残念ながら先々週、リーグ・アンからの降格が決まってしまったグルノーブル。
2月にインデックスがグルノーブルの株式の売却した際に、グルノーブルの経営情報の一部を公開していました。
そこからデータから『営業利益』−『売上高(営業収入)』=『営業費用』、『総資産』−『純資産』=『総負債』を計算し、Jリーグやジェフのデータと見比べてみたいと思います。
1ユーロは125円で。
百万円単位に変更。
グルノーブルは2008-2009シーズンからリーグ・アンに昇格。
前2シーズンはリーグ・ドゥだったのですが、リーグアンに昇格したことで『営業収入』が増加。
しかし、補強のために強化費がかさんだのか、新スタジアムの使用料などで費用がかさんだのか、『営業費用』も大幅に増加し大きな赤字になっています。
こちらは同じ項目だけ摘出したジェフのデータ。
J1の中では経営規模は中堅。
経営状況も平均並といったところでしょうか。
『営業利益』、『経常利益』は出ていますが、毎年大きな額の『特別損失』が出ており、最終的な『当期純利益』はあまり出せていません。
こちらがJ1の平均。
一部クラブのデータが非公開ということもあって、06年の平均値は出していません。
(いや、計算すれば出るんですけどね。)
ちなみにこちらがJ2の平均。
当然のことながらJ1に比べれれば規模も大きく下回ります。
今年からジェフはJ2ですから、『営業収入』の減少なども覚悟の上で経営を進めていかなければならないはずです。
以前にも言いましたが、過去J2に降格したほぼ全クラブが『営業収入』を減少させてしまい、経営面で苦しむことになっています。
しかも、今年のJ2は試合数が減ったため、より『入場料収入』などの減少が予想されます。
ナビスコを含めて考えるとJ1よりも試合数が少なくなるのですから、それだけでも厳しい状況ですよね。
それに加えて、不景気の影響も心配されるわけで…。
J2に関しては今回は置いておくとして。
「Jリーグは経営規模が小さすぎる」という意見もありますが、グルノーブルの09年6月期の決算、ジェフの経営データ、J1平均の経営データの2つを比較すると、さほど大きな差はないと言えると思います。
唯一、資本金は大きな差になっています。
これはもともと親会社があってその完全子会社としてクラブが設立されるケースが多く、多額の資本金が必要ではない(資本金がなくても補填を受けることで経営が成り立つ)Jリーグのクラブと、そうではないグルノーブルとの違いが表れた結果なのかなと思います。
ただ、こうなってくると気になるのが、グルノーブルがリーグ・アンでどれだけの規模にあるかですね。
ということで、フランスリーグの経済データを見つけてきました。
例のDNCG(フランスリーグ経済監査機関)が発表したデータで、LFP(フランスプロサッカーリーグ)のこちらのページから閲覧できるようになっています。
私の語学力の問題もあって、全データを分析していくとかなりの時間がかかってしまうため簡単に見ていきますが、まずやはりチャンピオンズリーグに出場するような上位クラブの予算が非常に大きいですね。
例えば07-08、08-09と2シーズン連続でCLに出場したマルセイユは、約100億円以上もの予算を使えています(リヨンが最大で150億円以上になるのかな?リヨンはデータが複雑でわかりにくいのですが…)。
しかし、上位数チーム以外はJリーグクラブと比べても、それほど大きな規模ではないようです。
過去数年分のフランスリーグのデータとJリーグの平均データを比べてみると、だいたいJ1の平均がフランス1部中堅チームの少し下、第三グループの上の方でしょうか。
Jリーグトップのクラブ規模を誇る浦和(つい先日発表された09年のデータで約65億円)で、中堅チームの上位くらいに相当するのかなと思います。
ただ、フランスリーグの中でも上位規模のクラブと中堅規模のクラブとの差は大きく、なかなかJリーグのクラブがフランスのトップチームまで追いつくというのは難しいのかな…というのが現状だと思います。
オシム監督が“Jリーグのビッククラブ”を望むのも、このあたりに理由があるのかもしれません。
ビッククラブがサッカーのレベルだけでなく、経営面でも引っ張っていくことで、リーグ全体を活性化させていく…というピラミッドができれば、Jリーグの成長に繋がっていくという考えなのではないでしょうか。
しかし、世界的な不景気もあってフランスリーグも経営規模に関してはともかく、経営状態に関しては深刻なデータが出てきています。
こちらやこちら(フランス語)のニュースでも報じられているように、08-09シーズンでは赤字決算のクラブが増え、もっとも酷いRCランスは約17億円、2部のFCメスやオセールが約10億円、パリSGとグルノーブルが約6億7000万円の赤字となっています。
グルノーブルは経営問題で2部どころか3部降格という報道もありましたが、これを見ると深刻な経営となっているのはグルノーブルだけの問題ではないということがわかります。
これだけ多くのクラブが大きな赤字を抱えているとなると、グルノーブルだけに3部降格という罰則を科しては収拾がつかなくなるのではないでしょうか。
「グルノーブルの松井、移籍か?」なんて報道も出ていますが、これも本人の意思だけでなくクラブの経営問題も大きな影響を与えているのではないかと思います。
また、09-10年決算ではより厳しい数字が出る予想もされているようで、08-09年はフランスリーグの1部と2部で計40億円以上の赤字だったそうですが、09-10年は1億ユーロ(約125億円)にも膨れ上がる可能性があるそうです。
また、厳しい経済状況はフランスのクラブだけの問題ではなく、金融危機が起こり世界的な不況下に陥ったことで、様々なニュースが報じられています。
フランスリーグの経営的な苦戦も、背景として移籍金収入が大幅に減少したことがあるそうで、欧州全体の経済面の膠着が選手を買われる側のクラブチームなどにも大きな影響を与えているのかもしれません。
経済的な問題が一山越えればまた元通りとなるのかもしれませんが、西欧ビッククラブの移籍金や選手の年俸の高騰は近年、問題視されてきたことであり(マンチェスター・Cは全収入の95%が選手の年俸にあてられるなんてニュースも)、もしそのあたりが減少すれば西欧のクラブ規模も多少は縮小化してく可能性もあるのかなぁとも思います(あくまでも勝ってな推測ですが)。
一方でJリーグなどは選手の移籍金などで収入を得てきたわけではないですからそういった被害は少ないわけですし、考え方を変えれば少しでも西欧リーグと差を狭めるためのチャンスになりうるのかもしれません。
ただし、もちろん世界的な不況の波は日本にも影響を及ぼしており、広告料収入や入場料収入へのダメージも予想されます。
昨年末から経営的に厳しいクラブも出ていますが、まずは現状の課題を乗り越えることを第一に考えながら、サッカーだけでなく経済面でも発展していってほしいですね。
それが日本サッカー界全体の発展にもつながるはずだと思いますし。
関連リンク:経営分析法で見る、各クラブの経営評価 その1(ゆっくりいこう)