当ブログはプロモーションを含みます

変化は見えた 勝利は見えるか

 先日の監督交代に関する会見で、今年スカウティングは長谷部監督代行が中心に行っていることが明らかになりました。
 今年は金沢戦京都戦など、昨年までよりも相手対策がうまくいっていた印象だったので「スカウティングを強化しているのではないか」と話したことがありますが、それも長谷部コーチの加入が大きかったということになるのでしょうか。
 新潟やU-23日本代表での反町監督は江尻コーチに相手チームを見ることを任せていたと話していましたし、やはりスカウティングはコーチが担当することが多いのでしょう。


 ただ、そのコーチが監督に昇格して、うまくいくかどうかはわからない。
 関塚監督時は例年に比べてもコーチが多く厚い体勢だったので、長谷部コーチがスカウティングに専念できる余裕があったのかもしれないし、監督となるとどうしても自チームを中心に見なければならないでしょう。
 また、関塚監督期終盤のようにチーム状況が悪ければ相手対策なども成立しなくなってくるでしょうから、まずは相手対策より自らのチームの構築が重要になってくると思われます。
 やはりまずは自分たちのベースを作れるかどうかが、注目ポイントとなってくるのではないでしょうか。
■ポストからの落としの展開を抑えられず1-2に
 ジェフは4バックに戻し、DFラインは右から丹羽、イ、若狭、阿部。
 ボランチには勇人と山本が入り、右SHに長澤、左SHに井出、前線に町田と船山。
 スタメンはあまり変わらなかったものの、ベンチからは藤嶋、比嘉、大久保、北爪が外れ、岡本、多々良、菅嶋、エウトンが入りました。
 岡本は02年にトップ昇格を果たしているので、現役時代に01年から03年までジェフに所属していた長谷部監督と一緒にプレーしていたことになります。


 対する横浜FCは、前節北九州戦と同じのメンバー。
 ベンチ入りメンバーも含めて、1人も変わりませんでした。
 ルス監督が指揮を取らなくなって6試合スタメン出場を果たしていたた三浦カズは、前節からベンチスタートとなっています。



 3分、先にチャンスを作ったのは横浜FC
 井出が左サイドで遅れ気味にプレスに行ったところをかわされ、中央に繋がれてイが前に出ていきますが潰し切れず。
 逆サイドに展開され、野村が縦に仕掛けてシュートまで持ち込みますが、何とかGK佐藤がセーブ。


 新体制になったジェフですが、まず攻撃ではSBから船山を走らせる長いボールを使っていきました。
 守備では積極的に前に出て行く姿勢を、見せていたと思います。
 しかし、遅れてでも前にチェックに行く形だったため、そこをかわされた後の守備に不安が見られました。


 9分にはジェフのチャンス。
 カウンターから前へ持ちあがった山本が、左サイド奥でFKを獲得。
 角度のないところでしたが、山本が直接狙いバー直撃のシュートに終わります。



 両チーム、序盤からゴール前での展開が増える中、先制したのはジェフ。
 14分、右サイドからのCKを中央で井出が合わせると、ファーの船山がフリーでシュート。
 左足でダイレクトで合わせてゴール。


 井出が合わせたところで、中央に横浜FCの選手が集中してしまい、外の船山が完全にフリーになっていました。
 ジェフは全員が引いた位置から前に出ていく動きをしていましたが、それによって横浜FCは井出へのマークが遅れた。
 船山もよく合わせましたが、井出のところで勝負ありだったように思います。



 19分には横浜FCのチャンス。
 左サイドへの大きな展開から野村がタメを作って、追い越した田所がボールを受けクロスを上げると、ニアで野崎がオーバーヘッド。
 これにイバが合わせて同点ゴールかと思いきや、オフサイドの判定。
 ここでもジェフは守備で前への姿勢を見せ、野村を長澤と丹羽が潰しに行ったのですが、その結果田所がフリーになってしまいました。


 26分、横浜FCが同点ゴール。
 右サイドでイバが落とし野村が受けて、佐藤謙介が前方の野崎へ。
 野崎が縦に仕掛けてイが対応しますが、ボールにイの手に当たってPK。
 これをイバが冷静に決めて同点。


 PKで失点した形ですが、ジェフが先制してからは横浜FCペースだったと思います。
 横浜FCは前節に続いて2トップが落として中盤が展開してチャンスを作る攻撃でしたが、ジェフはこの展開に苦しんでいました。
 2トップのポストプレーを潰し切れず、中盤も抑え切れずに前を向かれてしまった。
 ジェフとしては、相手対策が取り切れていなかったと言えるのかもしれません。



 30分頃からはジェフがボールを作る時間が長くなっていましたが、37分に横浜FCが追加点。
 左サイドでイバがタメを作って、中央の佐藤謙介へ。
 佐藤謙介ミドルシュートを決めて1-2に。


 44分、ジェフの攻撃。
 左サイドで町田がボールを奪い、中央でフリーの長澤へパス。
 しかし、長澤が中央へ合わせたボールは、相手にブロックされます。
■押し込む時間を作るも得点を奪えず
 前半は横浜FCの時間が長かったですが、後半はジェフが攻め込む時間が長くなります。
 49分にはジェフのチャンス。
 右サイドで船山、町田、長澤とつないで、外にいた長澤がSBとCBの間に位置取った船山にパス。
 船山は枠を捉えたシュートを放ちますが、GK南がセーブ。


 51分には横浜FCのチャンス。
 ボランチ佐藤謙介から、大きなサイドチェンジを受けた田所がクロス。
 大久保がファーで合わせますが、ヘディングシュートは枠の外。



 53分にはジェフの攻撃。
 右サイドのCKからショートコーナーを使って、山本がクロス。
 GK南が弾いたところを、船山が拾ってシュートを放ちますが枠の外。


 その直後には、相手のミスからジェフの決定機。
 イが前方に蹴ったクリアに対して、船山と相手DFが並走する形になると、相手DFが足を滑らせ船山が抜け出します。
 フリーになった船山でしたが、シュートは枠を捉えきれず。



 ジェフは60分、井出に代えてエウトンを投入し、船山が左SHに回りました。
 62分、横浜FCの決定機。
 右サイドからのイバのタメを一度は跳ね返しますが、クリアが佐藤謙介の足元に入ると、素早く浮き球のスルーパス
 大久保が反応し裏を取りますが、シュートは枠の外。


 70分、ジェフは勇人に代えてオナイウを投入し、町田を右SHに、長澤をボランチに移しました。
 73分、ジェフのチャンス。
 右サイドからのCKをフリーになったイが合わせますが、ヘディングシュートは枠を逸れます。
 この試合では幾度となくCKからのチャンスを作ったジェフですが、時間がない中でセットプレーでの練習に時間を割いてきたのでしょうか。
 


 その直後にも、ジェフの決定機。
 右サイドの町田から、オナイウにアーリークロス
 オナイウがうまく相手DFの背後を取る形で、ダイレクトシュートを放ちますがこれも枠外。
 町田の前方にうまく落とすボールも、素晴らしかったと思います。


 74分、横浜FCは大久保に代えて、ロク・シュトラウスを投入。
 76分には、横浜FCがカウンター。
 イバが落として野村が拾うと、イバが右サイド裏に走り込んでボールを受けます。
 イバが若狭をかわしてシュートを放ちますが、GK佐藤がキャッチ。


 78分、ジェフの攻撃。
 丹羽、町田、エウトンとつないで、丹羽がサイドを抜け出しクロス。
 これはゴール前であいませんでしたが、長澤が拾ってシュート。
 これも相手にブロックされますが、エウトンが再び拾って反転してシュートを放つもGK南の正面。
 ただ、FWがサイドに顔を出してサイドで崩すという展開はこれまでにも見られ、狙ってやっているのではないでしょうか。



 83分、横浜FCは野村に代えて永田を投入。
 87分、ジェフは町田に代えて菅嶋を起用。
 そのまま右SHに入りました。


 その後もジェフが攻め込み、横浜FCが守る展開。
 特にスルーパスからオナイウが裏へ飛び出す攻撃が目立っていましたが、パスがもう1つ合わず。
 逆に89分には横浜FCのチャンス。
 左サイド永田からのマイナスのクロスはイバに合わなかったものの、後方の中里がミドルシュート
 しかし、惜しくも枠には飛ばず。


 90分、横浜FCは野崎に代えて藤井を投入。
 その直後、ジェフの決定機。
 右サイドから船山がアーリークロス
 うまく相手のニアを取ってフリーになった菅嶋が頭で合わせますが、枠に飛ばし切れず。
 その後もジェフが攻め込みますが、2点目を奪えず1-2で敗戦となりました。
■前に出ていく姿勢を見せた新チーム
 長谷部監督が就任したジェフは、攻守に変化が見えたと思います。
 まず攻撃では斜めの狙いが多かった印象です。
 SBから斜め前方へ長いボールを蹴り、FWが中央から斜めに裏へ抜け出していく。


 また、SHやSB、FWなどがサイドに人数を増やして、そこからパスを繋いでいく展開も狙いだったように思います。
 まずFWが裏に出ていく動きによって相手を後方に押し込み、サイドからのパスワークで崩そうという意図だったのでしょうか。
 どちらもサイドが起点で、これが長谷部監督の攻撃の特徴となっていくのかもしれません。
 パスワーク時などにもFWが裏へ動き出すプレーが増えていたようにも見え、そこも変化の1つだったのかもしれません。 



 これまでのジェフはロングボールも中央から中央へ工夫のない展開が多かったですが、角度をつけることで変化を付けたということなのでしょう。
 サイドでのパスワークに関してはまだまだどうなるかわかりませんが、後半からはこの展開からいくつか形を作っていたと思います。
 ただ、前半はそのロングボールを蹴る位置が低く、プレゼントパスのようになっていましたし、後半途中からは焦りからかミスも目立っていました。


 より変化を感じたのは守備の方でした。
 関塚監督は基本的に引き気味の守備で、特に4.5バック時には後方に引いて守って構えているだけの状態でしたから、長谷部監督はともかく守備で前に出ていくことを重視したのではないでしょうか。
 多少遅れ気味でも、前に出て行く姿勢を見せていました。



 また、前から守備に行くことで、特に後半からはラインも高く維持できていた印象です。
 加えて、今までには希薄だった、サイドへのスライドも見られるようになりました。
 特にSHが中から外に出ていくことで、サイドの出所を抑えようという意図を感じました。


 しかし、前に行くことばかり重視し過ぎて、その後の連携が出来ていなかった。
 SHとSBが同時にチェックに行って裏を取られたり、ボールに集まりすぎて展開されたり。
 チェックとカバーの関係性や、どこでボールを潰しに行くのかといった意思統一に関しては課題も目立っていました。



 ただ、意図としては十分に理解できるし、これが今のチームに必要な"処方箋"でもあると思います。
 問題はそれがどこまでうまく効いていくのか。
 前への意識を増した状況で、周りとの連携を作れるかどうかが重要だと思います。


 もともと関塚監督の意向もあって、DFには高さを求めていたところがあったのだろうと思います。
 その分スピードなどには課題があって、このサッカーに変わるとなればイや阿部は厳しいところがあるかもしれません。
 それでも横浜FC戦後半からは、徐々に全体のバランスも改善されていったと思います。



 前に行く分どうしてもスペースが出来るので、それによって不安に感じる部分もありましたが、そこで怖がって後ろに引いては進化は期待できない。
 特にこの試合は新体制での初戦で、選手にも周囲にも新チームのテーマを見せつけなければいけない試合だったと思いますし、守備で前に出ていく姿勢を見せることは大事なポイントだったのではないか思います。
 もちろん下がって守った方が今までのサッカーに近いし、チームの立て直しを図る上ではリスクも少ないでしょうが、それでは何ら変わらないという判断だったのではないでしょうか。


 その方向性は良いと思うのですが、変化は見せたとしてもそこから勝てるチームにまで持っていけるかどうかはまた別問題。
 新監督の初戦ということもあってか選手たちにも気迫を感じ前への姿勢も見せてくれましたが、それを続けながら適切なバランスを見つけられるか。
 後半に入って攻守に改善できた面はあったと思いますが、これが一時のモノなのか次につながるモノなのか。
 そこに関しては、やはり一喜一憂せずに冷静に見守っていくしかないと思います。