最近ではセルティックに移籍した水野、もっと前では松井がル・マンに移籍した際にも発生した育成補償金(別名トレーニング費用)。
いまだに日本では浸透していないようですが、列記としたFIFAルールです。
ボスマン判決で移籍が自由化し移籍金が発生しなくなったことに対し、若手選手の青田買いが危惧されたため、下部組織も含め在籍年数×金額で補償金の支払いを義務付けるというもの。
今年に入ってからサカマガかサカダイで、田辺代理人が軽く説明していたこともあったはずです。
今回問題になっているのはその金額ですね。
報知の記事によるとJリーグ側の設定では800万円×年数となっているようですが、選手協会側はFIFAルールに合わせて、4万ユーロを要求しているというもの。
ソースはこちらなどで。
しかし、水野の時に調べたのですが、実際にはこの金額、世界的に見ても結構あいまいなのではないでしょうか。
補償金に関しても、現地の記事では「支払われるかどうかはっきりしない」と言われていました。
(後に補償金は支払われたという報道が複数から明らかになっています。)
01年の古いテキストではあるのですが、少なくともこの時点では「補償金は各国サッカー協会が設定する」とのこと。
これがいまでも有効なのであれば、決して今回のJリーグの800万円は無茶な設定ではないということになります。
また、Numberの記事では。
6万ユーロという数字も出ています。
新ルール導入で不利益をこうむるクラブに対して、救済策がないわけではない。Jリーグの作業部会では現在、若手が移籍する場合、契約満了でも支払いが発生する「トレーニング補償」の詳細を詰めている。対象の年齢は23歳以下または21歳以下、金額はFIFAの規定に沿って4万ドルまたは6万ユーロの案で検討されている。これに在籍年数を掛け算し、支払い金額を設定するというわけだ。だがこれも、若手を引き抜かれるクラブからすれば焼け石に水程度の救済にしかならない。(Number)
6万ユーロを円換算すればちょうど800万円ですから、そこからこの数字が出てきたのでしょう。
この記事が真実なのであれば、800万円という設定はやはりそこまでおかしな金額ではないはずです。
…とかなんとか、頑張って調べていたのですが、日刊さんはばっさりと答えを出してくれました(笑)
ここでは国ごとというより地域ごとに補償金が違うという書かれ方をされていますけど、FIFAがそのような形でルールを決めるとは考えづらいんじゃないでしょうか。
トレーニング費用
FIFAが定めたもの。契約が満了した12〜21歳までの選手が移籍する場合に、新所属が前所属に支払うよう義務づけられた費用。選手育成費用の代償の意味合いがある。アジアの4カ国(日本、韓国、イラン、オーストラリア)に移籍する場合は所属年数1年につき約400万円、イングランドやスペイン、イタリアなどの欧州主要国へは約1200万円、欧州の中堅国へは約800万円と定められる。J側は800万円の提示も、JPFA側はFIFA規定の400万円を要求しているもよう。(日刊)
先ほどのサイトに「各国で定める」とも書いてありますし、各々で決めていったというのが正しいのではないかと。
もしも例え国際ルールとして、海外から日本に若手選手が移籍した場合に補償金が400万円であったとしても、その額に合わせるメリットもいまいちよくわかりません。
しっかりとした理由があるのであれば納得できますけど、「FIFA基準に沿っていないから反対」という理由だけならば理解できませんね。
なんだかFIFAルールをよく知らない層を味方につけるつもりなのか、FIFAルールという言葉ですべてを濁そうとしているような気すら感じてしまいます。
800万円に関してもあくまでも最大の金額であり、全額支払われるかどうかはチーム間の話し合い次第になっていくでしょうし、私はそれでいいんじゃないかと思うのですが。
なんでも「FIFA基準に沿う」という話しが出てきて、実際そこに合わせたほうがいい(というか合わせなければいけない)部分も出てきているのは確かだと思います。
しかし、最終的に身を守るのは自分自身。
ボスマン判決の“精神”にそって考えれば移籍金など発生しないはずですが、今でも違約金という形で莫大な額のお金が動いているわけですし、その違約金狙いで有望な若手選手には高い金額の契約などもされているわけで。
ブラジルなどはボスマン判決に沿って作られたFIFAルールでは代理人によるパスの保持は禁止されているはずなのに、いまだに代理人が選手のパスを持ち移籍の主導権を握っていたりしていますし、その土地、その土地で状況は大きく違うはずです。
実際問題として、どの若手選手がうまく育つかどうかなんて、わからないところがあります。
それはチーム側の問題もありますが、若手選手にも問題がある場合だって多いわけで。
そういった不確定な部分に対して、長期契約などの投資はビジネス的に考えにくい。
そして、なんとか育てたと思ったら安い値段で出ていかれてしまうというリスクがあるのであれば、育成は放棄した方が賢明なのかもしれません。
大卒の選手の方が「どう育つかわからない」という不安要素は少ないですし、若い選手よりそちらを取った方が安上がりで楽なのかもしれませんね。
ユースチームもあきらめて。
しかも、選手枠も25人になるという話しもあります。
チームとしては無駄な選手を取りたくはないでしょう。
今までC契約という枠があったから若手選手も保持していたところがあるはずですが、それがなくなるのであれば当然切られるのは若手選手ではないでしょうか。
実際、なぜだかジェフは他チームに先駆けて人数を一気に減らしましたけど、そこで放出された多くは若手選手でした。
残念ながら現時点では戦力になっていない選手も多かったから、それも当然のことだと思います。
個人的に気になるのは、ここ1年で解雇されそのまま入団先が決まらない無所属の選手が増えたこと。
移籍金もほとんど発生しないであろう選手達なのにもかかわらず、苦しい思いをしています。
そういった選手達もFIFAルールに従えば解決の糸口が見つかるのでしょうか?
選手側の主張ばかりを通そうとして逆にクラブへの負担が増え、“Jリーグ内での景気”が悪化し、ますますこういった選手たちが増えるのではないでしょうか。
選手協会側はFIFAルールに法ることで、移籍金を減らし、移籍をスムーズにしようと考えるいるようですが、実際にはこの不景気で移籍金も発生しないような選手たちが職を失っているわけです。
どうして、そちらの方には目を向けてあげないんですかね。
選手協会ってなんのためにあるんでしょう。
なんだか、裏で暗躍している人達がいるのではないかと、勘ぐってしまいます…。
移籍金が発生しなくとも、移籍すれば年俸は上がります。
そうすると儲かる人達がいるわけですけど…。
そして、そういった人達には、補償金の一部は入ってこないのでしょうしね。