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ジェフの戦術と巻誠一郎の憂鬱

 前節、負傷した茶野に代わって、昨日の大分戦では福元を起用。
 茶野の怪我は残念ですけど、クラブにとっては良い部分もあるかもしれませんね。
 GKの櫛野も含めて主要ポジションにベテラン選手の多い現在のジェフ。
 途中出場の選手も若手は少ないですし、今はそれでもいいのでしょうけど、将来を考えるともっと若い選手にも活躍してほしいところです。



 一方、前節スタメンだった米倉に変わって倉田が頭から出場。
 米倉はベンチ入りメンバーからも外れてしまいました。
 確かに米倉がスタメンから外されたのは仕方のないことだ思います…というか、そもそも今の倉田はそう簡単に外せるような存在の選手ではないでしょう。
 前節米倉が活躍できなかったのは、本人の問題というよりは連携や戦術などの周りとの問題であって、不可抗力の部分が大きかったと思います。
 そんな状況でいきなりスタメンに選ばれ、次の試合ではベンチからも外されてしまう。
 それで本人の気持ちの部分は大丈夫なんでしょうか。


 育成に長けた名将の話を聞くと、若手育成に関しては我慢が必要だと語る監督が多いように感じます。
 昨年の益山の時も感じたのですが、もう少し若手選手へのケアを考えなければいけないんじゃないでしょうか。
 いくら言葉ではフォローしたとしても選手は心の奥底でダメージを負っているかもしれませんし、我慢してチャンスを与えるつもりがないのであれば、起用方法も考えてあげるべきではないのかなとも思うのですが…。 
■前半、ジェフが猛攻
 大分はこれまでの4-4-2ではなく、1トップというかFWを縦野関係にして、ジェフの1ボランチを見る形をとってきたのかなと思います。
 しかし、ジェフの中盤中央に対する大分の守備が一歩遅れがちになり、中盤で先をとられる展開が増えていきます。
 加えて、ジェフは守備時のプレッシングも機能しており、ジェフにとっては良いスタートになりました。


 ジェフがミドルエリアで勝る中で、倉田のトリッキーなプレイで相手にしかけ、リズムを作っていく試合序盤。
 すると前半20分。
 後方からのネットに合わせたロングボールを蹴り込んだタイミングで、アレックスが裏に走り込みます。
 すると、大分DFが皆、アレックスの動きに釣られてしまい、ネットがフリーに。
 ネットがヘディングですらせて、受けたアレックスがそのままゴール。
 ちょっと大分の守備がいただけなかったなぁ…といったシーンでした。


 続いて前半32分。
 倉田がドリブルで中央に持ち込み、アレックスに戻してそのままミドルシュート
 一度は相手DFにはじかれますが、再びシュートを放ち、綺麗な弾道のゴールを決めます。
■後半は両者、停滞状態
 前半の大分のシュートは0本。
 さすがにこのままではまずいと感じたのか監督から激しい檄が飛んだのか、後半になってようやく大分は動きが活性化。
 中盤の運動量が増え、守備時のアタックも激しくなっていきます。


 逆にジェフの方は気温の問題なのか、2点先に取って気持ちが落ち着いてしまったのか、運動量も前へのプレスも少なくなってしまいました。
 これがチームとしての狙いのあるペースダウンならばいいのかもしれませんが、まだ時間はまだあった状況ですし、2-0では安全圏内とは言えないはず。
 予定外の落ち込みだったのかなと思います。


 しかし、大分もジェフゴール前までボールを持ち込めはするのですが、そこからの工夫やテクニックはなく、決め手に欠ける攻撃となってしまいました。
 ジェフの守備が最終局面ではある程度安定していたこともあって、後半20分あたりからは大分の勢いも落ちてきます。
 とはいえ、ジェフの方も攻守の切り替えのスピードは上がらず、ボールは保持できるのですが、低い位置でのパス回すばかりになっていました。
■ジェフの戦術と合わない巻
 ジェフは後半頭からネットに変えて巻を投入していました。
 正直、交代直後はいつものがむしゃらさも感じず、さすがにこの試合は「どうしただろう?」と心配していたのですが(それまでは結果が出ないとはいえ巻自身はそこまで変わっていないと思っていましたし)、ボールを触ることで少しずつは良くなっていったかな?といった感じでした。
 シュートシーンなどは少なかったのですが後半14分。
 倉田が中盤左でボールを持ち駆け上がっていくと、巻は斜め左に走りだします。
 そのことによって、中央にスペースができ、倉田と勇人がゴール正面でワンツー。
 完全に抜け出した倉田のシュートは、惜しくも相手GKに止められてしまいます。



 ジェフの戦術を考えると、巻はこれしかないのかなぁと思います。
 周りを活かして、自分は犠牲になるプレーということになります。
 今のジェフはパスをつなぐ意識は強いですけど、最終的には前3人の連携と個人技で得点を奪うサッカー。
 当然FWへのパスは足元へのボールが多くなり、サイドからのクロスも少なく精度自体ももう1つ。
(それらが一概に悪いとは言いきれませんが。)
 チームとしては1トップを途中で交代したからといってその戦い方を変える意識はないようですし(そもそも得点源はネットではなく、倉田とアレックスなわけですし)、ヘディングにこそ特徴のある巻としては「どうしようもない」状況なのかもしれません。
 巻もそれをわかった上で、周りを活かすために、前線で動き回っているんじゃないでしょうか。
 自分が活きることだけを考えればゴール前で待っていたいのでしょうけど…。
 ネットならゴール前で待っていてもドリブルがあるので、チームのスタイルにはフィットするのでしょうけど、巻はそうではないですからね。
■勝利よりも気になること
 試合の方はそのまま2-0で終了。
 危なげのないジェフの勝利だったと思います。


 大分は北九州戦、横浜FC戦といまいち乗りきれない試合が続いて、この試合ではコンディションも非常に悪かったですね。
 W杯韓国代表候補にも選ばれたキム・ボギョンも、ここ数試合は良さを出し切れていません。
 今年からプロ入りした選手ですし、まだプロの連戦に慣れていないのかもしれませんね。
 そのあたりを考えれば、相性の良い大分と言うこともありますし順当な勝利だったかなと思います。
 それでもこのアウェイ2連戦の中で、相手を運動量で上回ったということは、素晴らしいことではないでしょうか。  




 しかし、それ以上にどうしても気になってしまうのが、巻のこと。
 たぶん状況は米倉とも似ているのでしょう。
 前の3人…というか倉田とアレックス、アレックスとネットの関係は非常に固い連携が出来ているので、そこに入っていくのは難しい。


 そして、先ほども言ったように、何よりも戦術の問題。
 江尻監督は巻投入の理由として特にネットに問題はなかったといっているので(交代はネットの警告を気にしたのか怪我なのかと思っていましたが)、相手前半の低調もあって後半は巻で戦おうということだったのでしょう。
 しかし、今の戦術にそのまま巻を投入するのはなかなか難しいことだと思います。
 監督本人もFWが前を向くことを意識させているようで、それはネットには合うでしょうけど巻には合わない。
 加えてクロスを積極的に上げるような指示をチームに出したわけでもない感じでしたし、いったいあの状況のままで巻に何をさせたかったのかなぁ…と悩んでしまいました。
 チャンスを与えたいという気持ちはわかるにしても、それだけでは監督としてどうなのか。
■今こそ巻を応援したい
 現実的に考えると、当面の巻は守備をしっかり頑張って、周りを活かすプレー(オシム監督の頃は「ブラボー」という声がかかっていましたが今はどうなんでしょうね)をしながら、チャンスを待つしかないのかもしれません。
 けれど、それだけはメンタル的にも厳しいでしょうし、なかなか本人も乗り切れないかもしれませんね。
 そうなってくると、巻の憂鬱はまだ続く可能性もあるのかな…と。


 これが例えばゴン中山のようなメンタルなら開き直るのも早いかもしれないけれど、巻はすごく根が真面目な選手。
 多くの人に期待されていることも理解しているだろうし、チームに貢献したいという気持ちも人一倍強いはずです。
 だからこそ、深く悩みこんしまって、悪循環に陥っているのかなぁと。
 プレーや表情を見ていると、そう感じてしまいます。



 ここからはサポーター側の話にもなってしまうけれど、多分巻の活躍に期待している人は思っているよりも多いんだと思います。
 一部のサポーターからは「もう巻からは卒業すべき」というような類の意見も聞かれますけど、やはり子供たちやライトなファン層の方たちには(もちろんそれ以外にもファンは多いでしょうが)今でも巻の人気、知名度は高いと思います。
 それもあって、巻がゴールを決めれば、チーム全体もスタジアムも勢いに乗ってくる部分があるんじゃないでしょうか。


 それに何よりも、巻はジェフの功労者であることは間違いない。
 一部ジェフサポ以外の野次馬が「巻は降格してもすぐに残留を決めなかった卑怯者」だとかなんとか何も知らずに語っていますが、巻はチームが崩壊した07年末に残ってくれた数少ない主力選手。
 あの時に残ってくれたことの方が、よっぽどジェフにとっては大きな助けだったはずです。


 そんな功労者が例え控えの状況であっても伸び伸びとプレーできない状況というのは、個人的に見ていてすごく辛いことです。
 昨日、個人的にユースサッカーを見てきて若い選手達が楽しそうにサッカーをしているのを見た分、ますます心苦しく感じてしまいました。
(しかし、巻が楽しそうにサッカーをするとなれば、いつ以来になるのだろうか…。)


 もちろん誰のせいとも言えない状況ではあるわけですけど、それでも出来る限り巻には良い状況でサッカーをしてほしいと思うのです。
 だから、感情論にはなってしまいますけど、今こそ巻を精一杯応援すべきなんじゃないかと思います。


 C大阪の播戸が先日の試合で1年8カ月のスタメンを果たしたそうです。
 その時の心情がブログに書かれているのですが、この内容にすごく感動しました。
 試合に出て、シュートを決めて、勝利する。
 それが出来なければ毎試合凹む、練習も含めれば毎日のように凹む…。


 播戸も同じように(オシム監督も愛した)真面目な選手で、巻も同じように凹んでいるんだろうなぁと。
■いつかまた楽しいサッカーを
 巻がジェフで活きる道はもうないのか…。
 思い出すのは昨年1月の日本代表対イエメン代表戦。
 熊本で行われた試合だったのですが、巻は途中出場からチームに可能性を与えてくれました。
 それまで強引なドリブル一辺倒で引いた相手を崩せなかった日本代表ですが、巻が入ることで他選手のクロスへの意識が高まり、一気に選択肢と可能性を増やすことに成功しました。
 その時に書いたエントリーはこちらなのですが、それと今の巻は同じ状況ではないかと思います。


 ただ、今のジェフが1つ違うのは相手のレベルの低さもあって、ドリブルだけで相手に勝ってしまう部分があること。
 加えて日本代表に対する格下チームのようなドリブルだけではこじ開けにくい極端な守備サッカーも、J2では見られません。
 だから今すぐに巻が必要になるというのは、チームとして意識的に戦い方を変えない限り、そう簡単ではないかもしれません。



 けれど、例えば相手が強豪になったり、前線3人のドリブルを研究してきて攻撃の選択肢がなくなってきた時に、巻が必要になってくるのかもしれません。
 あるいは今は結果を出せているからいいけれど、どこかでメンタル的に厳しくなった時に前線で戦える巻というのは貴重な存在になってくるのではないでしょうか。
 オシム監督はそのあたりを見越した上で、巻を育てて日本代表にまで連れて行ったんだと思いますしね。


 特にJ1昇格後はより巻の存在が重要になってくる可能性があるんじゃないかなと思います。
 J2で通用したドリブラーがJ1では通用せず、苦しんでしまうなんてこともありますし、メンタル的にも巻が必要になってくる場面があるかもしれません。



 しかし、それまでは苦しい我慢の日々が続くのかもしれません。
 だからこそ、サポーターとしては今は温かく見守ってあげるべき時なのかなと思います。
 スタメンで出場した播戸も良い結果は出せなかったようだけど、サポーターの拍手に救われたということだし、今の巻にはそういったサポートが必要なのかもしれない。
 たたでこそ苦しんでいる選手に厳しい言葉をかけるというのは、ちょっと今は違うんじゃないかなと思います。


 ともかく、今の巻には頑張って辛抱してほしい…と思います。
 なんとか気持ちを切らさずに、初心に帰ってがむしゃらに走って、チャンスを待ってほしいですね。
 そして、いつかまた伸び伸びと楽しいサッカーをしてほしいですね。