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2020年のジェフを振り返る前編「1年間のチームの変位」

 ある程度予想はしていましたが、今季はシーズン終了が遅れたため、最終節前後に契約関連のニュースが多数出ています。
 最終節に関しても大した振り返りができていませんが、2021年も近づいていますので今年の総括をしていきたいと思います。
 前編では慌ただしかったシーズンを振り返る意味も込めて、チームの変化について触れていきたいと思います。

■引いて守る4-4-2のボックスディフェンス

 尹監督初年度となった2020年のジェフ。
 シーズン序盤は、引いて守る4-4-2のボックスディフェンスを実施していきました。
 基本的には、これが1年を通じて基礎的なスタイルとなったと言えるでしょう。

 4-4-2は一時下火になっていたと思いますが、岡崎のいたレスターやアトレティコ・マドリードがコンパクトな守備隊形で戦うスタイルで結果を残し、再評価されていた印象があります。
 しかし、それらのチームは2トップがプレスをしっかりとかけて、チーム全体で守る形が基本。
 ジェフは前線に走れないクレーベなどを起用し、前にプレスにはいかない守備を取り、現在のトレンドからは外れたサッカーだったように思います。


 攻撃においては、主にセットプレーが得点源でした。
 左の堀米、右の田口が高精度のボールを出せるため、低い位置からのFKであってもチャンスを作っていきました。
 身長の高い選手を並べていることもあって、大きな武器となってたと思います。

 一方で当初はカウンターのチャンスがあっても無理はせず、あえて攻撃を遅らせていました。
 リスク回避を第一に考えていたのか、クレーベなどはカウンターには不向きなタイプで、じっくりとサイド攻撃を狙っていきたいという発想だったのか。
 いずれにせよ、これがシーズン終盤まで尾を引いた印象があります。


 また、8月からは真夏の連戦に入り、明確なターンオーバーを敷いていきました。
 これにより8月9日(日)の町田戦、8月12日(水)の松本戦、8月16日(日)の磐田戦に3連勝を遂げており、当初は成功したかのようにも見えました。
 しかし、今季の3連勝はその時だけで、その後はBチームの戦力不足が露呈し、結果的に控えの層も薄くなり、総じて見ればうまくいかなかったように思います。

 今年は異例の過密日程でしたからそのチャレンジは仕方のないとは思いますが、3連勝後は6戦勝ちなしでその間の成績は1分5敗。
 ただターンオーバーがうまくいかなかっただけでなく、根本的な課題は守備に問題が生じていたことではないかと思います。
 プレスに行かず引いて守るだけの守備で、相手にボックスの間を取られることが多く、その課題はシーズンを通して解決しきれなかった印象です。
 勝ち星のなかった6戦中の総失点は14と1試合平均2.3失点を浴びており、守備的なサッカーを目指すチームとしては致命的な数字となってしまいました。

■ターンオーバーは辞めて前に出る方向へ

 チームに変化が訪れたのは9月12日(日)の愛媛戦で、この試合から明確なターンオーバーを敷くことはなくなりました。
 その後も連戦中は状況次第で一部メンバーを入れ替えることはありましたが、夏場のように明確に2チームに分けることは無くなりました。

 そして、チームの戦い方も変わっていき、攻守に積極的に前へと出ていくようになりました。
 プレスをかけるだけでなく、最終ラインも高く設定。
 これは当初予定されたチーム作りの結果というより、6試合勝ちなしでどこかを変えなければいけない状況だったのではないかと思います。


 特にこの頃は、試合序盤に激しくいくことが多かったですね。
 今年のジェフは先制すると強いものの、先に失点すると勝てないという状況もあったため、先手必勝と考えたのではないかと思います。
 これにより、キックオフから攻守に主導権を握り、先行したら引いて守るというプランになっていきました。

 これにより、この時期だけはボランチが選手間のパスコースを切って、パスカットを狙う動きができていた印象です。
 それまでのジェフはFWがプレスに行かないため、ボランチが前に出てパスの出どころを抑えにいかなければいけなくなっていましたが、それによってMFラインが凸凹になってしまう問題も目立っていました。
 しかし、この頃は全体の位置取りが高かったため、ボランチが前後はあまり気にせず左右に専念できたため、パスコースを切る動きができていたのではないでしょうか。

 また、この頃からはカウンターも解禁。
 少しずつではありますが、カウンターからの攻撃も増えていきました。
 ただ、高い位置でのボール奪取は少なかったためショートカウンターは狙いにくく、ロングカウンターも明確なパターンを作るまでには至りませんでした。


 前に行けるようになったジェフですが、この戦い方にも課題があり、前半から飛ばすため90分持たず後半に失速してしまうことも多かった。
 また、プレスには行くものの走力に任せていた印象で、完璧にははめきれていないことも多かった。
 さらに、最終ラインが高いため裏を狙われることが増え、特にSBの裏に対して中央から外に出ていく動きに苦戦することが多かった印象です。

 それらの結果もあって、10月10日(土)の水戸戦では1-5で大敗。
 その後一度は無理に前に出ていかなくはなりますが、再び前への勢いを高めると、11月8日(日)の山形戦でも1-5の大敗。
 1年間で2試合も5失点以上したシーズンは近年では記録になく、かなり厳しい結果となりました。

■シーズン終盤は"リトリート+プレス"に

 山形戦も踏まえてか、シーズン終盤のジェフは4-4-2でのリトリート守備を基本に、前に行ける時はプレスに行くスタイルに変わっていきました。
 ようやくここに来て、現在の守備的なサッカーのトレンドである"リトリート+プレス"に行き着いた印象です。

 後方でボックスを形成する守備は変わりませんが、プレスに行ける状況になれば、SHが前に出ることによって2トップとプレスをかける。
 シーズン序盤は全くプレスには行かず、危なくなったらボランチが前に出て対応する。
 シーズン中頃は最終ラインも高くして、全体で前に出ていく守備だっただけに、明確な変化だと思います。


 これにより主力に躍り出たのがアランで、プレスをかけられるSHとして主力になっていきます。
 また、高さもありポストプレーもできるので、ターゲットとしても機能し、コンディションも良好でカウンターでも活躍しました。
 山下を途中出場でSHとして起用し始めたのも、SHがプレスをするようになって、SHにより守備力を求めるようになったからでしょ。

 ただ、クレーベと船山のプレスの圧力は相変わらず緩いため、どうしてもSHがプレスに行くタイミングが掴めないことが多かった。
 90分間走れる2トップではないため、常時プレスをかけることはできず。
 これによって最終節北九州戦でもそうだったように、良い時間帯と悪い時間帯がはっきりとして、安定感のない戦いになっていた印象です。


 結局は2トップが走れる時間帯だけは良い戦いができる状態ということで、走力に頼ったプレスだったことには変わりないと思います。
 前線の守備に課題が残るため、最後までFWとMFの間でボールを持たれることが多く、そこからボックスの間も突かれてしまう。
 ボランチの守備も落ち着かず、シーズンを通してプレス問題、中盤の守備問題は改善できなかった印象です。

 攻撃面も向上せず、ロングボールをクレーベが落として、船山が拾う展開が基本で、3人、4人とそこに絡むような攻撃はなかなか作れませんでした。
 カウンターも少しずつは狙えるようになったものの、基本的にはセットプレー頼りから抜け出せなかった印象です。
 攻守に変化はあったとはいえ、全体を通して見れば成長の歩みが遅い1年だったのではないでしょうか。

鈴木大輔の獲得と鳥海・為田の移籍報道 岩崎・福満の補強

 契約更新選手の発表も出始めましたが、そこはひとまず置いておきたいと思います。
 そもそも更新選手の話をすべきかどうか。
 今季は過密日程で個々の選手の話などもあまりできなかったので取り上げたい気持ちもあるのですが、はたして需要はあるんでしょうか。

hochi.news

 ここまで契約満了や引退のニュースが多かったですが、補強の話も出ています。
 21日には浦和の鈴木大輔に対して、ジェフが獲得に動くと報知が伝えています。

 鈴木は新潟、柏などで活躍し、スペイン2部でも3シーズンにわたってプレー。
 その後、柏に復帰しますが、昨年から浦和に移籍。
 しかし、今シーズンは、リーグ戦で5試合出場にとどまっていました。

 代表でも各年代の代表に選出され、関塚監督が率いたロンドン五輪でも主力として出場。
 2013年には、ザッケローニ監督時代の日本代表にも選出され、試合にも出ています。
 実績としては、十分の選手と言えるでしょう。


 個人的にはコンディションさえよいのであれば、悪くない補強となるのではないかと思います。
 増嶋を取り上げた際にも話しましたが、尹監督は意外とCBに高さ以上にカバーリングやスピードなどを求めている印象を受けます。
 チャンも幾度となく「カバーリングを意識している」と話していましたし、ゾーンディフェンスで守っているため、カバーや守備範囲の広さなどが重要になるのではないでしょうか。

 そこで評価されたのがチャンや鳥海だったということではないかと思うのですが、対人における強さの面では正直物足りなさもあった。
 鈴木の最近のプレーはあまり見ていませんが、少なくとも以前はラインコントロールができてカバーリングも期待できる上、強さもある選手といったイメージです。
 尹監督の理想のタイプという意味では、ぴったり合うのではないかと思います。


 気になるはやはり年齢で、来年1月に31歳となるそうです。
 そこに絡んだコンディションや怪我などの問題、の能力の衰えなども気になるところです。
 ただ、堅守のチームにおいてはやはりCBが重要ですし、そこもウィークポイントの1つと感じていたので、補強の方向性としては理解できるように思います。

 今オフは寿人や工藤、優也や増嶋、田坂などが退団し、少しずつ全体の年齢構成もまともになりつつあります。
 特にCBに関しては鳥海、チャン、岡野など次世代の選手も出つつあるので、1人くらいはベテランがいても悪くはないように思わなくもありません。
 また、山口智や近藤、増嶋を補強した際に33,4歳だったはずで、それに比べればまだ納得感があるように思います。


 とはいえ、すべては現状の鈴木がどれだけやれるのかどうか。
 そこがもう1つなのであれば若手主体で頑張ってほしい気持ちもありますし、ベテランを補強しても怪我でほとんど出場できなかったというケースが少なくないですから、強化部の情報収集能力が問われるところではないでしょうか。
 ただ、尹監督体制も来季である程度花開かなければ再来年は厳しいと私は思いますから、そういった意味でも実績あるCB獲得に動くのは理解できる部分があるのではないでしょうか。

 …と、一昨日の夜までは思っていたのですが。


 昨日24日に、鳥海と為田のC大阪が移籍報道が出ました。
 最終節での鳥海の涙の理由も、移籍を決めてジェフ最終戦だったからということでしょうか。

 鈴木と鳥海を軸に、新井、チャン、岡野などがポジションを争う構図になるのかなと思っていたのですが、鳥海の代わりに新井が入ってくるということでしょうか。
 そうなると年齢層が上がることにもなりますし、仕方がないとはいえまた印象が若干違ってきますね。
 なにせCBが入れ替わることも多かった今年のジェフにおいて、CBでの出場最多は鳥海だったわけですから、単純に戦力としても痛手は大きいでしょう。


 ジェフアカデミー出身で2018年に明大からジェフに加入した鳥海ですが、初年度からクレバーなプレーを見せていました。
 昨年もカバーリングのうまさは話しましたが、江尻監督は意外と若手起用が積極的ではなく、2年目までは主軸とまではなり切れず。
 今年の途中から、確固たるレギュラーとなりました。

 上記の通り尹監督はカバーリングやスピードをCBに要求している印象で、それが鳥海にはあったのではないでしょうか。
 また、初年度から大型FWとは距離を取りつつタイミングを計ってアタックに行くなど、頭を使って高さなどを補う動きを見せていました。
 ただ、ビルドアップももう少し成長してほしいところで、ボランチ起用時などには課題もあったかなと思います。


 まったく個人的な話ではありますが、同郷の木更津出身な上にアカデミーで成長した選手ということで、頑張ってほしい選手の1人ではありました。
 そういった選手に限らず、今のジェフの状況を考えれば、チャンスがあれば個人昇格は歓迎したいと思ってはいるのですが、はたしてJ1で通用するレベルにまで達しているかどうか。
 高さ、強さに関してはもう1つな印象もあるだけに、若干心配なところがあるようにも思います。

 C大阪木本が名古屋に移籍した上、ACLもあって人数を増やしたいということでしょうか。
 ただ、札幌から進藤、新潟から新井と比較的テクニカルで動けるCBを補強している印象なので、他の動向次第では鳥海のライバルも多くなりそうです。
 3バックも4バックも実施してきたクルピ監督ですし3バックなら鳥海の課題も埋められるのかなとも思うのですが、4バックの方が長い印象もありますしどうなるのでしょうね。


 また、為田に関しては、シーズン終盤は出番が少なかったですし、攻撃のアクセントにはなるのの決定的なプレーもあまりできてなかった印象なので、そこまで戦力面ではマイナスにはならないのかなとも思います。
 ドリブルに関しては一級品でJ1でも通用するでしょうが、クロスやシュートの精度には最後まで課題があった。
 そのため、今季も出場試合数は多かったもののノーゴール1アシストで終わっているのでしょう。

 また、守備に関しても課題で、勝手に前に出ていって裏を開けてしまうことが多かった。
 今季終盤はSHがプレスに行くようになったこともあって、為田の守備では難しくアランが抜擢されて出番を失ったのだと思います。
 為田も3バックのWBの方がやることがはっきりする分、うまくいく印象があります。

 それでも為田の場合は、基本的にサイドや2列目の選手なだけに、潰しは効くでしょう。
 途中出場からの出場機会を得られる可能性もありますし、状況からして移籍することでもう一歩成長を促した方がいいのかもしれません。
 逆に鳥海はCBなだけに心配ではありますが、年齢を考えるとJ1挑戦のチャンスは少ないかもしれませんし、決まれば頑張ってほしいところだと思います。


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 一方で補強のニュース。
 札幌から岩崎の加入が決まりました。

 岩崎と言えば、ここ2年は札幌、レンタル先の湘南で苦戦していた印象ですが、札幌移籍前の京都で2年間大活躍をしていた印象です。
 京都橘高から京都に加入した岩崎は、高卒ルーキーながらも35試合に出場。
 2年目にも33試合に出場と、結果を残しました。


 京都時代は左サイドでのプレーも多かったですが、2列目や前線からスピードある飛び出しができて、ドリブルでのキープ、仕掛けなどもできる選手。
 運動量豊富なスピードスターといった印象で、ジェフ戦でも活躍してを手を焼いた選手といった印象です。
 ユース代表でも活躍してきた選手でした。

 ちなみに京都での最終戦2018年のジェフ戦で、そこまで左SHでのプレーが多かったですが、この時は闘莉王と2トップを組んでいます。
 この頃のジェフと言えば、エスナイデル監督体制のハイラインでしたから、あえて岩崎を前線に置き、闘莉王に当てて岩崎が裏を取るという狙いだったのだと思います。
 それだけでもある程度のイメージはつく選手で、ジェフも来季はそれを狙っていくのかもしれませんね。

 もちろん今年はSHも確固たる主軸が見つからなかった年ですから、そこでの起用もあり得るのかもしれません。
 いずれにせよ、岩崎に関しては素直に楽しみな補強ではないかと思います。
 ただし、レンタル移籍というところが、気になるところではありますね。

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 こちらはかなり意外な補強でした。
 福満がC大阪から完全移籍での獲得となりました。

 福満は2017年から当時尹監督が率いていたC大阪でプレーしていたので、尹監督繋がりなのでしょうか。
 ただし、尹監督時代も初年度は5試合のみの出場、2年目も20試合出場しているとはいえスタメンは8試合のみと、出場時間は限定的でした。
 福岡経由で鈴木GMとの絡みか、為田、鳥海とのトレードという側面の方が強いのかもしれません。


 昨年もC大阪からではリーグ戦で出番がなかったですが、夏に水戸にレンタル移籍して活躍します。
 そのまま長谷部監督についていく形で、福岡にレンタル移籍しました。
 ただ、福岡でも期待されたものの主力になり切れなかったという印象が強く、一時怪我もあったとはいえスタメンは16試合のみとなっています。

 水戸、福岡では使い勝手の良いテクニカルなSHといった印象で、水戸も福岡もSHの層は薄いからチャンスがあった部分もあったのではないかと思います。
 特に福岡ではよりフィジカル面を要求された印象でしたが、90分間持たないことが多かった。
 体力的な課題が感じられた1年で、状況からしC大阪からも福岡からも契約延長の打診がなかったのかもしれません。

 悪い選手ではないと思うのですが、ここ数年のジェフは中途半端な選手で頭数だけ増やしてチーム力が上がらない印象ですし、今必要なのは確固たる主軸候補として攻守に期待できるSH。
 あるいはパワフルに走れて、運動量豊富に活躍できるSHなのではないのかなと思わなくもありません。
 ただ、長谷部監督の下で守備も学んだ選手といった印象ですし、それをジェフにうまく伝えられるといいのかもしれませんね。