例年J2は下馬評を覆して上位に食い込んでくるところが1チームはいる印象ですが、今年は今のところ山口がそのチームに当たりそうですね。
明日ジェフはホーム・フクアリで、現在2位の山口と対戦します。
山口は今年から霜田監督が指揮を執っていますが、監督としての経験は少ないだけに、ここまでうまく行くとは予想していませんでした。
霜田監督は2007年にジェフのトップコーチに就任し、翌年にはヘッドコーチとなりましたが、クゼ監督の解任もあってシーズン中にリザーブズのコーチに移っています。
コーチというのは評価の難しいポジションですが、ジェフではそこまで目立たない印象でした。
先日公開されたスポナビのインタビューでは影響を受けた監督の話になり、オシム監督やアマル監督の名前も出ています。
ただ、オシム監督とは一緒になった時期はなかったように思うのですが…。
それでも、お二人の名前を出してくれたのは嬉しいことですね。
その後、FC東京時代に繋がりの深かった当時の原技術委員長に声をかけられ、JFAの技術委員としてザッケローニ監督、アギーレ監督、ハリルホジッチ監督をサポート。
一方、原技術委員長はアギーレ監督を招聘したところで、技術委員長を退任。
2016年には会長選挙に出馬します。
原氏は技術委員長時代にリーダーシップを持って協会を引っ張り、協会内では珍しくメディアやサポーター対応にも長けた方だったと思います。
一方で同時に出馬した現田嶋会長では古河派閥に戻ってしまうし、会長というより裏方なイメージが強かった。
それだけに個人的には原会長となって、協会を変えてほしいと思っていたのですが、結果は田嶋会長の勝利。
さらに、今年の3月には田嶋会長が単独選挙で再選。
単独出馬だったことも非常に残念ですが、FIFAに命じられてスタートしたはずの選挙制度も見直すという話をしています。
どういった方向に見直すかにもよりますが、また密室の中で会長が決まっていく可能性もあるかもしれません。
結局、選挙に負けた原氏はJFAで2階級降格が言い渡され、協会を去ってJリーグへ。
原氏の後を受けた霜田氏も技術委員長を降ろされて、2016年末に協会を後にし、2017年にベルギーのシント=トロイデンVVコーチに就任した後に、今年から山口の監督に。
そして、原氏・霜田氏のバックアップを失ったハリルホジッチ監督は、今年解任となってしまいました。
こう考えて行けばハリルホジッチ監督の解任も、決してその前までに火種がなかったわけではないと思います。
しかし、2度の会長選挙も選挙制度見直しも、世間の大きな話題にならなかった印象です。
それだけに今回、ハリルホジッチ監督解任になって、会長選などの話を今さら掘り返すのは、正直遅すぎるといった印象です。
もちろんとはいえ、まさかこのタイミングで監督を代えるとは思ってもいませんでしたが。
…と、だいぶ話が逸れてしまいましたが、山口は霜田監督になってここまでは見事な成績を収めています。
その山口を牽引している選手の一人が、オナイウでしょう。
ここまでJ2得点ランキングトップで、すでに10ゴールも上げています。
2016年までジェフでプレーしていたオナイウですが、そこから大きく成長を遂げている印象です。
まず単純に体つきが逞しくなり、フィジカルコンタクトが強くなった。
ジェフ時代にもバネはあって跳躍力の高さなどは見られましたが、体はまだ細く球際では苦戦する部分も見られました。
また、プレーの継続性が感じられるようになりました。
ジェフの頃はチェイスに行っても途中で止まることが多かったですが、今年はしっかりと寄せに行くだけでなく、2度追い3度追いも見られるようになりました。
攻撃時にも局面で粘れるようになって、リーチの長さを活かせるようになった印象です。
一番変わったのは、自信をつけたことなのかもしれません。
浦和では出番に恵まれなかったものの、浦和からJ2にレンタル移籍したということもあってか、意識が大きく変わったように思います。
積極的にゴールを狙い、ボールに向かっていく姿勢も高まり、顔つきや表情も大きく変わったように思います。
なお、山口には鳥栖を契約満了となり、なかなか所属クラブが決まらなかった藤嶋が正GKとして君臨し、前節もファインセーブを見せています。
今年のJ2は岡本、山本海人、辻、高木など、ジェフでプレーしたGKの活躍が目立っていますね。
GKに限らずJ2の各チームで元ジェフ選手が活躍しているわけで、ジェフはそれだけ選手の入れ替えが多いクラブとなっていると言えるのでしょう…。
開幕戦から第4節までアンカーとしてレギュラーでプレーしていた佐藤健太郎も所属していますが、左外側半月板断裂の大怪我を負い現在離脱中。
また、左SBでポジションを獲得した鳥養や福元なども所属。
ジェフからレンタル中の高橋壱晟もここまで7試合に出場していますが、契約上ジェフ戦は出場できません。
霜田監督率いる山口は非常に若く、アグレッシブなサッカーをしている印象です。
4-1-2-3で前から積極的にプレスをかけ、球際に激しく潰しに行く。
1ボランチの横を取られかける場面も見受けられますが、インサイドがプレスバックしてボールに密集していくスタイルだと思います。
攻撃面でもポストプレーを使う場面があるものの、基本的には縦に速い展開が多いイメージです。
特に印象的なのが、DFや中盤後方からの浮き球のパスが多いこと。
そこからオナイウの頭を狙ったり、右ウイングの小野瀬が裏に飛び出すパターンが攻撃の形と言えるのではないでしょうか。
浮き球のボールに対して前線のボールの受け方もうまく相手の背後を取ったり、オナイウの裏をウイングが走ったりとチームとしての明確な狙いを感じます。
ボールを出す側もただロングボールを蹴り込むのではなく、ピンポイントで受けやすいところを狙って蹴っているように思います。
受け手と出し手のタイミングも含めて、練習からこだわってやっているのではないでしょうか。
また、山口の特徴として感じるのは、フィジカルコンディションの良さだと思います。
攻守において選手が激しく潰しに行って、運動量豊富に走ることが出来ている。
それだけにこのスタイルがどこまで持つのか気になってはいますが、今のところ大きな問題なくやれているようです。
ただ、そろそろ周囲のチームも、山口対策を取ってきているのではないでしょうか。
守備では前からプレスに行き、攻撃では縦に速い展開を狙ってくる。
それだけに引いて守られた時に、どう戦うのかが今後の課題となるのかもしれません。
実際、前節は最下位の讃岐と対戦しましたが、相手の山口対策に苦しんだところがあった印象です。
讃岐は守備では素早く戻って山口が狙う裏のスペースを消し、攻撃では後方で繋がず縦に素早く持ち込むことで、山口のプレスを回避していった。
結果的に1-0で山口が勝利しましたが、1つの対策方法は示せた試合だったようにも感じました。
しかし、ジェフは基本的にそういった対策は取らないのでしょう。
特にホームでのジェフは前への意識が高いですし、プレスの掛け合いからの主導権の握り合い。
あるいは、殴り合いになる可能性もあるのでしょうか。
ただ、山口は後方からもロングパスで裏を狙ってくるわけですから、ジェフとしてはスペースを消すのか、前から捕まえていくのか、はっきりさせなければいけないと思います。
熊本戦のように長時間押し込めればカウンターも受けにくい状況となるでしょうが、そうでなければ守備を問われる試合となるのかもしれません。
しかし、山口は総得点30でジェフを上回る得点力を見せていますが、一方で失点数も23とそれなりに多いので、守備面には弱さもある印象です。
ジェフはここ2試合4-3-1-2で戦い1勝1分となっていますが、選手たちもコメントからするとまだ課題があると見ているのではないでしょうか。
このシステムが山口に通用するのかは正直不安な部分もありますが、やりきることが重要と考えることもできるのかも知れません。
まだシステムが変わる可能性もあるのかも知れませんが、上位との対決ということで出せるものは出し切って良い試合をしてほしいところではないかと思います。