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2019シーズンを振り返る フロント・後編

 昨日の前編ではチーム全体の運営に関して取り上げたので、後編では選手構成などに関して話していきたいと思います。
 もう2年ほど前から話していますが、現在のジェフの選手構成はバランスが悪い印象です。
 それが江尻監督が就任してからも、チームが苦戦した要因の1つではないでしょうか。

■主役になりたい選手が多く脇役が少ない選手構成

 まず、今季途中からの主な出場選手をまとめてみました。
 3-6-1の頃も含めるとまとめにくくなるため、4-4-2になった7月からのスタメン選手を表に記載しています。
 参考にしたのはFootball LABのデータで、4バックで5試合以上スタメン出場した選手を対象としました。

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 なお、矢田は3バックではボランチの出場が多かったですが、4バックになってからは出場機会が減ってボランチとして4試合しかスタメン出場していません。
 また、右SHでもスタメンは4試合のみとなっています。


 右SHはスタメンが頻繁に変わり、特出した選手がいませんでした。
 そのため、先日アップした右SHのスタメン推移も記載しておきます。

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 改めて思うのは、攻撃特化な選手が多く守備が出来る選手が少ないということ。

 クレーベは言わずもがな、為田や堀米も守備が得意ではない選手。
 SHでは茶島や矢田の方が守備で計算できるのでしょうが、フィジカル面では課題がありボールを奪い切る点では不安が残りました。
 船山、アランなども頑張ってはいましたが、2人とも本来はFWですからそこまで多くは望めなかったと思います。


 結局、工藤をセカンドトップに入れて、がむしゃらに走らせることで、守備の改善を図ることになりました。
 しかし、工藤は昔からスタミナがあるタイプではないし、今年で35歳のベテラン。
 90分間ハードワークを期待するには無理があったし、工藤が走れなくなった途端に守備の綻びが出来る状況でした。

 さらに、ボランチも工藤、小島、矢田などはサイズが小さく、攻撃を跳ね返すといった面においては課題が大きかった。
 熊谷も対人には強いものの、カバーリングやバランス調整は得意ではない選手。
 守備的なボランチとしては勇人くらいしか確実に計算できない状況でしたが、その勇人も大ベテランで今年は動きも重く引退となりました。


 それに加えて米倉、下平も本来は攻撃に特徴のあるSB。
 ゲリア、乾といったSBの第2候補も守備には課題があったし、サイドの守備にも問題のある状況だったと思います。
 全体的に攻撃的な選手たちが多すぎて、守備を得意とする選手が極めて少ない状況だったと思います。

 わかりやすい参考例として挙げると、強かった頃のジェフは巻も守備が出来て走れたし、羽生も攻守にハードワークのできる選手だった。
 さらに全盛期のバランサー勇人と、代表でもCBでプレーした阿部がダブルボランチを務めていた。
 加えてサイドにも坂本や山岸といった守備のできる選手を必ず配置した上、3バックだったのでCBの人数も多かったことになります。


 守備に課題がある選手と言えば、ハース、ポぺスク(クルプニ)、水野(村井)くらいでしたが、外国人選手は怪我も多く同時出場は少なかった。
 ようするに2枠を除いて、全員が守備で貢献できる状況だったわけで、現在の2CB以外は守備に不安がある状況とはまったく異なります。
 もちろんチームの方向性やカテゴリ、時代なども違うとはいえ、それにしても大きな差がある状況と言えるのではないでしょうか。

 エスナイデル監督が攻撃重視だったとはいえ、オシム監督時代も攻撃サッカーを展開していたことを考えれば、それだけでは言い訳がつかないでしょう。
 例えエスナイデル監督が攻撃的な選手を求めていたとしても、2年目で大きく失敗していることを考えれば、強化部が主導権を持って選手構成を変えていかなければいけなかったと思います。 
 昨日も話した通り、かなりの人件費を使っているわけですから、駒を揃えることはたやすかったと思いますし、強化部のセンスが求められるのは、総合的なバランス感覚の部分ではないかと思います。


 また、アタッカータイプに偏っていたことで、攻撃も単調になっていたところがあったと思います。
 連動して動くことが出来る選手、攻撃に変化を作ることのできる選手、ハードワークして周りを活かす選手などが少なかった。
 それによって攻撃のリズムを変えることが出来ず、縦へ縦へという動きばかりになっていた印象です。

 自分で仕掛けて主役になりたい選手が多くて、脇役になれる選手が少なかったとも言えるでしょう。
 しかし、水を運ぶ選手が居なければ、主役になりたい選手も光ることが出来ない。
 今のジェフはそういった主役になりたい選手の方が人気がある印象もありますし、そういったクラブの文化にも問題があるのかもしれません。

 昔のジェフはうまくなくても泥臭く頑張って、エリート集団を倒す姿勢が好まれていただけに、今とは真逆とも言える方向性になっているとも言えるでしょうね。
 しかし、いずれにせよ攻守にハードワークをしてチームのために戦える選手をもっと確保しなければ、ピッチ上のバランスはなかなか改善できないのではないかと思います。

■深刻化する主力選手の高齢化

 ジェフはポジションバランスだけでなく、年齢構成といった点でも問題を抱えている印象です。
 確かに相澤や本田など10代の選手もいるわけですが、彼らはまだ公式戦で出場機会がないわけで、将来の戦力として計算できる段階ではない。
 大事なのは、試合に出場している選手や主力選手の年齢ということになるはずです。

 今年のジェフは一時期、スタメン平均年齢が30代を超えていました。
 FOOTBALL ZONEの記事でも、以下のように書かれています。

第32節のスタメンで平均年齢が30歳を超えていたのは、横浜FC甲府ジェフユナイテッド千葉の3チーム。

 また、こちらのつぶやきではJ2で24歳以下の出場時間がまとめられていますが、ジェフは甲府に続いて2番目に短い状況だったようです。


 それでも横浜FCは2位で自動昇格を果たし、甲府も5位とPO圏内で終えているのですから、まだ救いのある状況と言えると思います。
 ジェフの場合は順位も下げた上に、若手選手も出場できていないわけですから、深刻な高齢化と言っていいでしょう。
 残留を果たすことが目標のチームであれば今年の順位でもいいのでしょうが、過去の成績やクラブ規模なども考えると喜べる状況ではないはずです。

 しかも、状況を改善しようと努力した結果こうなっているのであればまだしも、ジェフは今年も37歳の寿人、34歳の田坂、31歳の安田、米倉などベテラン選手を獲得。
 26歳の堀米、25歳の鈴木など中堅年代も多少は補強しているとはいえ、全体的に見れば高齢化に対して対策を取っているようには思えません。
 溝渕、高橋、杉山、古川など若手をレンタルで放出していますし、自チームでの若手育成を放棄しているように見えるのも気になるところです。


 今年が勝負の年だったから即戦力のベテランを補強したという発想も考えられるのかもしれませんが、それで順位を下げてしまったというのであれば見積もりが甘すぎたといわざるを得ないでしょう。
 しかし、昨年の段階でクラブ史上最低成績を記録しているわけですから、その状況で2019年が勝負の年であるという考えに至ったのであれば、その時点でどこかが間違っていることになると思います。
 行き当たりばったりな印象で、一言で言えば計画性がなさすぎるのではないでしょうか。

 そもそも現在のジェフは、2015年末の大幅入れ替え以降に加入した選手がほとんど。
 ようするに、ジェフに長く在籍して年齢を重ねたのではなく、近年ジェフに加入した選手たちの年齢が高かったことになります。
 その状況でむしろ成績は下降し、他の若手も出てこない状況となってしまっているわけですから、入れ替え以降の強化部の手腕に問題があるということになるのではないでしょうか。


 まとめると、現在のフロントは例年以上の資金を使うも、エスナイデル監督・江尻監督と2人も監督招聘に失敗し、2年連続で過去最低の順位を更新し、選手構成のバランスも悪い状況で、選手の高齢化も進めてしまった…。
 その状況で監督は解任して、クラブは誰も責任を取らないというのは不思議にすら感じてしまいます。
 責任を取らないにしても、何らかの説明が必要だったのではないかと思うのですが、今のところはそれすらも果たしていないことになります。

 来年は尹監督が指揮を執るとはいえ、個人的にはフロントを中心にクラブ全体が変わっていかなければ状況は改善しないと思いますし、来季も苦戦する可能性は十分にあると思います。
 特に選手構成や年齢構成は基本的にフロントが決めていくものだと思いますし、監督だけではすべてを変えることはできないでしょう。
 今年J3降格の危機も感じたシーズンを経て、クラブの意識を変えられるかどうかに注目ですね。

2019シーズンを振り返る フロント・前編

 例年なら監督やチームに対して振り返りをスタートすることが多いですが、今年はフロントから振り返りたいと思います。
 というのも、単年や短期間での失敗ならチームや監督個人の問題と言える場合もあるでしょうが、ジェフは過去2年間クラブ最低成績を更新。
 そうなってくると、チームの人事も含めたフロントの責任が大きいといわざるを得ないでしょう。

 なお、尹監督の就任会見時にも、フロントに関しての話をしています
 そちらと重複する部分もあるかもしれませんが、ご了承ください。

■過去5年で低迷しここ2年でJ2下位へ転落

 まず、単純な表になりますが、J2に降格してからのジェフの順位をまとめてみました。

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 毎年紆余曲折があるとはいえ、2010年から2014年まではトップ6に入っていました。
 それが2015年には9位にまでガクッと落ち、そこからは低迷。

 2017年もシーズン終盤こそ7連勝で一気に順位を上げましたが、Wikipediaに掲載されているその年の順位推移を見てもわかるように、終盤までは二桁順位で定着。
 過去の成績と比べて考えても、1年を通してみれば決して順調なシーズンとは言えませんでした。
 にもかかわらず、クラブ全体として最終成績だけを見て油断していた印象がありました。


 最終順位だけを見ると、過去5年で順位が落ち、特にこの2年間は大きく低迷して残留争い目前のところまで来てしまいました。
 しかし、長引くJ2生活とベテランを中心にした補強による若手育成の失敗もあって、徐々にチーム力が落ちていった部分もあるのではないでしょうか。
 それを考えると、ここ5年でチームが低迷したというだけではなく、それまでの流れも加味しなければいけない部分もあるのではないかと思います。

 それでもその流れを断ち切ることが出来ずに、むしろさらにチームを低迷させ、この2年でJ2下位にまで落としてしまった。
 しかも、経営面をみると「チーム人件費」は公開されてから、一昨年、昨年と最高額を更新しており、「営業費用」全体でも近年に比べて大きな金額となっています。
 ようするに、多額の資金を使用したにもかかわらず、ジェフは光明を見いだせずさらに低迷してしまったことになります。


 具体的な方針の面で言えば、一発クリアばかりを狙って、チームや選手を育てるという発想を感じなかった。
 地道にコツコツとベースを作っていこうという意思も見られなかった。
 それによってチーム状況はさらに悪化し、途中の大幅入れ替えによるダメージも残って、J2下位にまで落ちてしまったのであはないでしょうか。

 前田社長と高橋GMが就任したのが2016年からであることを考えると、全てが2人の責任というつもりはないものの、せめてこれまでの分析・反省を示してほしいところでした。
 しかも、監督のタイプが大幅に異なる可能性がある尹監督が就任しても、そういった話は一切なし。
 また、前田社長も怪我をされた退任が決まったということで、このクラブ事情を説明することもなく来季に進むことになりそうです。

エスナイデル監督の早期解任と江尻監督の就任

 ここから具体的なチーム運営の話になっていきますが、まず前提としてサッカーのチーム作りにおいて監督選びというのは、非常に大きなウェイトを占めるということを改めて感じた1年だったように思います。
 J3では北九州の小林監督、藤枝の石崎監督など実績あるベテラン監督で上位を占めたことが話題となりましたが、J2でも戦力は大きく変わらなかったにもかかわらず、横浜FCの下平監督や京都の中田監督が就任したことで一気にチームを押し上げています。
 逆に福岡は井原監督、東京Vはロティーナ監督が退団して迷走した印象もありますし、優秀な監督を引き当てることがクラブの成功における一歩と言っても過言ではないと思います。

 単純に考えても選手を数人入れ替えてもチームは大きく変わらないことが多いですが、監督を1人変えれば大幅にチームが変わる可能性は高い。
 それだけに現在のジェフフロントに対して「良い選手は集めているのだけど…」という意見も聞きますが、肝心の監督選びを失敗したのであれば言い訳にはならないと思います。
 選手というのは予算があればそれなりに集められるのではないかと思いますし、そもそも今の戦力を見ると本当に良い選手たちなのか…というと疑問も残る印象です。


 その監督招聘の面で、ジェフは大きな失敗を犯したと言えるでしょう。
 エスナイデル監督からバトンを受けた江尻監督は、チームを引き上げることが出来なかった。
 だから、エスナイデル監督解任は失敗だったという意見もあるようです。

 しかし、うまくいかない監督に見切りをつけるのはクラブにとって重要な意思決定であり、問題はその後に優秀な監督を見つけられるかどうかでしょう。
 要するに、江尻監督がだめだったからエスナイデル監督を続投すべきだったではなく、エスナイデル監督の後に良い監督を見つけられなかったことが問題だと言えるでしょう。 
 そこは別々に考えるべきではないと思います。


 では、なぜエスナイデル監督の後任に良い監督を探せなかったのかと考えると、シーズン中の解任だったことも大きいのではないでしょうか。
 2017年末に関しては終盤の7連勝でPO進出を果たしましたし、まだ1年目だったことを考えてもエスナイデル監督継続という判断は問題なかったと思います。
 しかし、内容としてはハイプレス・ハイラインが1年目から熟成できず、シーズン終盤の7連勝も堅守速攻で結果を残していた。

 ようするに、本来やりたいサッカーは1年目の時点で、すでに厳しいものだとわかっていた。
 その状況で2年目はさらに酷い試合内容が続き、成績面でもクラブ史上最低成績を更新してしまったわけですから、その状況で解任しても全くおかしくはありませんでした。
 にもかかわらず、それでも今年も監督を続投し、背水の陣で臨んだ今年も勝ち星を上げられずたった4試合で解任となったわけですから、フロントの博打は大きく外れたことになります。


 そもそもとして、その博打を打ったという判断が、フロントの大きな過ちだったといわざるを得ないでしょう。
 大敗が2試合あったとはいえ第4節という早い段階で監督解任したことからも、内部ではすでに厳しい評価を持っていたのではないかと思いますし、昨年末で監督を交代することもできたはず。
 オフに交代していれば監督の選択肢も増えてた上、新監督の下での準備もしっかりと出来たはずですから、その損失は非常に大きなものだったと思います。

 エスナイデル監督に関しては監督解任時などにも取り上げているのでそちらもご覧いただければと思いますが、さらにその後の江尻監督選定も失敗だったということになるでしょう。
 監督交代時に、高橋GMは昨年の段階から後任候補だったこと。
 そして、江尻監督にスタイルの継続を期待していると話しています

 しかし、エスナイデル監督は、西欧風のアグレッシブなハイプレス・ハイラインサッカー。
 江尻監督は前回監督時も日本風の全く違ったサッカーをしていたわけで、スタイルの継続を求める後継者として計算するには無理があった。
 スタイルの継続を受け入れようとした江尻監督にも問題はありましたが、それを指示した高橋GMの判断にも問題はあったと思います。


 本当に「主導権を握るサッカー」を目指していたのであれば、そういったサッカーを他チームで展開していた監督かエスナイデル監督の側近を後任として選ぶべきだったのではないでしょうか。
 ジェフに長らく在籍する江尻監督を就任させてスタイルの継続を求めても、ただ都合がよかっただけではないかと思えてしまいます。 
 それに加えてさらに来季はスタイルの異なる尹監督招聘するとなっては、ますます「主導権を握るサッカー」にこだわり、江尻監督にも要求した意図が分からなくなりますね。

 ジェフにとって江尻監督は大事な功労者の1人だったわけですから、せめて自由に指揮をとらせてあげるべきだったのではないでしょうか。
 二度目の火消しを命じられた上に、スタイルの継続まで要求したというのであれば、いいように扱っているように見えてしまいます。
 しかも、そのスタイルは発起者であるエスナイデル監督自身も最後まで構築できなかったわけですから、それを継続しろと言う方が無理があると思います。

 残念ながら今年1年の監督動向を振り返ると、監督を見る目がなかったように思いますし、礼を重んじることもできなかった印象です。
 そういった分析力の問題がこの順位に表れてしまったのではないかと思いますし、そのあたりが強化部のセンスと言えるところではないかとも思います。
 そして、この低迷の分析も有耶無耶なまま来季に駒を進めることとなりそうで、今後においても不安が付きまとう状況と言えるのではないでしょうか。