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2023年のジェフを振り返る後編 ハイプレスと遅攻のハイブリッドで猛攻へ

 日にちが空いてしまいましたが、前編に続いて。
 序盤の苦戦を経て、シーズン後半から巻き返していった2023のジェフ。
 主にシーズン序盤のハイプレスと、シーズン中頃のビルドアップが融合していき、結果を出せるようになっていったのではないかというのが個人的な感想です。


 この内容は以前Youtubeでもお話ししたので、ぜひご覧ください。

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 正直、シーズン中盤はハイプレスを諦めて遅攻メインとなり、それはそれで良いけれど当初のハイプレスは何だったの?と思うこともありました。
 ハイプレスへのチャレンジ期間は無駄だったのではないかとすら思ってしまっていたのですが、そこからハイプレスに再チャレンジをして結果を残していく、いわば伏線回収をしたわけですから凄いことをしたのではないかなと思います。

■シーズン後半に向けてチームが固まっていったジェフ

 前編でも話した通り、5月末からは3連敗を喫したジェフ。
 しかし、続く6月18日のいわき戦からは、再びプレスの勢いを少しずつ高めていき、成績を伸ばしていきます。

 また、3連敗も無駄ではなく、町田戦、水戸戦では日高の負傷もあって、左SBに松田が入りました。
 松田は左サイドから中に絞ってビルドアップに加勢し、右SB西久保は前でプレーする、それまでとは左右が逆の役割を果たしたことになります。
 これが参考になったのか、いわき戦から右SBに高橋が抜擢され、遅攻時もSBは極端に絞らない4バックでパスを回す形に変更し、よりワイドにボールを展開できるようになっていきます。


 さらに、続く大分戦では右SHに米倉、左SHに高木を起用。
 この頃から片方のSHは縦に仕掛け、片方のSHはゴール前に飛び込むという形が徐々に出来ていきました。
 米倉はその後、福満などとともに途中出場から活躍し、大事な切り札となっていきます。

 また、国立開催となった7月17日の清水戦では小林の負傷もあって、前線でプレーしていた見木がボランチ起用されます。
 ボランチでビルドアップに参加しつつ、左インサイドに上がっていく動きが効果的に出来るようになって、ようやく見木の立ち位置が確立されていきます。
 見木のボランチ起用が固まったことで、FWから右インサイドに降りてくる風間のポジションも固定化され、左右SHも含めて4レーンにアンカー田口がパスを散らすことで、風間の右サイドに偏りがちだった攻撃が左右中央どこからも攻め込めるようになっていきました。


 そして、ちょうど清水戦の翌日、今季ジェフのラストピースとも言えるドゥドゥの加入が発表に。
 ドゥドゥは左SHの位置からゴール前に飛び出す、左サイドタッチライン際で起点となり、ハーフスペースに日高や見木が侵入するという形で攻撃を活性化していきます。
 左右は逆ですがゴール前に侵入していく動きは米倉にも近い役割で、これによってサイドを縦に仕掛けられる右SH田中の価値も、結果的に高まっていったように思います。

 最終的に以下のような布陣に。
 シーズン中頃はダブルボランチで戦っていた時期もありましたが、最終的には中盤の逆三角形は開幕時と同じに。
 他のシステムは変わっていますが、中盤の形は変わらないところを見ると、そこは本来小林監督が拘りたいところなのかもしれませんね。

■明確な方向性とアグレッシブなスタイルとチーム全体の成長

 メンバーとタスクが確立されていったジェフですが、8月6日の徳島戦では引き分け、8月12日の山形戦でも敗戦となります。
 ここ2試合で勝ち星を拾えなかったこともあってか、続く藤枝戦ではシーズン当初のような激しいハイプレスを決行。

 90分持たず後半途中からガクッと失速してしまう課題もありましたが、これによってハイプレスからのカウンターと相手を引き付けての遅攻が融合されていきました。
 まずハイプレスで押し込んでおいて、そこからパスワークで相手を攻略する。
 ハーフスペースも使い、選手が動き回る流動的でスピード感のある攻撃は非常にアグレッシブで、見ていて面白いものでした。

 これが功を奏してジェフは7連勝と見事な成績を残しますが、10月8日の水戸戦を1‐1の引き分けに終えると、その後は若干チームが失速。
 プレスも連勝中ほどではなく裏を取られることも増え、相手のハイプレスに合うとビルドアップで苦戦する傾向も。
 決定力や守備での軽さなども見られ、プレーオフには進出するも初戦敗退となったことは記憶にも新しいですね。


 最後は課題も感じたチームではありましたが、1年間を通して見ると良いシーズンだったと思います。
 まず1つには、チーム全体としての方向性がはっきりとしていた上、個々の役割も明確になっていったこと。
 なんとなくサッカーをするのではなく、明確な意志を持ったチームというのは、近年のジェフでは珍しいことだと思います。

 強化部のシーズン中の補強も成功した印象で、特にドゥドゥはチームが固まってからの補強だったからこそ、ピタリとはまる選択が出来たと言えるでしょう。
 序盤のチームはシステムもタスクも流動的でしたし、あそこまで補強を待ったのは正解だったといるのではないでしょうか。
 逆に言えば夏までにチームが明確な形を作れたからこそ、ピンポイントな補強出来たとも言えるでしょうし、こうしてクラブとチームが信頼関係を築き上げていくというのが理想なのかもしれません。


 もう1つ成功と言える要因は、アグレッシブなスタイルを展開できたこと。
 やはりジェフはオシム監督時代を筆頭に、攻撃的なサッカーで成功してきた経験がある。
 さすがに古い記憶過ぎて今のジェフにはどうなのかなとも思っていたのですが、他の成功体験に乏しいということもあって、こういったサッカーの方が好かれるしフィットしている感覚があるように思います。

 さらに、大きな要因はチームとして、成長を感じられる1年だったということではないでしょうか。
 チームとしてもシステムやスタイルが徐々に固まっていき、やりたいサッカーを模索しながら進歩していった。
 個々の選手を見ても小森、田中、佐々木、高橋などがしっかりと伸びていったと思いましたし、こういった成長がチームに勢いを与えてくれたのではないでしょうか。


 ただ、来年はよりシビアな年になるでしょう。
 今年は新体制1年目ということで試行錯誤した部分は仕方がないとも捉えられるでしょうが、来年はそういった言い訳は許されない。
 序盤から成果が問われる年になるはずです。

 さらに小林監督は来年以降もアグレッシブなスタイルを続けることを明言していますが、それによって失点が増えたり成果が出ないようではプロの監督としての評価は伸びていかないかもしれない。
 オシム監督も最初は「走れ、走れ」と指導していましたが、徐々に「考えて走れ」と言うようになりました。
 夢を見るだけではなく現実も考えた戦い方が出来るようにならなければ、チームとしても指導者としても壁にぶつかってしまう可能性があると思います。

 チーム全体の成長という観点でも、小林監督初年度だったからこそ、伸びしろが大きかったのかもしれません。
 今年1年でチームが固まったことになると思いますが、そこからの成長はより難易度の高いものとなる可能性があるはずです。
 今年の選手が残留してくれればますます変化は期待しにくくなりますし、2年目の難しさを感じることもあるのではないでしょうか。


 それでもひとまず小林監督1年目は、素晴らしいシーズンだったことに間違いないと思います。
 小林監督を招聘した鈴木GMも含めて、良い仕事をしてくれたのではないでしょうか。
 特に迷走するジェフにおいては久々に明るく終えられたシーズンでしたし、2人とも方向性を明確に持ってクラブを導こうとしてくれていると思います。

 ぜひ来年はそれがしっかりと実となり、昇格という結果に結びついてほしいところです。
 まだまだクラブとしては忙しい時期だとは思いますが、ひとまずは1シーズンお疲れさまでした。