昨日まではチーム全体の感想を述べましたが、今日は小林監督について取り上げていきたいと思います。
シーズン中からずっと考えていたテーマです。
まず、鈴木GMによる小林監督の抜擢は大成功でしたね。
鈴木GMはまずコーチとして小林監督を招聘し、ジェフでの経験を積ませた上で昇格させたということで、念入りに小林監督体制の準備をしていたと思います。
準備は万端だったとはいえ、新人監督の目利きが成功したということは、GMとして十分すぎる成果だと言えるでしょう。
クラブとしてもベテラン監督を招聘して失敗し続けていただけに、若い監督に期待していい時期ではないかと思っていました。
単純にもう実績のある監督候補は少ないし、近年の若手日本人指導者はしっかりと勉強されていて、新しいトレンドを取り入れてくれる期待もある。
実際、長谷部監督、松橋監督、四方田監督などの成功を横目で見てきただけに、ジェフも新人監督に賭けるという意味では良いタイミングだったと思います。
さらに、若手監督には"野心"も期待できる。
J2生活に定着しきってしまったジェフとしては、そういった"野心"に賭けたい状況もあったと思います。
経験豊富な監督が今さらJ2のジェフに就任しても、モチベーションを上げにくいのかなと感じることもありましたし、新しい風が必要だったのかもしれません。
そんな状況下で就任した小林監督ですが、就任直後には不安もありました。
経験不足は仕方がないにしても、コメントを読むと当たり障りがないというか、無難な内容が多かった。
一概にそれが悪いというわけではないのでしょうが、強いポリシーのようなものは感じにくいところがありました。
それはシーズンが始まっても変わらなかったし、選手などを貶すような発言は少ない一方で、ちょっと優し過ぎるのではないかという印象も。
チームを引っ張る立場にある以上は、強いリーダーシップを持って、時に激しく周りを鼓舞する必要があるのではないか。
その点で大丈夫なのかなとも感じていました。
新体制発表会でも、「当たり前のことを当たり前に」という話や「ベースを作る」という話がメインでした。
それらも当然大事なことではありますが、一般論とも言えるような内容で、監督としての特徴は見えてきませんでした。
具体的なサッカーを問われても「ピッチで表現したい」という解答に止まっており、失礼を承知で言えば監督としてはちょっと弱弱しさを感じてしまう部分もありました。
ただ、今の時代の監督に求められるのは、こういったタイプなのかもしれません。
ここ5年前後でパワハラ問題などが大きな話題となり、国内サッカーでも度々問題が発生しています。
監督が強い主張を持って過度に激しく指導すれば必死に頑張る選手もいるかもしれませんが、ドロップアウトする選手も多数出てくるでしょう。
それではチームやサッカー界にとってもマイナスですし、さまざまな時代背景もあって昔のようなスパルタな指導というのは適さないのかも知れません。
そんな中で現れたのが森保監督や長谷部監督、小林監督のような、優しい紳士な指導者タイプということなのかなと思います。
時に頼りなく見えることもあるかもしれませんが、その分サッカーや指導に関して非常に研究熱心で、勢いだけでチームをやりくりするのではなく、真面目に取り組むというのが大事なところなのかもしれません。
小林監督も公で戦術的な話をすることは少ないですが、ピッチ上で見ればチームの狙いがハッキリとしているし、こういったチームを作りたいんだという強い意志を感じられる監督でした。
厳しい言葉はかけないものの、目標や方向性などを明確に提示すること。
そして、選手と一緒になって、チームを築き上げていくこと。
これが新時代のリーダー像の1つなのかもしれませんし、これはサッカー界やスポーツ界のみならず、一般社会でも求められていくことなのかもしれません。
小林監督も一時は得点力不足に関して、「個のクオリティーが必要」という回答をして、一部のSNSで批判を受けていたこともありました。
チーム作りの問題を棚に上げて、選手に責任を押し付けるのかという類の批判だったと思います。
ただ、個々の能力の成長は、開幕時から課題としてあげていました。
そして、選手もそれは理解・納得していて、シーズン終盤には口々に同様の話をしていました。
最終節終了後にも福満が、以下のように話をしています。
試合後の監督からの話は?
「この結果を受け止めて、それぞれがまたレベルアップしないといけないという話でした。「それぞれが」という言葉がすべてだと思いますし、もっと個人個人がレベルを上げないといけない」
優しい印象を受ける小林監督ですが、話している内容は開幕当初から大きく変わっていません。
「一体感を持つこと」、「やるべきことをやり続けること」、「1対1のバトルに勝つこと」、「個のクオリティを高めること」、「前に出ていくこと」。
それらが本当にチームが成長する上で必要だと思っているからこそ、そのように述べているのでしょう。
優しさの中にも、強い意志を持って、一貫性を貫くこと。
これがインパクトのある言葉がなくても、選手に支持されるために必要な要素なのではないかと、今季1年を通して感じました。
来季も優しさの中に強い意志を持って、チーム全体を更なる成長に導いてくれることを期待したいと思います。