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アムカル・ペルミと巻の現状

 twitter上でいろいろと助けていただいたこともあり、なんとかアムカル・ペルミアンジ・マハチカラの試合を中継で見ることが出来ました。
 ありがとうございました。


 ネット上での放送だったので細かい部分まで見れたわけではないですし、選手の名前などもいまいちよくわからなかったのですけど、せっかくですから試合の感想を述べてみたいと思います。
■巻の役割は前線での動き出し
 フォーメーションは両チームともに4-4-2。
 基本的にビルドアップはロングボールを蹴って、高い位置にポイントを作る形でした。
 アムカルは右SHコロメイチェフと巻のパートナーであるFWクシェフの頭をターゲットにして、そこを拾って中盤がパスをつないでいって、最後はクロスという狙いがあったように思います。
 特に前半目立っていたのは、右で作ってサイドチェンジをし左でクロスという形でした。
(コロメイチェフは巻と共に入団記者会見に参加した選手ですが、既に6試合に出場しておりチーム内での信頼も十分得ていたような印象でした。そしてクシェフはブルガリア人で代表経験でも1試合出場経験があるそうなのですが、36歳とのこと。)


 そんな中で巻の役割はロングボールのターゲットになるのではなく、中盤の選手が受けた後にどんどん前で動き出すこと。
 試合序盤、何度か右サイドでボールをつないでいる間に、良いタイミングで前に出ていったのですが、ボールは出てこず。
 このあたりは信頼関係の問題も絶対にあると思いますし、単純に連係不足といった面もあるんだろうなと感じました。
 

 しかし、前半10分過ぎには巻が前に出たことで相手DFが後ろにつられ、そのスペースに味方選手が入ってきて、チャンスを作る場面も。
 その直後には、右サイドからのクロスを左SHが折り返し、最後は巻がヘディングシュートという展開も。
 大勢の問題もあって力強いシュートとは行きませんでしたが、これが巻のアムカルでの初シュートとなりました。



 前半の中頃は中盤の選手のパスワークの良さも見られ、アムカルがボールを支配する時間帯もできていたと思います。 
 この時間帯で一度完全にキャプテンのクシェフがスルーパルに反応しDFラインの裏に抜け出し、GKの一対一の場面を作ったのですがシュートは枠の外に…。
 試合全体を通して見ても、非常にもったいない場面でした。
■守備に課題の見せるアムカル
 対するアンジもロングボールが攻撃の1つのポイントになっていて、そのあたりはさすがロシアなのかなぁと思っていたのですが、狙いは少し違ったかなと。
 アンジのFWはスピードがあり、特に試合序盤はロングボールで裏を狙うことが多かったと思います。
 それを警戒したせいか、アムカルのDFラインが下がりがちに(いや、もしかしたら裏を狙われなくても、ああだったのかもしれませんが…)。


 攻撃に転じた時のDFラインの押し上げも足りず、守備から攻撃への切り替えも遅い。
 また、ボランチの守備も軽かったと思います。
 特にドリブルに対しての守備が緩く、攻め込まれるとボランチ2人がズルズルと下がっていってしまいました。
 ボランチ2人の攻撃に転じた際の技術力は予想以上に高かったのですが、守備に関しては課題が多いのかもしれませんね。
 押しこまれる前のポジションバランスも不安定で、奪いどころがはっきりとしていませんでした。
 一方のアンジはDFラインとMFラインがしっかりと組織化されており、守備の面で1歩上手だったのかなぁと感じました。



 前半44分、アムカルのCB2人が何でもないところで重なり、おろおろしてボールの処理を誤ると、相手選手にボールを拾われ最後はPKに。
 これを確実に決められ、先制されてしまいます。
 このシーンに限らず最終ラインの守備陣は、かなり不安定でしたね。
■徐々にボールを触る回数が増える巻
 後半も前半と大きく変わらない展開だったかなと。
 アムカルが押し込むシーンもあったけれど、特に中央の守備に関して雑な部分も見られたし…。


 ただ、巻に関しては後半からようやくボールが回ってきた印象でした。
 後半序盤には巻が後方からのロングボールに対して、相手選手を押しながら反転して前を向き、縦パスを出すといった展開も。
 その後もDFを背負ってのポストプレーや、クロスに合わせようとするシーンが増え、ようやく巻らしいプレーが見られたように思います。
 試合終了間際には、CKからの流れからヘディングでボールを折り返す惜しいシーンも作れていましたし、ゴールまでの距離はありましたが左からのクロスに直接ヘディングで合わせたのも巻だったんじゃないかなと思います(自信があまりない)。



 しかし、アムカルの攻撃もなかなかクロスの質やドリブルの鋭さのような、最後の部分で一段ギアを上げられるようなプレーが見えてきませんでした。
 アンジに対して体の大きな選手が多く、(少なくともこの試合では)そこが1つの武器になりそうだということはわかったのですが、攻撃に大きな変化を付けられずに終ってしまったように思います。


 ただ、そこまでの中盤でのつなぎやビルドアップに関しての狙いに関しては、ある程度狙いも見えたように思います。
 終盤もクロスがもう1つ超えればビックチャンスなのに…という場面は、何度か作れていましたしね。
 それよりも心配なのは、意外と守備なのかもしれません。
 組織の面もそうですけど、この試合ではCBのスピード不足も露呈していたように思います。


 試合は0-1のままアムカルの敗戦ということになりました。
■ロシアリーグとJリーグの違い
 個人的には未知のリーグの試合を真剣に見られた上に(本田の出場試合はダイジェストくらいしか見てなかったもので)、巻の新たな挑戦の第一歩も見届けることができたのは、嬉しいと同時に楽しさも感じました。
 意外とロシアリーグといっても、中盤でのテクニックはしっかりとしているし、審判も頻繁に笛を吹くんですね(笑)
 ロングボールに関してもただ放り込んでいるわけではなく、その後を考えた上でボールを蹴っている印象で、決して大雑把なサッカーとは言い切れない組み立てだと思いました。
 アムカルはわざわざGKがDFラインに出してから縦にロングボールを蹴るシーンが多かったのですけど、あれもロングボールの質を重視した上でなのでしょうし(ただ、その分DFラインの押し上げが遅くなっていたようにも思うのですが)。
 アンジもアムカルのDFラインが下がってからはロングボールの狙いを裏ではなく表(前方の選手の足元)に切り替え、そこから繋いでいって相手を攻略しようという意図が見られました
 ロングボールを頻繁に使うのはMFラインを超えることが第一目標であり、そこからはわりとしっかり崩していこうという意思があるのかなぁと感じることが出来ました。



 ロシアプレミアリーグのレベルに関しては、twitter宇都宮徹壱氏が「上位6チーム(モスクワ勢、ゼニト、ルビン)は、間違いなく向こうが上。下位10チームならJクラブ上位といい勝負、という印象ですね」とおっしゃっていました。
 今回の試合もさすがにJリーグ上位レベルとは思えませんでしたけど、中位くらいには位置するのかなぁ?といった感想です。
 降格圏内にも入ろうかという2チームの戦いだったわけですが、基準として過去2年間のジェフの内容を思い出すと、この試合の方がレベルは高かったんじゃないかと思いますし(笑)



 それでもどこか野暮ったく見えるのは、質の問題というよりもJリーグとのスタイルの違いが大きいのではないでしょうか。 
 例えばロングボールでのビルドアップが多いことは日本人が見れば大味に見えることはあるかもしれないけれど、あちらの人がJリーグの試合を見れば「何をチマチマと後ろで繋いでいるのか」と思うかもしれませんし(笑)
 このあたりは一長一短ですよね。
 確かに「そこはさすがに繋ぐべきだろう」と思うシーンもありましたけど、Jリーグの試合を見ても「そこは大きく展開すべきじゃないの?」と感じるシーンもありますしお互い様なのかなと。
 両チームとも中盤がボールをこねて奪われるシーンも目立ちましたが、一方で速く大きな展開だとかフィジカルや空中戦に関しては見る物があったと思います。
(中盤の選手が自力で前を向いて展開しようというプレーが目立ちましたが、これもスタイルの違いなのかなと。ミラー監督もそういった形を狙っていた部分があると思いますし、世界的に見ても決して珍しいものではないと思います。)



 ただし、確かにアムカルの守備陣に関しては、どう見ても酷い状況だったと思います。
 チーム全体の問題としてラインが下がり過ぎていたし、一対一の部分でも相手にやられ過ぎていた印象があります。
 最終ラインが下がりがちだから攻撃においてもサポートが出来ていなかったし、チーム全体のリズムも作りづらい。
 そして、カウンターの餌食になってしまう…といったところですね。


 この夏にMFとFWを補強したはずのアムカルですけど、守備陣はこれで大丈夫なのでしょうか…。
 怪我人などの問題もあるかもしれないので、詳しくはわかりませんけれども。


 あとはちょっと全体的にボールに淡白な印象があったのが心配です。
 まぁ、これもなんとなくロシアらしい印象もするのですが、メンタル的な要素もあるかもしれないので、巻のリーダーシップの面に期待したいですね。
 ネット上で試合を見た限りでは、そのあたりに関してはまだ抑え気味なのかな?と感じたのですが、もっと積極的に気持ちを見せていってもいいんじゃないでしょうか。
 あちらの監督も「プレースタイルだけでなく、ジェフでどういう立場だったのか」(サカダイより)までも含めて獲得に動いてくれたようですし、そのあたりも期待されているんじゃないかと思いますし。
■巻への今後の期待と課題について
 さて、肝心の巻のプレーについて。
 まず、高さについてですけど、やはりロシアリーグではそのままでは、なかなか競り勝てないのでしょうね。
 少なくとも今までのように、後方からのロングボールのターゲットになる仕事は難しいのではないかと思います。
 だから、もう1人のFWクシェフと右SHコロメイチェフをターゲットにして、巻は前線で動き回るというは個人的にはすごく納得しました。
 このあたりは、さすがジェフでの映像を「そうとう見てくれた」(こちらもサカダイより)らしいラキモフ監督ですね。


 しかし、前線での動きだしに関しては、巻らしさも出せていたのではないでしょうか。
 回数こそ少なかったですけど、何度か巻の動きでボールを引き出していましたし、相手がつられてスペースを作ることも出来ていました。
 ヘディングに関してもクロスへの入り方に関しては可能性を感じていましたし、チームとしてもクロスの意識は高いですから、このあたりは他選手との連携を深めていければ初ゴールというのも自ずと期待できるようになっていくではないかと。



 それと足元でのポストプレーに関しても、良い形を作れていたと思います。
 巻は短い距離に「落とす」プレーに関しては非常に確実性がありますし、周りも良く見えている選手だと思います。
 ただし、そこから大きな展開が作れるというタイプではないし、自分で持ち込めるタイプではありません。
 ですから、出来る限り近い位置にサポートに来てほしいのですが、そこが巻にとっての大きな山になるのではないでしょうか。


 周りの選手に信頼してもらえなければ、中盤からのサポートはなかなか来ない。
 サポートが来なければ、巻の足元でのポストの良さは出てこない…。
 当り前のことではありますが、自分でどんどん突破していくタイプではないだけに、しっかりとコミュニケーションをとって、周りに信頼してもらうことが何よりも重要ですね。


 巻としては足元での「落とし」でリムズを作りながら、アムカルでのメインタスクになるであろう前線での動き出しと、クロスに合わせてのヘディングシュートという形をどんどん作っていきたいところではないかと思います。
 この試合が進むにつれてボールが回ってきたことから考えても、徐々に周りからの信頼も得られるようになっていったのだと思いますしね。



 チームは負けてしまいましたしゴールもなりませんでしたが、移籍直後の試合でスタメンフル出場を果たしたということは、監督に信頼されている証ではないかと思います。
 これから連携を深めていって、より良いチームにしてほしいですね。


 …しかし、巻が攻撃の際にFKの壁となり、CKの守備時で前線に待っているシーンにはさすがに驚きました(笑)
 そのあたりも含めて新たな発見が多く見つかったし、個人的には純粋に面白い試合だったと思います。
 アムカルに関しても現時点での課題は多いように感じましたが、伸びしろに関しては期待できるチームなんじゃないでしょうか。