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遅攻改善の重要性と甲府・大宮の守備

 GW連戦ということで、バタバタと3試合を消化してしまった印象がありますので、少しずつ振り返ってみたいと思います。
 連戦の初戦の甲府戦から、ジェフは大きな変化が生まれていました。
 守備時に無理にハイラインを維持することを止めて、引いて守る形にシフトした印象です。


 それによって、相手が遅攻状態にもかかわらず後方に広大なスペースができ、被カウンター時のような状態になることが少なくなりました。
 セットした状況での守備バランスに関してはまだまだ不安材料が多く、ボランチがスペースを埋められていなかったり、潰し切れずに展開されてしまったりといった問題も見受けられます。
 それでも相手がボールを持った時に人数をかけて守れるようになったことは大きい…というか、ようやく通常に近い守り方が出来るようになったと言えるのかもしれません。



 ただ、サッカーの展開には、4パターンがあるという見方もあります。
 それが「攻撃」、「攻撃から守備への切り替え」、「守備」、「守備から攻撃の切り替え」になります。
 そのうちの「守備」は改善できた部分もあるといえるのでしょうが、それ以外はどうなのか。


 「守備から攻撃の切り替え」によるハーフカウンターに関しては、岡山戦でも選手たちが動けていれば良い形を作れたと思います。
 しかし、「攻撃」…要するに、遅攻状態での戦い方に関してはこの連戦中も変わっていないと思います。
 それならば「いっそボールを持たない」という考えも出来るのではないかと思いますし、昨年終盤はボールを持つ時間が短かった記憶もあります。



 ただ、エスナイデル監督は大宮戦前のインタビューで、「ボールを持てば持つほど相手の後ろを走る必要がなくなるので、ボールを持って相手の陣地でプレーしたい」と話しています。
 ということは、引いて守る形を取っても「ボールを長く持ちたい」という狙いは変わっておらず、実際の3連戦でもボールを持つ時間は長かったと思います。
 改めての確認ということになりますが、エスナイデル監督のサッカーはハイプレス・ハイラインによるハーフカウンターが目立ちますが、「ボールを持つこと」も重要なテーマと言えるでしょう。


 大宮戦前のコメントからするとボールを持って崩すというよりは、守備機会を減らすためのポゼッションという意図も感じます。
 しかし、90分内でポゼッション状態の時間が長くなるのであれば、当然遅攻の質も求められることになるでしょう。
 ボールを持つ時間が長くなれば「攻撃」展開以外の機会が少なくなることにもなるわけですし、ボールを持っても崩せなければフラストレーションがたまる上に、下手な奪われ方をしないためにも遅攻時にシュートまでの形を作れる術が必要になってくるはずです。



 ということで、いつものことではあるのですが、ジェフの遅攻時の状況をを手の守備も含めて振り返りたいと思います。
 まずは甲府戦。

 甲府はバホスとリンスの2トップがあまり守備をしないので、前からのプレスは緩めでした。
 その分、2シャドーの位置に入った田中と橋爪が、図のように中から外へ出ていく形でサポートしていく。
 これは昨年の甲府にも、見られた形だったと思います。


 甲府は5-3-2で中央が厚いため、ジェフはサイド後方でパスを繋ごうとインサイドやCBなどが、その位置で受けようとする。
 それに対して、甲府は2シャドーが前に出ていくと。
 また、ジェフのWBが下がった時には、そのまま対面のWBがついて対応していました。



 2トップが追えない分、前半途中からジェフがボールを持つ時間が長くなっていった試合でした。
 また、どうしてもシャドーの負担が激しくなるため、徐々に広範囲を守り切れなくなっていった印象です。
 そこで後半途中からは、リンスを左SHとした5-4-1に変更しています。


 リンスも守備範囲を限定すればある程度守れる印象で、バホスもカウンター時には広いスペースを与えられた方が怖かったように思います。
 結局、ジェフは試合終盤に近藤のゴールで1-1の同点としますが、シュートは合計で2本止まり。
 後方で守備を固めた相手に、打開策を見いだせなかった試合といった印象でした。



 続いて岡山戦はシュートも10本打てており、優勢に試合を進められた印象です。
 岡山は前からしっかりと追いかけて、はめ込んでいく守備が本来の戦い方と言えるのではないでしょうか。
 しかし、ジェフ戦では前からの守備をはめきれず、苦戦したのではないかと思います。

 図のように、岡山は一度中盤でボールを持たせても前に出させない形を作り、相手にバックパスをさせる。
 そのバックパスに合わせて、一気に1トップがチェイスしていきプレスをはめていく守り方だと思います。
 この時の追い方やパスコースの消し方によって、一方のサイドにボールを追い込むことが重要なのだと思います。


 サイドに追いやることで逆サイドのシャドーが中央へ絞ってプレスに厚みを作り、同サイドのシャドーは相手サイドを見る形になっている印象です。
 しかし、逆サイドのシャドーが中央に絞るためにも、前線からプレスをはめこんでサイドに上手く追いやることが前提となる。
 それだけ1トップを中心とした前の選手たちのプレスの質と運動量が、必要になってくるはずです。



 しかし、試合後にも話しましたが、岡山の選手たちは走れておらず、1トップに入った赤嶺のバックパスへの反応も一歩遅かった。
 実際、岡山は次節福岡戦で、前線三枚をガラッと全員変えています。
 連戦だからという事情もあるのでしょうが、それだけ前線の運動量が大事なサッカーをしているのだと思いますし、ジェフ戦ではそこに不満があったということではないでしょうか。


 だからこそ、イ・ヨンジェの離脱は、岡山にとって大きな痛手となっているのではないかと思います。
 一方のジェフはそれに対して、赤嶺がチェイスに来る前に大きくサイドに展開することでプレスを回避し、サイドから押し込んでいきました。
 岡山はシャドーが絞りがちなプレスをしてくるだけに、外への大きな展開が効いていたのだと思います。

 さらに図のように、熊谷が下がって3-4-3に近いシステムにもなっていました。


 ジェフの3バックに対して岡山の前線の3枚でプレスに来ることもありましたが、それだとサイドがWBの1枚になってしまう。
 ここでも前線3枚でのプレスがはまればよかったのでしょうが、前の3人が走れていないだけに簡単にプレスをかわされれてしまった。
 そして、ジェフは相手サイドがWBの1枚になったところを、SBとウイングと時にはインサイドも絡んで押し込んでいったことになった試合だったと思います。




 結局、前半途中からは無理に前に行かずに、5-4-1で守る意識の強い形に代わっていった印象でした。
 しかし、ジェフが3バック気味にビルドアップするケースはわかっていたはずなだけに、若干岡山は準備不足だったのではないかとも思います。
 ただ、前提にあるのはプレスがはまらなかったことだと思いますし、連戦中日のアウェイということもあって走れなかったことが大きかったのではないでしょうか。


 ジェフからすれば、甲府戦に比べると優勢に戦えた試合だったと思います。
 相手のプレスをロングボールで交わしてサイドから押し込み、さらに走力で勝ってプレスからのハーフカウンターやセカンドボールへの反応でも優位に立てた。
 これによってさらに相手を押し込むことで、被カウンターを受ける恐れも減っていたと思います。



 ようするに、走力で勝ったこともあり、「攻撃から守備への切り替え」、「守備から攻撃の切り替え」でも優位に立てた。
 さらに、攻め込まれれば引いて守る形にシフトしたため、「守備」時の対応でも改善が見られた。
 ただ、押し込んでからの攻撃に関しては岡山戦でも課題が見られ、結局シュートもショートカウンターからの展開が多かったと思います。


 サッカーの展開には4つのパターンがあるとはいえ、その比重は試合展開やチームの傾向によってまちまちだと思います。
 ジェフの場合は「ボールを持ちたい」と監督が話しており、ポゼッション率も高い試合が多いだけに「攻撃」時の重要性は増すことになるはずです。
 ただ、遅攻の質がエスナイデル監督就任以降、なかなか向上されていかないというのが、非常に大きな悩みということになりますね。