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小林慶行監督が理想とするプレーモデルを持つ見木友哉の東京V移籍

 見木の東京Vへの完全移籍が発表になりました。
 最近スポーツ紙の国内移籍報道は、飛ばし記事も少なく朝刊で移籍を報じられると、その日のうちに正式発表ということが多いので、余韻も何もないですね。
 やきもきする時間が短いので精神的には楽とも言えるかもしれませんが、突然来るのはびっくりしますね。

jefunited.co.jp

 ジェフの移籍関連が動く前に今オフの補強ポイントに関する動画もアップしたかったのですが、1日間に合いませんでした。
 こちらもよろしくお願いします。

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 話を戻すと、見木は関東学院大卒で、2019年にジェフに特別指定選手として加入すると、9試合のみの出場ではありますが、ゴールに絡む活躍を見せます。
 小森もそうでしたが、即戦力になる大卒選手は特別指定の頃から、可能性を見せてくれますね。

 尹監督が就任したプロ入り1年目の2020年は途中出場が多かったですが、大卒新人ながら33試合に出場。
 シーズン前半はボランチでのプレーが多く、中朝距離のパスから攻撃を作っていきましたが、サイズに不安があったこともあって、シーズン後半から2列目でのプレーが増えていきます。
 この時期を知らない人は今季のボランチ起用が意外だったようですが、結果的に今年はポジションが戻ったとも言えます。


 そして、ブレイクしたのが2年目の2021年。
 シーズン序盤は左SHでしたが、システムが変わったこともあってシャドーにポジションを上げると、14ゴールとチームの得点王となります。
 運動量も豊富でプレスでも大きく貢献し、攻守において活躍しました。

 この年のジェフはソロモンを1トップに置くことが多く、その背後で見木がうまくゴール前へ飛び出して、ゴールを決めるというパターンが多かったと思います。
 全42試合に出場を果たし、体力的にもタフな選手であることを見せてくれました。
 この年はチームも8位と、まずまずの成績を収めています。


 しかし、翌年チームが低迷すると、見木も失速していきます。
 この年も40試合に出場しますが、ゴール数は7と前年の半分に。
 ポジションは変わらずシャドーでしたが、プレー内容も目立つことが少ない1年でした。

 これは、2021年のシーズン終了後にも書いたのですが。

yukkuriikou.hatenablog.com

少し気になるのは、何度かシーズン後半に話しましたが、チームの流れなどが悪いと見木自身も消えてしまう試合が多いこと。
守備やラストプレーに絡むことは多かったですが、ビルドアップなどに関わることは少ない。
そこが評価が上がり切らなかった要因の1つなのかなとも思います。

 見木はゴール前に飛び出す動きは得意ですが、高い位置でビルドアップに関わる動きは意外と苦手な選手。
 だから、チームが良い状況でフィニッシャーに専念できれば良いのですが、2022年のようにチームが低迷してしまうと、自分からは攻撃が活性化できない傾向がありました。


 これは2023年にも同様の課題を感じ、シーズン前半は左SHやFWで起用されたものの、うまくパスワークに絡めずバックパスが目立って苦戦した印象があります。
 見木が活躍し始めたのはボランチにポジションを移してからで、低い位置からなら前も向きやすく、相手の守備も緩いのでパスを散らすことが出来る。
 さらに、前へ侵入する動きはうまい選手ですから、ボランチの位置からインサイドへ、そしてポケットへという動きを見せて活躍していきました。

 ただ、2021年のイメージが残っているためか、強引にミドルシュートを放って、攻撃を切ってしまう癖は最後まで治らなかった。
 先ほど話したように見木は決してミドルシュートがうまくゴールを量産したわけではないはずですが、二桁得点をもう一度達成したいという意欲や責任感が空回りしていたのではないでしょうか。
 さらに、プレーオフなどでも失点の流れに絡んでしまいましたが、ボランチとしては守備面に物足りなさがあったのではないかと思います。

 それでも、小林監督は1年を通して見木の起用にこだわっていた印象で、今年も41試合に出場しました。
 見木にこだわったのは見木のプレーが、小林監督の理想とする"プレーモデル"に近い選手だったからではないかと思います。
 運動量豊富で、スタミナもあり、前へ激しくプレスにいけて、足元の技術もあって、スペースのあるカウンター時には決定的なプレーも出来る。

 小林監督は球際での激しさを重要していましたし、ハイプレスからのショートカウンターと相手を引き付けるビルドアップを併せたスタイルではありましたが、どちらかといえばハイプレス重視だったと思えます。
 その中で90分間タフに走り続けて前への勢いがある見木は、小林監督にとって理想的なタイプの選手と言えたのかもしれません。
 要するに「どこのポジションの選手」という具体的な評価よりは、見木のプレースタイルに惹かれて、どこでもいいから起用したい選手だったのではないかと思います。


 だから、多くの選手を入れ替えながらも見木は起用し続けたにもかかわらず、起用ポジションに関しては左SH、FW、ボランチと固定化せず、入れ替わり続けたのではないかと思います。
 正直、シーズン途中まではSHやFWなどのタスクをこなしきれず、一度スタメンを外してもいいのではないかとも思っていました。
 実際、風間などは同ポジションでもうまく間で受けて、小林監督の狙うパスサッカーに適した動きが出来ていた一方、見木は間で受ける動きに関しては苦労していた印象ですが、それでも使い続けていきました。

 たぶん見木は見た目よりも、不器用なタイプではないかと思います。
 走れて足元の技術もある選手なので、いろんなポジションでプレーできる選手ではありますが、臨機応変にプレーを変えられるわけではない。
 以下の通り、アシスト数も2020年に3アシスト、2021年に5アシスト、2022年に3アシスト、今年も3アシストと決して多くはないですし、攻撃の変化を作れる司令塔タイプでもない。 

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 ただ、それでも小林監督の目指すサッカー像には適したタイプの選手だったと思うだけに、今回の移籍は小林監督にとって非常に残念なところがあるかもしれませんね。

 移籍先はプレーオフでジェフを下してJ1に昇格した東京Vということで、ますます歯がゆい気持ちもあります。
 もっと上のクラブならまだ納得できたかもしれませんが、より上のクラブへの移籍だったら数年前から声がかかっていたようにも思います。
 ジェフで2019年に特別指定としてプレーした時に指揮していていたのが江尻監督でしたから、その関係と言うのも大きいのでしょう。


 守備も計算できて技術もあるので、東京Vのサッカーにも合うタイプなのかもしれませんが、どこで起用になるのかは悩むところですね。
 上記の通り前線だとプレス要員として以外では意外と計算しにくいところもあるし、SHにしてはクロスの精度がそこまで高い選手ではない。
 かといって、ボランチは森田が軸となるでしょうから、さすがに見木とのコンビではサイズが小さすぎるように思います。

 ジェフとしてももちろんマイナスは大きいですが、今季チームの主軸はあくまでも田口と鈴木大輔だったと思いますし、2人がしっかりしていれば大崩れはしないのではないかとも思います。
 こうなるとますます気になるのは熊谷で、見木が出場停止となった8月の徳島戦では途中出場から見木役を果たし、まずまずのプレーを見せていました。
 熊谷が万全なら見木にはない高さや強さもプラスできるはずですが、怪我などがあったのかそれ以来試合に出ていません。


 ジェフや小林監督としては、あまり引きずらないことが大事なのではないかと思います。
 同ポジションを補強することになるのかもしれませんが、見木と全く同じ動きを期待するのではなく、新しい8番として迎えるべきではないかと。
 ジェフとしてもある程度選手を入れ替えて活性化する必要はあったはずですし、切り替えることが大事ですね。

 見木はどちらかと言えば、不器用だったり少しずつどこかが足りない印象もあったことで、愛されたタイプではないかと思います。
 チームの全権をコントロールしたり、完璧な王様のように引っ張ってきたわけではないですし、見木としてもチームを変えることで、もう一皮向けなければいけない時期に来ていたのかもしれません。
 寂しくはなりますが、J1という荒波に揉まれてさらに成長できるよう頑張ってほしいと思います。