当ブログはプロモーションを含みます

劇的な展開で「仮想長崎」と引き分け

 久々にテレビ観戦しているだけでも疲労困憊な試合で、見ていて胃の痛くなる展開でした。
 理想を言えば、できれば簡単に勝ってプレーオフに弾みを付けたかったところです。
 しかし、京都も長崎もここにきて2連敗ということで、追われる立場の辛さやJ1昇格に向けてのプレッシャーというのは、どのチームも抱えているのだろうなぁと感じます。
 逆に鳥取は失うものは何もない状態で、最下位とは思えない決して侮れないクオリティの試合をしてきました。
■長崎のような鳥取の戦法に苦しむ
 序盤はジェフにいくつかチャンスがあったと思います。
 ここ数試合同様に、早く縦にボールを動かす攻撃でリズムを作っていきます。
 前半2分、トップ下の位置で受けた町田から、うまく相手の裏を取る動きを見せたケンペスにスルーパス
 そのままシュートを放ちますが、ポスト直撃でこのチャンスを決めきれず。


 すると、前半15分。
 相手中盤からのミドルシュートがジェフの選手に当たってコースが変わり、永里がつめて先制されてしまいます。
 多少不運もあった失点ではありますが、ミドルシュートを放たれる前に健太郎がボールを奪いに行って交わされていますから、そこでやられてしまったのが大きかったと思います。
 ボールを奪うところも含めて、前への意識が高すぎてリスク管理が出来ていなかった印象でした。



 そこからは完全に鳥取ペース。
 鳥取は4バックという予想もあったのですが、ジェフ対策を講じてきたのか3-4-3のようなフォーメーションで戦ってきました。
 3トップが積極的飛び出して、ジェフの両SBが押し下げられる。
 これによって攻撃時もジェフのSBは一歩後れを取り、積極的な攻撃参加が出来ませんでした。
 SBが上がっていく頃には相手の5バックが完成…といった状況で、なかなかSBを活かせない状況に。
 先に失点してしまったこともあって、難しい試合展開になってしまいます。


 鳥取は守備時もジェフのSBを警戒し、必ずウイングが見るようにしてSBをフリーにさせません。
 鳥取の3トップは片方のウイングがボールサイドのSBを見て、残り2人がCBへプレスをかける。
 これでジェフCBからのビルドアップも遮断してきました。
 そして、鳥取のCBとボランチが待ち構える形で、ジェフの早い展開での縦パスを潰しにかかる。
 鳥取の守備陣はSBへの展開を断ち切っており、ジェフの縦パスを読んでアタックに行ける状況でしたから、対応しやすかったのではないでしょうか。
 


 3トップがどんどん前に出ていってSBを押し下げ、ウイングは守備時もSBをケアし、前線の残り2人でCBにプレスをかけ、後方は縦パスが入ったら潰しに行く…と。
 試合展開も含めて、長崎戦と同じような内容になっていきました。
 鳥取もジェフと対戦した時の長崎を、研究してきたところがあるのではないでしょうか。


 こうなってくると、ジェフはじっくり攻めたいところだったと思うのですけど、相手のプレスもあって縦に早い展開ばかりに。
 また、なまじ縦パスが2列目やケンペスに入ってしまうので、縦に出したくなる部分もあったのかなぁとは思います。
 ただ、縦にパスは通っても相手は後方の人数が多く、1人交わして前を向いても他選手に囲まれるような状況でしたので、なかなかチャンスは作れませんでした。
■終了間際に2ゴールで追いつく
 前半終了間際には鳥取のプレスも弱まってきたように感じたのですが、後半開始からまた巻き返してきました。
 そして、後半4分鳥取の廣田が追加点をあげます。
 裏に抜け出す廣田をキムが並走していたのですが、角度がないエリアだったためシュートはないと見たのか、若干キムの寄せが甘かった印象です。


 また、山口智が中盤で潰しきれなかったところからボールが出てしまいましたので、そこももったいなかったかなと。
 山口智は前半で負傷していたようにも見えましたし、前節も簡単に裏を取られていたので、ちょっと心配なところがありますね…。
 ただ、代わりの選手もいないですし、キャプテンシーのある選手ですから、最後まで頑張ってもらうしかないのだろうなとは思うのですが。



 この1点もあって鳥取はより勢いを増し、逆にジェフは精神的に追い込まれていった印象でした。
 ジェフは後半開始と同時に、田中に変えて森本を投入。
 相手後方の守備陣の密集と寄せの激しさもあり、フィジカルの強い森本を投入したということではないかと思います。
 決定的な効果は生まれなかったものの、2列目より先でボールを失うことが多かった展開で、うまく体を入れられる森本のポストプレーは効いていた部分もあったと思います。


 後半11分、山口慶に変えて深井を投入。
 深井を右サイドで起用して、兵働をボランチに移動させました。
 同様の戦い方をされた長崎戦でも感じましたが、ビルドアップにおいて大事なポイントである高橋をマークされCBへのプレスも厳しい状況でしたから、ボランチからのビルドアップをもっとやっていきたかったはずで。
 鳥取も長崎もサイドやロングボールからの攻撃が多くそうなってくると山口慶も活きにくいですから、山口慶を下げて兵働をボランチに置き中央からのビルドアップを期待したということなのでしょう。


 加えて、右サイドの深井。
 これまでにはあまり見られなかった起用方法ですが、SBの攻撃参加が封じられたこともあって、SBより前をドリブルでゴリゴリと突いていこうということだったのではないかと思います。
 強引なドリブルでの仕掛けなら深井ですからね。


 後半23分には町田に変えて谷澤を投入。
 この少し前から徐々にジェフの運動量も落ちてきました。
 しかし、試合終盤に足がガクッと止まったのは、鳥取の方だったと思います。



 そして、後半36分。
 右サイドでボールを受けた深井が縦に仕掛けて、切り替えしてセンタリング。
 これを森本が頭で合わせてようやく1点を返します。
 深井、森本と途中交代で起用した選手が結果を残しました。


 こうなってくると押せ押せのジェフ。
 鳥取は何とかジェフの攻撃を防ぐといった展開になります。
 しかし、残り時間は10分+ロスタイムを切っているということで、時間はない状況。
 しかも、他会場では徳島が長崎に勝利し、このまま敗戦ではプレーオフ圏外の7位に落ちるということでした。


 このまま逃げ切られてしまうのか…と思われた、後半ロスタイム。
 健太郎からのロングボールをケンペスが競り合い、こぼれ球を兵働が拾って抑えの効いたミドルシュート
 これが決まって試合終了間際に同点となりました。
■「仮想長崎」打開のヒント
 前半途中で「仮想長崎」といった印象を受けて、これを攻略できれば長崎相手にも勝てるキッカケが掴めるし、勝てなければどちらにせよ長崎に負けてしまうだろうな…なんてことを思っていました。
 しかし、その長崎もここにきて連敗で最終的に6位に後退。
 プレーオフ初戦で戦う可能性が高いだろうと思っていたのですが、何が起こるかわからないですね…(笑)


 それでもプレーオフ出場チームを見ると、長崎はやりにくい相手であることは変わりないと思います。
 個人的にはジェフにとって一番戦いにくい相手ではないかと。
 その長崎と似たような戦いをしてきた鳥取相手に厳しい試合ながらも引き分けに持ち込めたという点は、プレーオフに向けて良い材料になるのではないでしょうか。
 もちろん長崎ほどの守備での粘り強さ、跳ね返す強さ、そして、豊富なスタミナはなかったと思いますが。
 しかし、その分この日の鳥取は、決定力においてかなり高いものがあったと思います。



 こういった相手への打開のヒントを考えると、1つには個人での突破力を活かすこと。
 具体的には、深井や森本の起用ということになると思います。
 相手は後方に守備を固めつつ、ゾーンでエリアを見るというよりは人を見ることが多いわけですから、どうしても一対一の勝負が大事になってくる。


 栃木戦や札幌戦のようにうまく間を突いて裏を狙っていってという攻撃だけでは、マンマーク気味の3バック相手ではやりにくい部分があるわけで、上手く個人での仕掛けも絡めていきたいところではないかと思います。
 もちろん個人での突破力に頼りすぎるのは良くなく、多人数に囲まれた状況で強引に仕掛ければいいというものでもなく。
 ジェフの1点目のように深井がサイドで仕掛けてクロスを上げる展開というのは、1つの理想的な形と言えるのではないでしょうか。
 ジェフとしては、もっとそういった仕掛けやすい局面を作るために、ボランチを中心としたパスワークからの展開を作りたかったんですけど、それが出来なかったというのが大きな課題でした。



 もう1つは単純ですけど、諦めずに戦うことですね。
 いくら守備が堅く良い流れで戦っているチームでも、どこかで綻びは出来てくるはずで。
 あるいはその綻びを増やし広げていくためにも、諦めずに攻め続けなければいけない。


 この試合でも先に運動量が落ち始めたのはジェフの方だったのではないかと思うのですけど、その後鳥取がガクッと足を止めて引き分けに持ち込めた。
 先日対戦して勝てそうにもなかった長崎も3位の京都も2連敗しているくらいなのですから、相性などもあるとはいえ何が起こるかはわからない。
 その何かを信じて戦い続けられるかどうかが、一発勝負ではカギを握ってくるかもしれません。



 この試合では勝ち越せはしなかったものの、苦手なサッカーをやれてて、2点先制されて、運動量も先に落ちて…と最悪な状況だったにもかかわらず、最後まで諦めずに戦えた。
 そして、あきめなかった結果、2ゴールという成果も残せたのですから、これは大きな励みになるのではないでしょうか。
 ビハインドの状況で試合終盤を迎えると早々に諦めモードに入ってしまうことの多いジェフでしたから、なおさらこの2ゴールというものは価値のあるものだと思います。


 本来ならば前節栃木戦でチャンスはあったものの決めきれない展開が多かったですから、この試合ではしっかりと得点を決めて試合に勝って勢いに乗りたかったところ。
 しかし、2点ビハインドから追いついて劇的な展開でプレーオフ進出を決めたという展開も、チームを勢い付けるにおいては決して悪くないのかもしれません。
 むしろ危機感も残しつつ、課題克服の可能性も見えた試合だったわけですから、変に圧勝して油断してしまう寄りも良かったのかなと、今は前向きに考えたいところです(笑)



 もちろん、これが良い試合だったか悪い試合だったかを本当に言えるのは、プレーオフでの結果次第。
 この試合で完全燃焼して次につなげられなかった…ではいけませんし、うまく勢いをキープしつつ選手たちの身体も休めて、万全の状況でプレーオフに臨んでほしいと思います。
 いよいよ、決戦ですね。