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2016シーズンを振り返る 吉田眞紀人・船山貴之編

 日程の関係で、2人のエントリーを強引に1つにまとめることにしました。
 ただ、これで予定していた全選手を取り上げることになります。
 吉田と船山はタイプも立場も全く違いますが、2人とも大きな壁にぶつかっているのかなといった印象があります。



 昨年、水戸から加入した吉田ですが、開幕戦から途中出場を果たし、いきなりゴールを決めています。
 その後もFWや右SHとして出場しスタメン出場も果たし、シーズン序盤は主力選手の一角としてプレーしていました。
 しかし、5月からは徐々にスタメンから遠のき、6月からはベンチにも入れない状況となってしまいました。


 主な要因は、井出と町田の活躍にあったのではないでしょうか。
 2人は5月に入ってからゴールを量産し、チームを牽引していきました。
 また、関塚監督は個人での打開力を求めるタイプだったため、吉田は合わなかった部分もあったのかもしれません。
 シーズン序盤はコンディションの良さもあって活躍していたところがあった印象ですが、徐々に落ち着いていったということになるのではないでしょうか。



 その後は怪我で一時離脱しており、久々の出場となったのが、長谷部監督に代わって2試合目となった8月7日の愛媛戦。
 この試合で後半からの出場を果たすと、続く北九州戦、熊本戦でもスタメン出場します。
 しかし、大きな活躍は出来ず、残り試合は主に途中出場でのプレーが増えていきました。


 結局16年は27試合に出場し、3ゴールという成績でした。
 15年は29試合に出場し4ゴールだったため、大きく変わっていないようにも見えます。
 しかし、15年はスタメン21試合で16年はスタメン12試合にとどまっていますので、出場時間で言えばかなりの減少となっています。



 アグレッシブなプレーが出来る選手で、運動量豊富で守備能力も高い。
 長谷部監督が就任して出場機会が増えたのも、怪我人が多かったこともあったのでしょうが、守備力を期待されてのことではないかと思います。
 特にエウトンと船山はファーストディフェンスに行けず、そこから全体が押し込まれてしまう課題がありました。


 吉田は高さもまずまずあって、足元の技術も計算できる。
 前方への飛び出しも期待できる選手でしょう。
 基本的には守備面で計算できるFWといった印象ですが、オールマイティなFWでもあると思います。



 ただ、何でもできる前線の選手ではありますが、強みには欠けるところがある。
 8月の熊本戦でも守備では健闘していたものの、相手ゴール前で強さを発揮できなかったため、結局攻撃が作れなくなり守備機会が増えてしまった。
 それもあって、そこからまたスタメン機会が遠のいてしまったのだと思います。


 高さもあるもののエウトンのような圧倒的な強さはないし、船山のような鋭い飛び出しがあるわけでもない。
 SHの方が足元の技術は活かせるようにも思いますが、井出のようなキレのあるドリブルがあるわけではないし、町田のようにゲームを作れるわけではない。
 攻撃的な選手としては、どこかもう1つ物足りなさが残ってしまうところがあるように思います。



 昨年も言いましたが、巻の凄さを改めて感じるのはそのあたりではないでしょうか。
 高さはあるけど動けないFWというのは多いでしょうし、守備は出来るけれどそれ以外に強みのない選手もいるでしょう。
 巻の凄さは守備だけではなく、運動量豊富で前にも飛び出せる上に、ヘディングにおいても強さがあるということ。


 2つ、3つの武器があるところが巻の優れたところであり、ジーコ監督、オシム監督、岡田監督と3人の代表監督に招聘された所以だと思います。
 吉田も巻に憧れていたそうですし、背番号18を付けています。
 昨年U-18で背番号18をつけていた古川も18を意識していたと話していましたし、こういった形で巻という選手が受け継がれることはとても嬉しいことだと思います。
 ただ、アグレッシブな守備というだけでは難しいところがあると思うので、それ以外の強みを作っていくことが吉田の大きな課題なのかもしれませんね。



 続いて、川崎から加入した船山について。
 昨年のジェフでは、リーグ戦42試合全試合に出場した唯一の選手ということになります。
 攻撃陣を引っ張る存在だったと思います。


 スピードある裏への飛び出しが印象的で、足元の技術も高い。
 ただスピードがある、テクニックがあるというだけではなく、状況を見極めて相手との駆け引きで上回って相手の裏を突くことが出来る。
 個人技で相手の守備を"破壊"することのできるアタッカーで、攻撃のアクセントになっていたと思います。



 実際、4月29日の水戸戦では初めてスタメンを外れましたが、それによってチームは攻撃を作れなくなってしまった。
 船山が途中投入されてからようやく改善されていきましたが、それだけチームが船山のチャンスメイクに頼っていたことが露呈した試合だった思います。
 選手がいなくなってわかるというのは珍しくないことだと思いますが、その典型だったように思います。


 ただ、チャンスは作れるものの、決定力には大きな課題が残る選手でもあります。
 昨年も42試合に出場し、5ゴールのみ。
 Football LABによるデータから計算した決定力も、20点満点中「1」に終わっています。



 また、守備においても課題のある選手だったと思います。
 ファーストディフェンスがはまっており守備範囲が限定されている状況であれば、しっかり貢献できる選手ではあると思います。
 しかし、自ら守備のキッカケを作れるようなタイプではなく、守備では同様の課題を持つエウトンと2トップを組ませるとプレスをはめきれなくなるところがありました。


 決定力の問題もあってか、5月からはSHでのプレーが増えていきました。
 CFには町田が入り、プレスも一時的に改善されて行きます。
 しかし、その効果も短期的で監督交代となり、長谷部監督になってからは再びCFに戻りました。



 結果的に長谷部監督も攻撃の中心に船山を選んだわけですが、これが長谷部監督にとって一番の失敗だったのかなと思わなくもありません。
 船山とエウトンの2トップにしたことによって、前からのプレスが効かづラインも上げづらい状況だった。
 そして、決定力不足にも最後まで悩まされました。


 ただ、短期間でのノルマを課されたことを考えれば、仕方のない判断だったのかもしれません。
 早期に攻撃を作るためには船山に頼らざるを得ず、CF起用もより高い位置で船山の打開力を活かしたいという発想だったのではないかと思います。
 また、怪我人なども多く他に有力なSHがいないこともあって、町田をSHに回さざるを得なかったという理由も考えられるでしょう。
 中盤以下の守備の改善は必須な状況でしたし、攻守に期待できるSHが少なかったため町田を2列目で起用したのかもしれません。



 船山はタイプとしては、柳沢敦にも近いところがあるのかもしれませんね。
 柳沢の方が守備は計算できただろうし周りを活かすタイプで、船山の方が個人の打開でチャンスを作るタイプではあると思いますが。
 どちらもチャンスメイクまでは素晴らしく決定力には欠けるところがあるため、起用法としては悩ましいところがあると思います。


 船山に決定力の問題がでてしまったのは、チャンスメイクも含めて多くのタスクを求めすぎたという点もあったのかもしれません。
 松本時代はよりシュートだけに専念できていた印象もありますし、昨年一気に得点が増えた町田もゴール前の飛び出しに専念したことで波に乗れた部分があるのではないかと思います。
 相模原戦後の船山のコメントによると、今年も「監督からは得点からチャンスメイクまで全部を求められています」とのことですが…。



 今年のプレシーズンマッチでも、ここまで決定機を外し続けている船山。 
 チャンスを作りつつ、ゴールも決められるようになるのか。
 それとも他の選手が船山を越えて、得点面でも貢献できるようになるのか。
 その場合は、いったい誰がどのようにチャンスを作るのか…。


 清武や熊谷、サリーナスといった選手たちが加入しましたが、これまでの印象だとやはり仕掛けのキレやプレーの安定感という点においては、今年も船山が1つ抜けているのではないかと思います。
 エスナイデル監督も緻密な攻撃を作るタイプではないように思いますし、そうなってくると船山の打開力が今年も重要視されるのかもしれません。
 となれば、やはり一番は本人への負担は大きいものの、船山がチャンスを作ってゴールも決めてもらう形ということになるのでしょうか。