京都のハーフスペースを使ったチャンスメイク

 開幕戦での京都は昨年からの流れを残して、5レーンを使った攻撃を実施していた印象でした。
 ただ、その使い方に関しては、昨年とは若干異なる部分もあったのではないかと思います。

 5レーンとはピッチを横に5分割した考え方で、その中でもハーフスペースの使い方がポイントとなります。
 ハーフスペースとはピッチを5分割した、外と中の中間エリア。
 昔からサイドの選手に対して外から追い越す動きをオーバーラップ、中から追い越す動きをインナーラップといわれていましたし、岡田監督も第2次代表時代にペナルティ脇を狙うという話をしていました。

 考え方によっては以前からあった発想ですが、よりそれを明確にした発想といえるのではないでしょうか。
 あるいは、アタッキングサードミドルサードなど局面だけでなく、ピッチ全体で5つのレーンを使うという発想が新しかったのかもしれません。
 ちなみに、ゲリアもハーフスペースを使って、前に侵入していく動きが意外と多い選手ですね。


 その5レーンを使った京都の攻撃。
 山口戦で見られたのが、55分のシーンでした。

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 白い三角で表したところで、庄司からボールを受けた金久保がダイレクトパス。
 このパスの判断と質も良く、ハーフスペースの前方で宮吉が前に飛び出します。
 宮吉がクロスを上げ、ウタカが合わせてゴールを決めたかと思いきや、ウタカは相手より半身前に出ていてオフサイドの判定でした。

 この図の前に、金久保が外でボールを受けたのですが、そこから中に入っていって庄司にパス。
 その間に黒木が外に出ていったことで、相手の左SB武岡が外につられてしまいます。
 これがオレンジの四角で表示したところで、これによって紫の四角で表示したハーフスペースが空き、宮吉がフリーで前に飛び出すことが出来ました。


 金久保と黒木の動きのように、レーンを入れ替えて流動的に動く展開が、昨年の京都が見せた攻撃の特徴だったと思います。
 さらに宮吉がハーフスペースを縦に動き出していますが、これも昨年の特徴の1つでしょう。
 単純にハーフスペースでボールを受けるだけではなく、選手がアップダウンすることによって、あるいは選手が出入りすることによって、相手守備陣が混乱していった。

 しかし、上記のシーンではうまくハーフスペースを使っていきましたが、開幕戦ではそれ以外でうまく使えた回数が少なかった。
 確かにサイドのサポートのためにハーフスペースに選手が位置取ることは多かったですが、流動的な動きはあまり見られなかったしアップダウンもなかったように思います。
 さらにウタカとの関係に関しても、あくまでも常識的な1トップ2シャドーに近い形で、ウタカが落としてシャドーが拾うという動きがメインだったと思います


 図の攻撃以外では、前著したようなピッチ全体で5レーンを使う意識よりも、局面局面での使用にとどまっていた印象を受けました。
 見方によっては、よりオーソドックスなサッカーになったとも言えるのかもしれません。
 実際、このシーンでのチャンスメイクは、昨年から在籍していた金久保、黒木、庄司、宮吉によるもので、昨年の感覚も残っていて生まれた攻撃なのかもしれない。

 もちろん5レーンをうまく使えば勝てるという保証はないし、あえてそこにこだわりすぎるのではなく、よりシンプルなサッカーを目指すという考え方も十分にあり得るでしょう。
 サッカーに関してもパスワークというよりも、積極的にウタカにボールを当てることによって、よりゴールに近い選択肢を狙うという発想にシフトしようということでしょうか。
 ただ、個人的な感想で言えば、5レーンでのパスサッカーにも色気を残しつつ、ウタカという兵器も組み込もうとしている結果、今のところは中途半端になりかねないように感じなくもありません。

 うまく両方のエッセンスが融合すれば良い形になるのかもしれませんが、そうは都合良くいかないのがサッカーの難しさ。
 基本的にはきっぱりとやりたいサッカーに専念するという方が、選手も迷いなくうまくいくケースが多いと思います。
 とはいえ、単純にウタカなどは個人能力が高いし、中盤にもいい選手はいるわけですから、今後どう展開していくのかはわからないですね。