モータースポーツではタイヤの使い方が非常に重要なのですが、一般的にソフトタイヤと呼ばれる柔らかいタイヤは速いタイムが出しやすい分、すぐに摩耗してペースが落ちてしまいます。
逆に硬いハードタイヤの方が1周のタイムは出しにくいのですが、ペースは長く持つ傾向にあります。
ということは、先にソフトを使ったドライバーは序盤からタイムを出して、セーフティリードを広げなければいけない。
先に確実なリードまで築き上げられなければ、いくら走りやすいタイヤで気持ち良く走行していたとしても、総合的な勝負には負けている可能性がある。
長崎戦でのジェフを見て、そんなことを思っていました。
この日のジェフは気温の高い中、立ち上がりから激しいプレスをかけていきました。
そこからボールを奪い、ロングボールも織り交ぜて、どんどんと縦に仕掛けていく。
一見すると、ジェフペースのようにも見えます。
ただ、後先を考えず捨て身の気持ちで前へ圧力をかければ、一時的に自分たちの流れに出来ることは、そこまで誇れることではないでしょう。
特にJ2は戦力差が小さいと言われているわけですから、試合序盤に全出力を放出すれば、押し込めるのも当然のこと。
それをやるのであれば、先に点を奪うことはマストであり、もっと立ち上がりから得点にこだわる必要があったと思います。
後半に入ってからは予想通りジェフの足が止まって、ハイプレスも効かなくなってしまった。
そして、遅攻の展開になるといつも通り、ボールロストも増えて攻撃の手立てでもなくなってしまった。
前半終盤に1点を失い追わなければいけない展開のジェフでしたが、後半はほぼノーチャンスだったと思います。
小林監督は7-1で勝利した愛媛戦の後に、大人になる必要はないという趣旨の話をしていて驚いたのですが、それが続く限りは安定した成績は期待できないのではないかなと思います。
成績が安定しなければ昇格も当然難しい。
今季の成績を見ても勝ったり負けたりが続いていますが、このままいけば当然どこかでこれで良いのかという話になってくるのではないかと思います。
■ジェフが序盤からハイプレスをかけるも徐々に落ち着き失点
前節愛媛戦で大勝をあげたジェフは、スタメン変わらず。珍しく控えメンバーも変更なしとなりました。
長崎も前節鹿児島戦からスタメン変わらず。
1-0で勝利した浦和戦で、退場になったモヨが出場停止に。
ベンチには元ジェフ新井一耀やフアンマなどが入っています。
1分、ジェフの攻撃。
左サイドからのCK。
佐々木が蹴ると田口が頭であわせますが、GK原田の正面。
6分、ジェフのチャンス。
高い位置でボールを奪ったところから岡庭がクロスを上げると、混戦状態になり横山、ドゥドゥと連続でシュート。
しかし、相手DFがブロック。
序盤からジェフは、積極的にプレスをかけて押し込んでいきます。
高い位置からボールを奪い、素早く縦に仕掛けていく。
しかし、長崎も冷静に、その裏を取ろうという意識を感じました。
13分、長崎の決定機。
笠柳が高橋に、仕掛けるふりをして中央にパス。
マルコスが小林を抜いてシュートに行きますが、ゴールの右隅を逸れます。
20分過ぎから徐々にジェフの圧力が弱まっていき、長崎が前を向くシーンも増えていきます。
ジェフもセットプレーと、ロングボールで裏を狙う展開。
ジェフはボールを持つものの、遅攻ではミスが目立ちます。
28分にも長崎の攻撃。
加藤が高い位置でボールを奪い、笠柳がキープしてスルーパス。
米田がエジガルにラストパスを送りますが、合わせきれず。
46分、ジェフの決定機。
佐々木から右前方へのロングフィードを、岡庭が受けてクロス。
ニアに走り込んできた小森が受けてシュートを放ちますが、バー直撃。
その直後、長崎が先制。
秋野からのロングパスをエジガルが競って、米田が拾い加藤へ。
エジカルが受け直してシュートを放ち、0-1で折り返します。
■ジェフがボールを持つもチャンスを作れず0-1で敗戦
ジェフは久保庭が負傷交代し、メンデスが入ってそのまま右CBに。後半途中までは、長崎が良い形で攻め込んでいきます。
50分には右サイドでエジガルが日高を交わしたところから、マテウスが繋いで、米田がロングシュートを放ちますが、大きく外れます。
54分にはジェフの攻撃。
岡庭が切り返して左足でクロスを上げると、田口が頭で狙いますが大きく逸れます。
58分、長崎はエジガル、笠柳を下げて、フアンマ、松澤を投入。
63分、ジェフはドゥドゥ、横山を下げて、椿、風間を投入。
67分、ジェフの攻撃。
フアンマからメンデスが奪うと田口が縦パスを送り、風間がロングシュートで狙いますが、枠の外。
69分、ジェフは岡庭を下げて米倉を投入。
74分、長崎は加藤、マルコスを下げて、加藤、澤田を投入。
77分、ジェフは小林を下げて品田を投入。
後半途中から守備の出来ないフアンマが投入され、そこからジェフが押し込みますが、有効な攻撃は作れない展開に。
84分、長崎は櫛引を下げて新井一耀を投入。
その直後には米田のロングパスからマテウスが抜け出しますが、オフサイドの判定。
92分には相手のミスからジェフの攻撃。
GK原田がボールを保持している状況で、小森がチェイシング。
原田がキックをしたと頃小森に当たってシュート性のボールになりますが決まらず。
94分にもジェフの攻撃。
椿のアーリークロスから小森が落として、田口がボレーで狙うも、田中がブロック。
ジェフはパワープレー気味に仕掛けていきましたが、0-1で長崎が逃げ切りました。
■僅差での敗戦も成熟度に課題を感じる試合に
この日のジェフは、しっかりと長崎を研究してきたのではないかと思います。長崎は後方からパスを繋いで、相手の隙をうかがい、縦へ楔のパスを狙っていくスタイル。
それに対して序盤のジェフはハイプレスを仕掛けて、DFからのビルドアップを阻害していった。
さらに、ポストプレーを狙うエジガルへのマークが激しく、そこで相手を潰してリズムを掴んでいった印象です。
序盤のジェフは、エジガルのところを潰せた点が大きかったと思います。
さらに、左右SHのマルコスと笠柳は、縦への仕掛けが強力な選手。
特に右SHマルコスは、縦へも中へも持ち込めて、そこからシュートも狙える鋭さを持っている選手。
前を向かせると怖いところがあるのですが、繫ぎの面では課題もあるので、ジェフは前を向かせない守備でうまく対応していったと思います。
攻撃時も小森がニアを走っておいて、裏の横山も走らせてそこを狙う動きなど、いつもとは違う動きをしていました。
CKのキッカーを普段とは逆足の選手に任せていたところも含めて、上位長崎ということもあって、かなり相手を分析して試合に臨んだということではないでしょうか。
前節愛媛戦での大勝もあったのかもしれませんが、序盤からのハイプレスも含めてかなり気合の入った試合だったのではないかと思います。
ただ、ハイプレスからのカウンターは良かったものの、それ以外では攻撃を作れませんでした。
予想はしていましたが、前節愛媛戦のように簡単にはDFライン裏を取れる試合展開ではなかった。
そうなるとハイプレスとサイド攻撃のみになってしまうジェフですが、ハイプレスも前半途中までしか持たず、サイド攻撃だけでは跳ね返されて終わってしまいます。
長崎はもともとそこまでプレスに来るチームではないため、試合を通してジェフがボールを持つ時間帯が増えていきました。
しかし、遅攻からはボールロストの方が目立ち、パスワークから攻略するような展開はほぼ作れませんでした。
これはあまりプレスに来ない横浜FC戦や甲府戦でも近い展開を感じましたし、やはりボールを持たされた展開というのが大きなネックではないかと思います。
対する長崎は、序盤にジェフのハイプレスを浴びたわけですが、最初から冷静だったと思います。
エジガルへの縦パスを潰されることが多かったですが、それでも1つかわせばチャンスという狙いは変えずに戦ってきた印象でした。
20分以降にジェフのプレスが収まると、ジェフ全体のラインも下がってエジガルやマテウスがボールを持てる回数が増えていき、そこから流れが変わっていったと思います。
長崎は4バックで横にビルドアップをする傾向があるチームですが、ジェフはSHも含めて横に広くプレスに行くので、ジェフからすれば相性が良かったのではないかとも思います。
縦の揺さぶりの方が、ジェフは弱いですね。
ただ、長崎も逆サイドのドゥドゥが中央前方に出てプレスにいくところをしっかりと見て、そこへ展開し数的優位を作るなど、ジェフのプレスを交わした攻撃も何度か作っていました。
長崎はルヴァンカップ浦和戦も含めると、これで5試合連続無失点を続けているということで、守備面も非常に硬かったと思います。
CB2人はほぼ交わすことが出来なかったですし、ボランチやSBも含めてチャレンジ&カバーの関係性がぶれずに形成されてました。
フアンマが入ってからは全体がずるずると下がってさすがに厳しそうではありましたが、時間の使い方も含めて大人なサッカーをしてきた印象です。
しかし、長崎の堅守があったにしても、後半のジェフは工夫のない攻撃が多く、物足りない試合内容となってしまった印象です。
気温が高く序盤から飛ばして足が止まっていたとはいっても、もう少し攻撃面で打開策を見せて欲しかったと思います。
佐々木のロングフィードや岡庭のクロスも良いのですが、そこばかりに頼ってしまってはテンポも変わらないし、緻密な攻撃は作れないと思います。
0-1という僅差で敗れた試合ではありますが、総合的なチームの成熟度で課題を感じた試合だったのではないかと思います。
ジェフとしては、果たしてここからどう成長していけるのかという領域に、達しているのかなという気もしてきました。