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2022年のジェフを振り返る前編「修正力は見せるも停滞感を感じた1年」

 オフに入り2022年のジェフを振り返るというテーマで、今年もやっていきたいと思います。
 ただ、今年は尹監督最終年となったため、尹監督体制での総括的な話になります。

■引き出しもなくなり停滞感を感じた3年目

 2021年末を13試合連続無敗で終え、今年こそはと期待の高まったジェフ。
 しかし、開幕戦から出鼻をくじかれます。
 J2に昇格したばかりの岩手相手に0‐1に敗戦し、クラブが掲げていたスタートダッシュに失敗。

 しかも、内容面も完敗で、開幕戦からジェフ対策が浮き彫りになってしまいました。
 ジェフは攻撃に課題があるので、ジェフにボールを持たせてスペースを消す。
 その上でロングボールで攻めることでハイプレスを回避し、押し込まれない状況を作る。


 昨年終盤のジェフはハイプレスとポゼッションで相手を押し込み好成績を収めていたわけですが、それを見事に封じられてしまったことになります。
 すると第2節琉球戦はロングボール中心の攻撃となり、第3節山形戦からはコロナ陽性者と怪我人が多数出たこともあってか、プレスを緩めていきました。
 それでも選手が復帰した第7節新潟戦からは、再びハイプレスをかけていきます。

 しかし、新潟戦こそ1‐0で勝利するも、翌戦からは相手を押し込んでも遅攻の質に苦しみ4試合勝ち星なし。
 4月末からは気温が上がった影響もあってかハイプレスが持たなくなり、GW連戦は引いて守る展開に変更。
 戦い方を変えても第13節大分戦に0‐3、第14節徳島戦に0‐1と2連敗を喫してしまいます。


 ここまでの展開で、2022年は既にかなり期待薄な状況に陥っていたと言えるでしょう。
 コロナ禍の影響もあったとはいえ、選手が戻っても昨年のハイプレス&ポゼッションでは結果が出せず、早々に諦めてしまった。
 尹監督体制で最も結果を残したスタイルを持続・発展できなかったことは、致命的な事態だったと思います。

 やはり尹監督は本来ハイプレスではなく、引いて守るスタイルを好む監督だったのではないかと思います。
 就任から1年半は引いて守る形がメインでしたが、結果が出なかったことを理由に、ハイプレスにシフトしたのではないかと。
 昨年末には鈴木GMがぶつかりながら監督と議論したと話していますし、GMなどのアドバイスもあって路線を変更したのではないでしょうか。

jefunited.co.jp

 そこから無敗記録を達成したわけで路線変更は成功だったわけですが、尹監督の中で現実と理想のギャップも生まれて、そのスタイルをモノにするまでには至らなかったのかもしれません。
 今年も尹監督は困ったら引いて守るスタイルに戻すことが多く、それがチームのベースとなっていた。
 しかし、引いて守って「堅守」は作れても「速攻」は作れない大きな課題があっただけに、そのベースがひ弱だったことが根本的な問題だったように思います。


 今季は序盤戦以降も、ハイプレスとリトリートを使い分けて戦ってきました。
 頻繁に戦い方を変える方法は過去2年も同様でしたが、今年異なるのは新たなスタイルが生まれなかったこと。
 昨年まではターンオーバーやサイド寄せのパスワーク、3バックへのシフト、ハイプレスの実施など、使い分けの中でも新たな手法を見せてきました。

 しかし、今季は昨年まで実施してきた手法をなぞってきただけで、大きな変化や可能性は感じなかった。
 強いて言えば、6月上旬に鈴木大輔が負傷して急遽実施した3ラインの4‐4‐2ですが、それも結果が残せず直に止めています。
 尹監督は戦法を変えることによって、相手や味方の目先を変えて戦ってきたわけですが、3年間経つとさすがに引き出しもなくなり、結果的に停滞感を感じる1年となってしまった印象です。

■修正力を見せ3年間を戦い抜く

 上位には食い込めなかった尹監督体制ですが、「修正力」は高かったのではないかと思います。
 1年目もコロナ禍の影響で過密日程となりましたが、明確なターンオーバーで対応。
 昨年も1勝2分3敗と苦しいスタートでしたが3バックに変更して立て直し、夏場に再び低迷するとハイプレスを実施。

 今年も序盤に多数の離脱者が出たところ、相手対策を徹底する戦い方で対応。
 そして、記憶にも新しい今季終盤はモチベーション問題も出ていましたが、前半は耐えて後半から攻めへ転じる戦い方に修正。
 最後は2連勝で締めくくっています。


 こういった「修正力」があったからこそ、何とかジェフで3年間持ったとも言えるのではないでしょうか。
 そうでなければ、ガタっと崩れてしまいそうな状況が何度かあったと思います。
 フロントも解任を迷う時期が何度かあったのではないかと思いますが、ここまで良く耐えた方ではないかと思います。

 2連勝で終えたため忘れがちですが、その前の秋田戦は0‐3で無気力試合のような内容でしたし、そこまでの数戦も内容は酷かった。
 そこでも我慢したことで、結果的にジェフで途中交代を行わなかった体制は、2012年の木山監督以来ということになります。
 小林コーチを昇格させて来季の準備を始める選択も考えられたと思いますが、その方法はうまくいかないことも多いですし、尹監督を尊重して最後まで任せたのかもしれません。


 尹監督に話を戻すと、劣勢になると戦い方を変更して持ち直してきたことになりますが、戦い方を頻繁に変更するということは、1つのスタイルを突き詰めきれないということにもなる。
 そのスタイルで起こる課題を解決するのではなく、スタイルそのものを変えて対応するので、少し時間が経つとまた別の課題に直面してしまう。
 相手のジェフ対策にもスタイルを変えることで対応していきましたが、同様の限界が見えていたところがあります。

 結局のところ、尹監督はマイナス状態になったチームをゼロに戻すことは得意でしたが、ゼロからプラスを生み出すのは苦手な監督だったのかもしれません。
 だから、松本育夫監督がベースを築き上げていた鳥栖や、代表クラスの選手が多数在籍したC大阪ではうまくいっていた部分があったのではないでしょうか。
 こういったタイプの監督は状況が整ったチームにおいて、短期間で結果を残すのは得意だと思うのですが、そうではない場合は苦労してしまう傾向にあると思います。