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江尻監督「クラブも選手もエゴを出さずチームのために」

 栃木戦は最終節ということもあって、江尻監督の試合後のコメントも今季を振り返る内容となっていますね。
 主に今年の反省点を語っている印象です。
 実力社会ではありますから情けを言っても仕方がないとは思いますが、江尻監督にとって最後のコメントがこういった内容になるのは残念な気持ちもありますね。

江尻篤彦監督「1年間を振り返ると、1つの目標に、同じ方向にベクトルを向けられなかった。なんとか、チームが1つの目標に向かうしっかりしたベクトルの下、1年間戦ってもらいたい」(Jリーグ

 結局、江尻監督に関しては、ここが一番強く感じた課題ではないでしょうか。
 チームとして攻撃にせよ、守備にせよ、何がしたかったのか。
 そこがはっきりしないと、チームが一丸となって戦うのは難しいでしょうし、チームとしての成熟も難しくなってしまうと思います。

 コメントからすると、当人もそれをわかっていた。
 わかっていたけれども、それと問題点を改善できる、構築できることとはまた別ということなのかもしれません。
 そこが単なる分析担当やコーチと、実際にチームを指揮して作り上げなければいけない監督との大きな違いということでしょうか。 

「この場では言えないような大変な部分はあった。そこをなんとか修正しようとしたが、それがいろんな方向にいって、定まらなかったという反省はある。ある程度チームができ上がっていれば、違った形になったかもしれないが、それは言い訳になる」

 チームが厳しい状況でバトンを渡されたため、難しい状況になってしまったという部分は間違いなくあるのでしょう。
 悪い癖がついていた可能性もあるかもしれませんし、内部でもいろいろな意見があったかもしれないし、雰囲気や流れなども良くなかったのかもしれません。
 だからこそ、スタイルの継続ではなくすべてをリセットして1からチームを作り直してほしかったところではあるのですが、フロントの要求もあってか、そう簡単ではなかったということなのでしょうか。


 ただ、チームが同じベクトルを向けなかった、方向性を定めることが出来なかったことに関しては、また少し別問題なのではないかとも思います。
 より根底の部分において、江尻監督から何がしたかったのか、どんなサッカーをしたかったのか。
 それが見えてこなかったからこそ、チームの方向性も明確化できなかったのではないでしょうか。

 だから、もちろん厳しい状況で、チームを江尻監督に託したのはフロントの責任。
 しかも、結果的に功労者である江尻監督を、2度も火消しに使おうとした問題も大きいとは思います。
 しかし、チームを同じベクトルに向けなかった以前に、そもそも江尻監督がどんなサッカーをしたいのかを示せなかったことに関しては、江尻監督本人に問題があると思います。


 また、具体的な話では、ジェフ公式サイトの方に「攻守のバランスが大事だが、僕が選んだ選手、システムはそのバランスが崩れていたかもしれない」と話しています。
 状況からして、主に守備面におけるバランスでしょうね。
 クレーベが守備をしない上に、2列目にも守備が得意ではなく、サイズの小さい選手が多かった。

 そこは選手構成の問題もあったとは思いますが、それにしても攻撃的な選手が多かった印象もあります。
 アランやボランチ鳥海なども守備の問題を感じて、慌てて起用したのかなとも。
 しかし、それも当初の目標というか、やりたいサッカーがはっきりしていなかったからこそなのかもしれません。


 また、「持論として戦術にハメるより、攻撃はアイデアやイマジネーションを選手たちが持たなければいけない」とも話しています。
 これも江尻監督に限らず、よく聞く話ではあると思います。
 ただ、最後は選手のアイデアであることは理解できますが、そこまではチームとして作っていかなければいけない部分でしょう。

 ようするにアタッキングサードで仕掛ける、ラストパスを送る、シュートを放つ部分においては、選手個々の能力が試される部分も大きい。
 しかし、アタッキングサードで仕掛けられる状況、前を向く状況を作り上げるためには、チームとして共通理解を持って動いていかなけば難しい。
 そこの整備が作り切れていなかったのではないでしょうか。


 最後に。

「クラブも選手もエゴを出さずに、チームのためにという部分が大事。個性ある選手がもっとまとまってほしかった。

 選手に関してのエゴは、監督が抑えなければいけないところもあると思います。

 ただ、オシム監督も「走らない選手は本当に走らないのだよ」と言っていたくらいですから、どうしようもない選手もいるのでしょう。
 最後の言葉からは、選手たちがまとまりきらなかったというニュアンスも伺えます。
 確かに今の選手たちは個性はあるものの、チームの中で動くという点においては課題がある選手が多い気がします。


 また、「クラブも」と言っているところが、どこか意味深でもありますね。
 もしクラブのエゴというものがあったのであれば、それはいったい何なのか。
 無理にエスナイデル監督を続投させたことなのか、選手構成や補強の面なのか、毎年反省もせずに次に進もうとしていることなのか…。

 外から見ていれば多数の可能性を考えられそうですが、内部からしか見えないことを示唆しているのかもしれない。
 あるいは、もっと上のレベルで親会社も含む意思決定の問題において、エゴがあるのかもしれない。
 結果的に勇人のコメントも含めてレジェンド二人からそれとなくクラブに問題があることを示されたようにも思えますし、それを受けてフロントが本当に反省して、次への一歩を歩む姿勢を見せられるかどうかが、現在問われている部分なのではないでしょうか。

尹晶煥監督と高橋GMによる会見

 まだ栃木戦の話は終わっていないのですが、その前に尹晶煥監督と高橋GMの会見が行われジェフ公式サイトにレポートも掲載されたので、そちらを取り上げます。
 尹監督就任の発表は栃木戦当日で会見も即座に行われたことになりますが、考えてみれば尹監督は今年6月からフリーだったわけで時間は十分にあったことになりますね。
 タイミングからして、サポのガス抜き的な意味も兼ねていた部分もあるのかもしれません。

 会見の内容に関しては、よく言えば落ち着いた、悪く言えば内容の薄いものだったと思います。
 クラブ史上最低成績を更新したにもかかわらず、クラブから危機感や野心を感じることはなかったし、チームを変えようという姿勢も見えなかった。
 勇人がクラブに変化を求め、「ぶつかっていきたい」とまで話していたのとは対照的にも思えます。


 レポートの内容からすると、記者からも突っ込んだ質問はなかったということでしょうか。
 少なくとも攻撃的なサッカーを志向していたエスナイデル監督から、守備的な印象が強い尹監督へシフトした理由や意図くらいは聞いてほしかったところではないかと思います。
 千葉日報に分けて厳しい論調の記事を書いているのと比べると他のサッカーメディアは緩い印象で、オシム監督がよく記者に怒っていた理由もわかる気がします。

 高橋GMがこの場にいるということは、来季もGMは続投ということでしょうか。
 人件費は増加している一方で、今季はたった4試合で監督を解任した上、過去最低成績を2年連続で更新していますし、エスナイデル監督から尹監督ではあまりにも方向性が違う印象がありますから、今季限りなのかなとも思っていました。
 前田社長も例年通り4年周期なら今年で退任となる可能性もあるわけで、チームの方向性も監督のタイプもがらりと変えて、フロントも一新するということなのかなと。


 なにせ、昨日も話したように、現フロントはエスナイデル監督に「主導権を握るスタイル」、「主役になるサッカー」を求め、それが攻守においてアグレッシブに自ら仕掛けていくことだと説明していたわけで。
 さらに江尻監督にも、無理にそれを継続させようとしていたほど、無駄に固執していた印象すらあった。
 しかし、ユン監督自身は本人も話しているように守備的なイメージが強い監督で、「効率的にサッカーをする」とも話しているわけですから、やはりここまでの方向性とは大きく異なるはずです。

 にもかかわらず、高橋GMからは方向性が変わることに関して説明されていない。
 しかも、「方向性を明確にすることが必要である」とこのタイミングで説明するというのは、どうなっているのでしょう。
 「方向性」が大事だというのであれば、どのような方向性をもったチーム作りをするのか、どうやって方向性を作り出していくのか、その場で説明できなければ墓穴を掘っているようなものだと思うのですが。


 個人的には高橋GMの解任を求めるつもりはないですし、謝罪してほしいわけでも当然ありません。
 そもそもジェフというクラブは、それぞれの役職におけるタスク・責任が曖昧なところがありますし、親会社などが意思決定に関わっている可能性もあります。
 それは組織として成立していないことを意味しており、それこそが大きな問題ではあるのですが、それだけに社長やGMに責任を追及しにくいところもあると思います。

 しかし、GMという役職は、少なくとも表向きはチーム運営の責任者となるはず。
 であるのなら、過去最低成績を2年も更新し、自身はチームに残る可能性があり、監督の傾向が大きく変わることに対して、最低限の説明をする必要があるのではないか。
 その説明から逃げていては、クラブもGM自身にとっても大きな損失になってしまうのではないかと思うのです。


 なぜならば、現在のクラブ成績からいって、来季も上手くいかなければJ3降格の可能性すら出てくる。
 勇人も話していた通り、現状のままではダメで変化が必要であることは周知の事実であるはず。
 だからこそ、監督を変えたということにもなるはずでしょう。

 にもかかわらず、高橋GMの発言からは過去の反省は少なく、具体的にどうチームを変えていくのかという話もほとんど聞かれなかった。
 そうなってくれば、当然ファンやサポーターの多くは不安や不満を抱えることになります。
 高橋GMは今年開幕前も自身の非を認めないような説明をしていたものの2年連続での失敗が続いたわけですが、一度過去を否定して変えていくんだという姿勢を見せなければ期待は持てないと思うし、同じやり方で同じミスを繰り返せばクラブもGMもマイナスイメージに繋がりかねないでしょう。


 実際、高橋GMは今回の会見で選手の入れ替えをしない可能性も示唆しています。
 「尹監督は選手を入れ替えて結果を出してきたわけではない」と話していますが、以前も話したように尹監督は鳥栖では松本監督がベースを作った上でチームを手渡されているし、C大阪でも大熊監督が基礎は作っていた。
 大熊監督は過小評価されることも多いですが、尹監督と同じ守備志向の強い指導者だし、ジェフがJ1昇格を果たせない間に異なるチームで2度も昇格に成功している監督ですから、少なくともジェフが下に見るようなことはできないはずです。

 尹監督が成功を遂げたのはその2チームと言えるでしょうが、ベースが出来ていたのであれば大幅な選手の入れ替えも必要はないはず。
 逆に低迷していたムアントンでは、立て直しに失敗して早期に解任。
 今のジェフにベースがあるとは思えず、むしろ低迷しているクラブなわけですから、その状況で選手の入れ替えもないしチームを変える意志も強く感じないとなれば、不安になるのも当然ではないでしょうか。

 具体的な話をすると、最終節の栃木もヘニキ、榊、大崎などがしっかりとさぼらず守備をするから、堅守が構築できていた。
 しかし、浜下のところは怪しかったし、大黒が入ったらガクッとプレスが弱まったように、守備が出来る選手がいなければ堅守も構築できない。
 今のジェフはエスナイデル監督の下で攻撃的な選手が非常に多いわけですから、本気で守備的なチームを目指すのであれば大幅な選手構成の変化も検討しなければいけないはずです。


 最近はファンやサポーターは必ず文句を言うものだし、フロントが無理に説明をする必要はないという意見もよく目にします。
 しかし、プロスポーツチームというものはイメージやチーム作りの部分を売っているところもあるわけですから、その説明をしないのは「どうせ勝てないなら試合をしない方がいい」と言っているようなもの。
 ファンやサポーターから距離を取るというようなネガティブな発想で運営するクラブに未来はないと思いますし、問題なのはしっかりとしたビジョンを持った上でそれを説明できるかどうかでしょうから、論点が異なる発想だと思います。

 過去の反省を振り返らないにしても、せめてここからチームを作り直すんだ、新しいスタイルで戦うんだという姿勢を見せてほしかった。
 一番怖いのは、監督だけを挿げ替えて、あとはお任せという状況。
 実際、長谷部監督の時も江尻監督の時も似たような印象で失敗しているわけですが、長谷部監督の手腕は水戸でも証明されたことになると思います。

 それだけフロントによる支援やチーム作りの準備というものは重要なはずだし、ましてやチームのスタイルが大きく変わるのであれば、それだけの覚悟や決意が要求されるはずではないでしょうか。 
 それが感じ取れなかったというのが、何よりも残念です。
 来季もいろいろな覚悟をしておかなければいけないのかもしれませんね。