千葉ダービーで後半から出場した下平が、柏に関して「ボールを奪ったらすぐに背後のスペースを使ってきた」とコメントしています。
相手が狙ってくるのはわかってはいたことだけど、対応できなかったとのこと。
ジェフのハイライン裏を狙われるのはいつものことではありますが、柏戦ではかなり裏を取られてしまいましたね。
そこは単純に、柏の選手のうまさもあると思います。
柏はCBの染谷や鎌田もボールを出せるし、前線の選手のボールの引き出し方も上手い。
だから、後方からの長いボール一本でもハイライン裏が取れて、そこから攻撃を作られてしまいました。
ジェフもプレスには行っていましたが、寄せが甘くチェックに行っていたとしても、繋がれる場面が目立っていました。
日本代表も参戦したコパ・アメリカを見ると、やはりJ2とはレベルが違って日本の選手がプレスに行っても「あれだけ寄せても、前を向かれてしまうの?」と感じるシーンがいくつかありました。
ジェフはJ2慣れしてしまった結果、甘い寄せでも相手がミスするから大丈夫…という状況になっていることが多い気がしますが、柏レベルではそれでは許されないということでしょう。
また、ジェフのハイプレス対策として、低い位置でDFがパスを回すチームが増えていますが、柏もそれをやってきた印象です。
低い位置で回すことでジェフのプレスを避ける、ジェフの選手を走らせて消耗させる。
そして、ジェフが前に出てきた背後の中盤を狙うことができて、そこから中盤でパスを繋がれる場面も多かったと思います。
一方の柏のボランチ大谷は、このように話しています。
大谷秀和選手
「(熊谷)アンドリューもわりと下がるけれど、そこに食いついて自分とヒシャの裏を使われるんじゃなくてそこを我慢しながらシャドーの選手のパスコースを消したりというのは徹底してできていたと思う」(柏公式サイト)
ジェフはどんな状況でも追いかけるのが基本なので、完全に出遅れていたとしてもシャドーなどが深い位置までプレスをかけに行ってしまう。
しかし、それによって結果的にスペースが出来て、パスを繋がれてしまうことがある。
さらに長い距離を追いかけ続けるので、毎試合シャドーが90分持たないという問題も起こっているのではないかと思います。
しかし、柏の大谷は熊谷などがDFに下がってボールを受けたとしても、「我慢」して追いかけなかった。
ジェフは後方でボールを持ってもそこから攻撃が作れないから熊谷が下がって触っても怖くないでしょうし、無理に追いかけないことでジェフのシャドーをフリーにさせずに守ることができていたということなのでしょう。
柏も球際に激しく前線の2トップから激しいプレスをかけていたと思うのですが、交代カードは後半ATに1枚切っただけだったことからも、効率の良い賢いプレスをかけれていたのではないかと思います。
一方のジェフは基本的にハイプレスをかけることが前提で、セットした守り方を作れていない。
だから、選手たちはすべての局面で、前に追いかけざるを得ない。
しかし、毎試合90分間プレスをはめるというのは現実的ではなく、そこから裏を取られることも多いというのが実際のところだと思います。
そして、実際にはどうなったのかというと。
鈴木椋大「クリスティアーノが前残りしたり、瀬川(祐輔)選手、江坂(任)選手が裏に抜けてくるから、そこでオフサイドを取るのか、ついていって対応するのかは話しながらやっていて、相手が裏に速いことは知っていたので、もちろん一番はそこに蹴らせないことが目的で、ボランチのところでつぶせればと思ってゲームに入りました。」(Jリーグ)
セットしてバランスよく相手の中盤を消す守備が出来ていないので、ボランチなどを潰しきれず「蹴らせて」しまう。
そして、ボランチなどを潰しきれないから、相手FWとジェフDFだけの勝負になってしまう。
しかし、DFだけで相手の攻撃を防ぐというのは、分が悪すぎる勝負だと思います。
一方の柏は個々の能力や個人判断だけでなく、しっかりとチームとしてジェフ対策をしてきた印象です。
柏は左SHに前節スタメンだったガブリエルではなく、走れて守備もできる菊池を起用。
図の通りその菊池が茶島が前に出たらついていき、5バックのように対応していきました。
これは茶島の攻撃力を警戒してというよりも、5バック気味に守ることによって、最終ラインのマークを明確にする狙いがあったのではないでしょうか。
ジェフはWBの2枚と1トップ2シャドーの合計5枚で攻めるような時間帯もあるため、それに4バック+1枚で対応することによって同数で対処する。
実際、堀米にボールが入ったときに左SBの古賀が激しく潰しに来ることがありましたが、菊池が外を見てくれるので不安なく古賀が前に出れたのでしょう。
ここまでもジェフは相手4バックの外をWBが走って、そこに大きく展開するパターンが見られたので、その対策ということにもなると思います。
為田に対してはシンプルに小池をマッチアップさせて、茶島には菊池が下がって対応する。
これを可能にしたのも、20歳の古賀が左SBもCBもこなせるポリバレントな選手であることが大きいと思います。
これによってもう1つの効果は、ターゲットとなるクレーベなどを潰すため柏CBの1人が前に出たとしても、後方に4枚が残るためその穴を埋められるということ。
要するにチャレンジ&カバーの関係が作りやすくなり、それによってCBはクレーベを躊躇なく潰しに行けることができる。
実際の試合でもロングボールを受けようとするクレーベが、相手CBに潰されることが多かったと思います。
一方でジェフはチャレンジ&カバーの関係が作れず、先ほども言ったように相手FWに対して対面のDFだけで対応しなければいけないことが多い。
また1失点目は新井がストッパー感覚で江坂を潰しに行って(コメント頂いて確認したところ新井ではなく熊谷でした。申し訳ありません)、瀬川をぽっかりと開けたところからやられてしまいました。
さらに2失点目のようにクリスティアーノがタメを作って、小池に走られることが多かったですが、クリスティアーノとマッチアップする乾に為田がうまくカバーできず、小池に裏を取られる場面が目立っていたと思います。
昨日も話した通り、就任当初の江尻監督は守備から入る丁寧なチーム作りをしていくのかなと思ったのですが、ハイプレス・ハイラインに戻ったこともあって逆方向に進みつつあるようにも思います。
細かなカバーの約束事やポジショニングなどでも、柏に上回られていたことになるのではないでしょうか。
個人能力の問題だけでは済まされない内容だったと思いますし、チームとしての熟成にも大きな差を感じた試合だったように思います。