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栃木戦でも最終ラインの間を突かれて失点

 0-1で敗れた栃木戦後ということでネガティブな話が続いてしまいますが、今期最後の試合となるだけにさぼらず振り返っておきたいと思います。
 試合後にも話しましたが、栃木戦では最終ラインの間を突かれて失点してしまいました。

 失点時の状況を図にすると、わかりやすいと思います。

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 右SB久富からクロスを上げられると、ニアに走り込んだ大崎が触ってファーの田代がヘディングでゴールを決めています。

 ゴール前の人数は、ジェフが6人だったのに対し栃木は5人で、ジェフの方が多いくらいでした。
 にもかかわらず、ニアに1人、ファーには2人もフリーな相手選手がいたことになります。
 田代のエリアはオフサイドかなとも思われる微妙な位置ではありましたが、これだけ杜撰な守備をしているとやられても仕方がないなとも思ってしまいます。


 確かにこのプレーの前は、栃木がロングスローを展開してボールを拾われたところからでした。
 そのため、ジェフの守備陣はポジショニングを整えにくいところもあったといえるのかもしれません。
 しかし、その前のプレーでも栃木に右左サイドから攻め込まれて、サイドに増嶋が飛び出し1人で対応せざるを得なくなっていましたし、守り方に問題のある状況が続いていたことになります。

 これは9月末の岡山戦後にアップした図ですが。

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 この時にもDFラインの間にスペースが出来て、そこにボールを通されたところからピンチに陥っています。

 具体的に言えば、サイドを攻め込まれるとSBなどサイドの選手がボールに寄っていきますが、CBはスライドしないので、その間にスペースが出来てしまうことが多い。
 この図を使用した際にも話しましたが、そういったスペースをボランチに入った鳥海はうまく消していたと思います。
 しかし、他のボランチは同じような動きをしていなかったことから考えると、チームとしての判断ではなく鳥海の自己判断で賄っていたのではないでしょうか。


 今季のジェフの失点が多かったのは、プレスがうまくはめられなかったこと、攻撃的な選手が多く守備に不安がある選手が多かったこと。
 また、尹監督も指摘しているように、選手の体力にも問題があり後半に入って足が止まってしまう傾向があったことなども考えられると思うのですが、全体的な守備バランスにも大きな課題を抱えていたと思います。
 それだけに選手が走れるようになれば守備が改善するというだけでなく、組織的な守備の構築も必要なのではないでしょうか。

 この図をよく見返すと、ニアでは大﨑だけでなくクロッサーの近くにいた浜下もフリーになっている。
 さらに久富のクロスは一度大崎の前でバウンドしており、それだけ外と中の間にスペースが出来てしまっていたことにもなります。
 外と中の中間にあたるハーフスペースを狙う攻撃が当たり前となっているこの時代に、これだけそのスペースを空けてしまうというのはさすがに問題ではないかと思います。

 このあたりの守備組織を改善できなかったことも、江尻監督の課題の1つでしょう。
 江尻監督は前回監督時にも堅い守備組織を作っていた印象はなく、選手頼りだったところがある印象です。
 鳥海のようにボランチが間を埋めるのか、DFライン全体でスライドするのか、SHとSBの関係でどちらかを外に出しどちらかが絞るのか、やり方・考え方はいろいろあると思うのですが、そこを決めるのは監督の仕事でしょう。


 尹監督が指揮を執ることで、そういった守備戦術の課題を解決できれば…と言いたいところではありますが、厳密に言えば戦術というのは基本的に付け足すものではなく、一から築き上げるものでしょう。
 選手の癖、動きというものは過去のチームに引きずられることもあるでしょうが、戦術=ルールは監督に拠るものとなるはず。
 特に今回の場合、今年のチーム成績は厳しく内容も乏しかった状況で、新シーズンから新監督の下で戦うことになるわけですから、戦術などは完全にリセットとなるのではないでしょうか。

 そうなるとうまくいくところもあるかもしれませんが、また別の課題が出てくるかもしれませんし、戦術的にはまた別物と考えた方がいいのかもしれません。
 とはいえ、選手個々の課題や特徴は基本的に変わらないはずなだけに、補強や入れ替えなどによって新チームが良いスタートを切れるような状況を作らなければいけないはずです。
 そのためにも、やはり今期のチームを十分に分析し、組織なのか個なのかそれ以外なのか、どこに課題があったのかをはっきりさせた上で、来期の準備をしなければいけないのではないでしょうか。

栃木の守備のポイントと前線からの守備の重要性

 今日はジェフが攻略できなかった栃木の守備に関して、取り上げていきたいと思います。
 来年ジェフも堅守のチームを目指すのであれば、重要はポイントとなってくるのではないでしょうか。

 栃木は引いて守ってスペースを消し、そこから前へと出てくる守備を構築してきました。
 J2でもここ1,2年は、ここまで徹底して引いてくるチームは少なくなった印象があります。
 降格の危機にあった栃木だからこそ、現実的なサッカーをしていたところもあったのでしょうか。


 ただ、栃木は引くだけではなく相手が前に出ようとすれば、しっかりと対策をとってきた。
 それによって、ずるずると全体が押し込まれることはほとんどなかったと思います。
 それだけ組織立った守備を構築できていたし、選手が前線からさぼらず守備をしていたため、ジェフにボールを持たれても押し返すことが出来ていたのだと思います。

 まず栃木の守備のベースは、以下のような布陣。

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 基本的には4-4-2で守って、後方にはプレスに行かず、パスの出し先をすべて消す。

 特に特徴的だったのが白円で示したところで、栃木の2トップはジェフのボランチをかっちりマークすることで、ボランチにボールを入れさせない。
 さらにジェフのCBが前進してきたら、栃木のFWがチェックに行く。
 それをさぼらずにやり続けることによって、ジェフはボールを持っても低い位置でしか動かせず、そこから前へ行けなかった。


 対するジェフは、後方のCB2人が基本となりつつ、SBなども下がってパスを繋ぐのが基本。
 特に左SB下平が低い位置でビルドアップに絡み、右SB米倉は若干前に出ることが多い。
 これが黒い四角で示したエリアで、低い位置で繋いでいる時は栃木のプレスも来ないため楽にパスを繋げましたが、パスの出し先がすべて消されているため縦に出せない状況が続きました。

 そこでジェフはボランチの1枚が下がって変化をつけるというのが、これまでの試合でも見られた動き。
 特にジェフは左サイドに選手を密集させる動きをするので、左SBの位置にボランチが下がり、SBを前に押し上げる動きが目立っていました。

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 しかし、青円で示した通り、ジェフの左SBを押し上げたとしても、そのまま栃木の右SHがついていけばいい状況。
 さらにジェフのボランチに対しても、初めから栃木のFWがマークしていたのだから、そのままFWが見に行けば問題ない。
 これがジェフのボランチに対して相手のボランチが対応するような守備をしていれば、相手ボランチを後方まで引き付けて中盤のスペースを作ることにも繋がりますが、栃木はFWが対応していたのですから揺さぶりにはなりませんでした。

 さらに元々ジェフの左SBのいたエリアは、栃木のプレス外でだったわけですから、そこでジェフのボランチがボールを触っても何ら問題のない状況でした。
 下がって受けてもパスの出し先がないジェフのボランチは、仕方なく横に繋ぐプレーが目立ちました。
 当初は若干右に開いた右CBに展開するパスを、いくつか出していました。


 栃木はそこを待っていったかのように、図のようなプレスをかけてきました。
 横パスでも特に長いボールは、時間的なラグが生まれるわけで、その時間を使って相手に詰めていく。
 相手の縦パスを消す守備ブロックを構築し、後方で横パスを出す状況を作り上げておいて、それが出たら一気に前へとプレスに行くというのが栃木の狙いだったと思います。

 図の通り横パスが出た瞬間に、ジェフの右CB新井に栃木の左SH大崎がマークを捨ててチェックに行き、大崎が空けたジェフの右SB米倉には左SB瀬川が前に出て対応。
 そして、瀬川が前に出て空けたジェフの右SH見木には、左ボランチ古波津が流れて対応していました。
 これによってジェフはボールの行き場をなくし、栃木はボールを奪ってカウンターを狙う。


 栃木はボランチが横に出て中盤中央が1枚になってしまいますが、ジェフは中央での楔のパスが少ないので、ボランチ1枚でも怖くないという判断だったのかもしれません。
 しかし、この場面でも必ずジェフのボランチには、しっかりとFW1枚が下がってコースを消していました。
 結局、この日のジェフは、ボランチが中盤でボールをさばける場面がほとんどなかったと思います。

 そのためジェフはパスの出し所が中盤にはならず、最終ラインからの攻撃が基本となり、そこから前に出ていけなかった。
 これによってジェフがボールを持ち栃木は引いて守る展開ではありましたが、栃木がズルズルと押し込まれることは少ない状況になっていたのだと思います。
 そこがこの試合における、大きなポイントといえるのではないでしょうか。


 だから、ジェフはポジションを入れ替えて、ビルドアップ時にキックの精度が高い下平をCBに移す変化も見せていた。
 パスの出し所を一向に上げられないため、仕方なく最後尾のCBから展開しようとしたのでしょう。
 その下平から一本のロングボールで攻撃を作れたこともありましたが、それも単発でしたし長いボールからの展開なだけに、確実性はそこまで高くない状況だったと思います。

 前半は引く時間の長かった栃木ですが、降格圏から抜け出すためには勝点3が必要だったため、後半途中からFWやSHが前へプレスをかけてきました。
 特にジェフのCBにFW1枚がチェイスに行って、ジェフが左SBへ横パスを出したときに、右SHが寄せに行くのがプレスの狙いだったと思います。
 しかし、この時ももう一方のFWがボランチへのコースを切っていて、基本的な守り方は変わらなかった印象です。


 高い位置までプレスに行くときも、リスク管理はしっかりとしていた。
 これが堅守を築き上げたポイントの1つであり、近年のジェフには大きく欠けている要素だとも思います。
 ジェフの場合はエスナイデル監督時代も江尻監督になってからも、ともかくにボールサイドに人数をかけて走力でプレスを実行するので、1つ交わされると一気に穴が出てしまうところがある印象でした。

 また、栃木はFWやSHの守備力が高いため、ジェフが後方で左右に振っても選手の動きで揺さぶろうとしても、ポジション修正をしっかりと行い対応できていたところも大きかったと思います。
 実際、試合途中に大黒が入ってからは、そこからズルズルと下がっていってしまったところがあった。
 大黒もボランチのコースを消すことはできていましたが、そこから前に出ていく動きは出来ていなかったため、ジェフのCBなどが大黒の前で持ち上がるとチェックに行けず押し込まれる傾向が見受けられました。


 もちろん大黒は攻撃では起点になっていましたし、大黒らしいパスの引き出しも見せていました。
 大黒が投入された時はまだ0-0で栃木は勝たなければいけない試合だったため、守備のリスクを背負ってでも攻撃的なカードを切ろうということだったのではないでしょうか。
 そこは仕方のないところもあったのでしょうし、大黒がうまくボールを受けることによって時間を作り、守備陣を休ませていた面もあったとは思います。

 ただ、堅守を構築する上では課題も見られた。
 ジェフもクレーベの守備能力は大黒以上に深刻だと思いますし、来季守備的なサッカーを実施するのであれば、迷うところが出てくるのではないかと思います。
 また、ジェフはクレーベ以外にも守備やスタミナに不安がありサイズの小さい選手も多いだけに、そこをどう対処するのか。
 その問題を解決しなければいくら守備重視の戦術を敷いたとしても、ただズルズルと下がってしまう可能性も出てくるのではないでしょうか。