東京オリンピック開幕直前ということで、サッカー男子五輪代表チームに関しても触れていきたいと思います。
批判も少なくない印象だった森保監督ですが、個人的にはフル代表、五輪代表共に悪くない印象を受けていました。
近年の日本代表はW杯も五輪もアジア予選で苦戦することは少なく、本番直前にさえ良い準備ができればいいという気持ちもあってそこまで焦ることはないだろうと思っていたところもあります。
しかし、それだけでなくチームがうまくいっているかどうかの判断は、攻守においてやりたいサッカーが明確にあって、それを実行できているかどうかだと思います。
その点において、どちらも悪くない印象を受けていました。
森保監督のサッカーは、守備ではバランス重視の献身的な対応。
攻撃では中盤後方付近から、鋭いグラウンダーのミドルパスを前線に当てることが狙い。
そこから2列目の選手が反転して前を向いたり、前線で落として裏を狙ったりという展開が軸だと言えるでしょう。
森保監督も例にもれず、就任当初は特徴がしっかりと出ていて、鋭い縦パスからの攻撃が作れていた印象です。
そこから徐々に迷いを感じた時期もありましたが、そこは選手の入れ替えが進んで、青山などが抜けたことも大きかったのかもしれません。
オシム監督も日本代表時代は水本などが入って3バックで戦っていたころが一番良かった印象があり、そこから俊輔などが入ってきて特徴が薄れていってしまいましたね。
五輪代表に関してはうまい選手が非常に多い一方で、スター選手ばかりで強さ・逞しさといった点においては不安があったと思います。
ただ、これも五輪代表世代における毎回の悩みで、ポテンシャルが高い選手は多いのですが、試合で発揮できる強さだとか、チームをまとめる能力だとか、ピッチや試合全体を見る大局観などにおいては大きな課題があったのだろうと思います。
ただ、そこに吉田、遠藤、酒井といった、強いだけでなく欧州でも経験豊富な選手たちが入ってきたことによって、見事にまとまった印象です。
ホンジュラス戦でも、特に前半はバシバシと前線中央に楔のパスを出して、そこからチャンスを作っていきました。
ただ、後半になるとホンジュラスが巻き返して1点を奪われており、そこが課題でもあるのでしょう。
選手たちはゲーム運びに問題があったと反省しているようですが、五輪本番でも前後半で相手の出来が大きく変わる可能性は想定できますし、前半のうちにとどめを刺せなかったことこそが、問題だったのではないかと個人的には思います。
スペイン戦もさすがにホンジュラス戦ほど楔のパスは通せませんでしたが、要所要所でバイタル脇のエリアにSHが入って、そこでボールを受けていました。
そこからリズムを作っていましたし、やりたい展開はある程度作れていたと思います。
もちろんそれを常時狙えない流れとはなってしまいましたが、強豪相手にはさすがに我慢する時間も必要で、スペイン相手にあそこまでやれた収穫の方が大きいのではないでしょうか。
残念だったのは、78分に失点してしまった直前。
それまで右SHで守備に奮闘していた前田を、あの時だけ前に上げて2トップにした分、中盤が薄くなってそこからやられてしまいました。
1トップの上田が怪我空けで動きが悪く、孤立しがちだったこともあってフォローしたかったのかもしれませんが、こういった細かいミスをなくしていかないといけないように思います。
ホンジュラス戦でもスペイン戦でも感じた課題は、最終的に誰が点を取るのかというところかなと思います。
縦パスも入れられるし、2列目の選手たちもチャンスを作れる仕掛けを持っている。
しかし、点を取るという意味では、人選的にも不安な部分があるように思います。
2試合連続でゴールを決めている堂安に期待するのが妥当かなとも思うのですが、堂安だけではマークが厳しくなるかもしれないし、本来はそこまでのフィニッシャーではないと思います。
やはり本来は久保に輝いてほしいところではないかと思うのですが、久保も得点力という部分では大きな課題を感じるところがある。
「もっていない選手」のまま低迷するのか、「試合を決められる選手」になるのか、今は大きな分岐点にいるのかもしれませんし、それによって日本代表の今後も左右するのかもしれませんね。
そこは森保監督も同じで、「勝てるチームを作れる監督」なのか、「いいチームを作る監督」止まりで終わるのか。
チームの土台は作れたとして、メンタル・コンディションのコントロール、相手チームへの対策、最終的な選手の見極め、試合中の采配など、勝負師としての強さを打ち出せるか。
スペイン相手にも勝ちきれなかったわけですし、本番のより結果が求められる段階で確実に勝利に導けるかどうかが注目ですね。
吉田のコメントや南アフリカのコロナ陽性者問題など、正直チームとしては結果的に雑音が大きすぎる状況になっているのではないかなと思います。
集中しづらい不安もありますが、結果を残すことによって、自分たちで状況を打破してくれれば。
それによって明るいニュースを届けることが、プロ選手として何よりの成果なのではないでしょうか。