて行かない方がいいのでは?」、「下がってバランスを取った方がいいのでは?」と疑問が生まれかねない。

 そうなってくると、徐々に守備組織にも迷いが生じ、連動した守備も出来なくなってくる。
 だから、意外と監督交代後の初戦というのは、実戦での怖さを選手が体感していない分、監督本来のやりたいサッカーが見える場合も多い。
 あるいは、「まだ初戦だから」とウカウカしていると、そこからチームが悪化するということも十分にあり得るということだと思います。


 よって、局面はまだまだ甘いけれども、戦術はうまくいっているという発想は、非常に怖いことだと思います。
 局面での寄せが甘ければ、戦術も徐々に崩壊しかねない。
 むしろ、局面での寄せが本来は守備の基礎中の基礎であり、それが出来ていなければ戦術も堅守も実現できないでしょう。

 もちろん開幕前の状況ではありますが、クレーベに限らず守備における局面の甘さは、昨年1年間を通して感じられた大きな課題であり、今に始まったものではない。
 全くの新チーム、全くの新メンバーならまだしも、試合に出た選手は昨年からあまり変わっていないわけですから、当然昨年からの個々の課題は残るものと考える方が妥当でしょう。
 その上でやれることは何なのか、どう改善し、どう変えていくのかを、少しずつ考えていかなければいけないのかもしれません。
 まずは今季の戦術の基本と、必要な要素と、現在の課題を、しっかりと捉えていく必要があるのではないでしょうか。

尹監督就任で変化を感じるもちばぎんカップは0-2の完敗

 今シーズンの幕開けを告げるちばぎんカップ
 結果は0-2でジェフの完敗でした。

 尹監督の就任したジェフは変化を感じ、連動した守備を狙っていたように感じます。
 しかし、守備がハマった良い時間帯も作れたものの、それが継続できず守備の甘さも目立った。
 これがコンディション問題なのか、戦術や連携などの問題か、相手のうまさもあったのか…。

 そういったものならまだ改善もできるでしょうが、個人的にはやはり選手個々の局面での寄せや運動量などの課題が目についてしまいました。
 選手の編成も変わらなければ、そう簡単には大きく変わらないのではないか。
 監督が変わって変化は感じても、やはり甘くないよな…とも感じた試合でした。

■開始早々に2失点を浴びる

 ジェフのスタメンは新井章太、米倉、新井一耀、チャン、安田、ボランチに熊谷、田口、右SHに田坂、左SHに堀米、前線にクレーベ、船山。
 控えには優也、増嶋、下平、小島、為田、見木、川又となりました。
 新加入はスタメンに3人、ベンチに1人となりましたが、やはり既存の選手が多いですね。

 ネルシーニョ監督が続投している柏は、昨年終盤のスタメンと変わらずシステムも4-1-4-1。
 昨年10月に行われたジェフ戦のスタメンから、山下が外れて鎌田が入っただけでした。
 しかし、ベンチには元ジェフの北爪を含む、新加入の6人が並びました。


 7分、早くも柏が先制。
 江坂が中盤後方でボールを持つと、そこから前線へ縦パス。
 これがCBの間にいたオルンガに入り、そのまま抜け出してゴール。

 このシーン、CB2人がオルンガを捉えられなかったことも問題ですが、その前に江坂をフリーにしてしまっています。
 江坂はクレーベの後方にできたスペースで受けて、ジェフのMFは間に合わず、DFラインも高いまま裏を取られてしまいました。
 この後も柏はクレーベの守備を狙っていた印象で、そこからリズムを作られていました。


 9分、柏の攻撃。
 右サイドからのCKをクリスティアーノが蹴ると、江坂がヘディングシュート。
 しかし、枠を外れます。
 
 11分には柏が追加点。
 高橋からのパスをクリティアーノが受けると、右サイド奥でチャンを抜き去り、角度のないところからシュートを決めます。
 チャンが完全にやられてしまった場面ですが、その後のフォローも遅く、GK新井もコースを消しきれませんでした。

 13分にはジェフのFK。
 堀米と並んだ田口が直接狙うも、シュートはゴールの左。
 ジェフはなかなかチャンスが作れません。


 そこからは停滞状態。
 ジェフはサイドからボールを持ち込みますが、ゴール前に侵入できず。
 2点リードした柏は無理をせず、じっくりと戦う展開になっていきます。

 28分にはセットプレーから、ジェフが久々の攻撃。
 中盤でのFKを堀米が蹴り、こぼれ球を田坂が拾ってミドルシュート
 GK中村がはじきますが、その前にオフサイドエリアのジェフ選手がGKのブラインドになり笛が鳴ります。


 33分、柏のチャンス。
 左サイドのスローインから、新井と対峙した江坂が粘ってキープし、クリスティアーノへ。
 クリスティアーノバイタルエリアでシュートを放ちますが、バー直撃でゴールならず。

 その後もスコアは動かず。
 ジェフの2点ビハインドで、折り返します。

■後半は動きが少なく0-2で敗戦

 3分、ジェフの攻撃。
 相手のパスミスから堀米がそのまま持ち上がってクロスを放ち、クレーベが飛び込みます。
 しかし、相手DFのブロックもあって、シュートは大きく外れます。

 その直後にも、ジェフの攻撃。
 堀米のクロスから、こぼれ球を田口が拾って狙います。
 しかし、シュートは力なくGK中村が対応。


 60分、ジェフは船山を下げて川又を投入。
 63分には柏の攻撃。
 ゴール正面の良い位置でFKを得ますが、クリスティアーノのシュートは壁に当たります。

 66分、ジェフは堀米、田坂を下げて為田、見木を起用。
 ジェフは川又を入れて長いボールが増えていき、その分ゴールに迫る回数は増えますが、チャンスまでは生まれず。
 柏は冷静にカウンターを狙っていった印象でした。


 71分、柏の決定機。
 左サイドで奥で得たFK。
 マイナス気味のクロスを受けた高橋がフリーでシュートを放ちますが、ポスト直撃でゴールならず。

 75分、柏はオルンガを下げて呉屋を投入。
 85分、ジェフは為田が負傷交代し下平を投入。
 下平が左SB、安田が右SBに回って、米倉が右SH、見木が左SHに回りました。


 89分、柏は江坂に代えて、神谷を起用。
 さらに、GK中村が負傷交代し、GKキムが投入。
 後半は動きが少ないまま、0-2で試合終了となりました。 

■現時点でのジェフの変化と課題と

 前半はいいところのなかったジェフですが、後半は多少押し返したようにも思います。
 ただ、柏は2点リードした時点で、無理をせずのらりくらりとかわしていたようにも見えました。
 後半は全体的に柏の運動量が落ちていたようにも思えますし、リードしたからこそジェフの攻撃を受けていたところもあったのかもしれません。


 尹監督の就任したジェフですが、開始数分でその変化を感じました。
 連動した守備で、相手のボールの動きに関して、選手たちが一斉に反応する。
 それによって、チーム全体で守ろうという意思を感じました。

 基本的には前線が追って、相手左サイドにボールを展開させたところで、ジェフの右SHが激しく寄せていく。
 それに合わせて、右SBや右ボランチなど2人目、3人目の選手も寄せることで、行き場をなくす。
 これがベースとなるプレスですが、この時の2人目、3人目の反応が非常に速い、あるいは右SHとほぼ同時に連動する動きが、今までと大きく異なるところでしょう。


 また、相手が苦しい姿勢でバックパスを出した時や相手が守備から攻撃へ切り替えた時など、隙があれば一気にハイプレスをかけていく。
 このハイプレスへ行く時の判断も、昨年以上にはっきりとしている印象です。
 ここも大きな変化ではないでしょうか。

 ただ、局面でのプレスの掛け方は甘く、右SHや前線の選手が寄せていっても前に出される、あるいは逆サイドなどに展開されることが多かった。
 プレスに行ってもパスを出されては、前に選手が出ているわけですから、逆にピンチになる危険性がある。
 また、ボックスの間を通されるパスも目立っていた印象で、選手と選手の間のコースを消す動きにも課題を感じました。

 さらに1失点目などはクレーベの後ろを取られて、相手中盤後方でボールを持たれた時点で、後方の選手がどう対処すべきか迷ってしまった印象でした。
 11人全員でボックスを作って守る守備をしているからこそ、1人でも交わされるとその後の対処法に困るところがある。
 クレーベなど守備に課題のある選手も多いだけに、そこの不安も感じた試合ではないでしょうか。


 攻撃においては、昨年と同様にサイド攻撃が多かったですね。
 ただし、昨年とは違って縦への突破ではなく、トライアングルを作ってサイドを持ち込むことを狙いとしていた印象です。
 しかし、中央からの攻撃は少なく、流れの中ではゴール前に攻め込めませんでしたし、やはり攻撃作りがうまい監督ではないようにも感じました。

 基本的には4-4-2で攻守に組織的に戦う、オーソドックスなサッカーと言えるでしょう。
 しかし、若干戦術的には古いのかなとも思わなくもないですし、そこからどれだけチームとしての厚みや柔軟性を持たせることを出来るのかが問われるのかもしれません。
 また、オーソドックスだからこそ、個々の能力が問われるところも大きいのではないでしょうか。

 特に守備がベースのチームということで、個々の守備能力や守備時の集中力が要求されるのではないかと思います。
 その点に不安があるためこの試合でも良い時間と悪い時間が出来てしまったのではないかと思うのですが、堅守のチームを作るためには90分間しっかりと隙なく戦えるようにならなければいけないはずです。
 それがこの攻撃的な選手構成で実現できるかどうかが、やはり今年のポイントとなるのではないでしょうか。