福岡戦前半は良い形を見せた北九州のパスワークですが、後半は福岡の対策によって封じ込められた印象でした。
システムの変化も含めて、対処法を施した長谷部監督の手腕を感じ取れる展開となったようにも思います。
ジェフは開幕戦で琉球のパスワークに苦しんだ印象もあるので、参考になる部分もあるのではないでしょうか。
昨日も話したように、前半の北九州は主に左サイドから攻撃の形を作っていきました。
左SH新垣が中に絞ってハーフスペースを狙い、左SB新井を押し上げることによって、相手の守備が中へ行くのか、外に行くのか迷わせる。
さらにボランチ國分も左後方に下がってSH、SBと3人でトライアングルを作り、相手のSHとSBに対して3対2の数的優位を形成する。
これに足して4ー4ー2だった福岡は、後半から守備時に4-1-4-1へと変更しました。
前線の遠野とボランチの重廣がインサイドに周り、前がアンカーに。
これによって横を5枚で守ることができ、北九州の左サイドの攻撃やサイドチェンジに対応しやすくなりました。
相手のサイド攻撃に対してSHとSBだけでなく、インサイドもサイドの守備に加わることで、数的不利を作らせない状況が出来た。
さらに北九州がミドルサードより先にボールを運んだ時には、逆サイドのインサイドも下がって4-5-1で対応する。
これによって中盤全体がボールサイドに寄りやすくなり、穴なく守ることが出来るようになりました。
例えば70分過ぎのシーン。
ここでは、北九州が左サイドに人数をかけてきました。
それに対して福岡は、重廣に代わって入った右インサイド鈴木だけでなく、アンカーの前も外に出ていってカバーしている。
これが出来たのも左インサイド遠野が中盤まで下がって、中盤のスペースを消していたからだと思います。
また、4-5-1の効果は、サイドへの守備だけではありませんでした。
右インサイドに入った重廣あるいは鈴木、左インサイドに入った遠野あるいは城後が、積極的に前へとプレスをかける。
北九州は國分などが下がって3バックを形成し、そこから縦パスを出していました。
前半の北九州は2トップで3バックに対して数的不利でしたが、1トップと左右のインサイドがプレスに行くようになったことで、パスの出し手を封じるようになりました。
ファンマがあまり守備で貢献できないこともあって、インサイドの2人が上下動をすることでプレスを助けたとも言えるでしょう。
これは以前にも書いたように、走らないCFをサポートする形として有効な手立ての1つではないかと思います。
また、青い四角で表示したように、4×5でボックスを作ることによって、4×4以上に相手が間を取りにくくなった。
北九州は攻撃時に3-3-4に近い位置取りをするのに対して、4-3-3にも見えるシステムで、がっぷり四つで相手を見やすくなったとも言えるでしょう。
4-5-1のボックスから飛び出して、インサイドがプレスにいっていたことになります。
これを可能にしたのは、運動量豊富な重廣とハードマークできる鈴木の存在が大きかったのではないでしょうか。
さらに遠野と城後も頑張って走っていた上に、中盤の底では前がうまくスペースを消しつつ、粘り強い守備を披露していました。
開幕戦のジェフは、4-4-2ではプレスに行けず早い時間帯で5-4-1に変更。
横を5枚にしてサイドの守備の改善を図ったことは福岡にも似ていますが、そこから前へのプレスはいけなかった。
そこはやはり選手の問題も大きいし、やり方にも課題があったのかもしれません。
北九州の小林監督も試合後、こう話しています。
小林伸二監督「数的同数、もしくは(数的)有利なのにファーストDFが下がってしまうと、ドリブルで運ばれる。(福岡には)ドリブルができる選手が多かったので、そこが少し、後半も含めて全体を通して行けない、というのは少し残念というか、そこは修正していかなければいけない点ですかね。」(Jリーグ)
北九州の失点シーンも前からのプレスが緩くなったところから、右サイドに大きく展開されてしまいました。
展開先の右サイドへの圧力も甘く、そのままペナルティエリア内に侵入されてしまった。
そこからファンマなど、フィジカルの強い選手がゴール前で粘ってキープ。
そして、ゴール前に人数をかけられたこともあって、やられてしまいました。
プレスが緩くなればそこから大きく展開される可能性があり、圧力の甘いところから攻め込まれるかもしれない。
また、簡単にゴール前に持ち込まれれば個人能力勝負となりフィジカルの強い選手などの勝つ確率が高まるし、ゴール前だけで守っていては相手に人数をかけられて、詰め将棋のようにやられてしまうかもしれない。
だから、簡単には展開・侵入されないように、プレスをかけることが重要となる。
小林監督のチームもゴール前などで粘る印象が強いですが、それでもやはりファーストDFが重要だと話しています。
福岡の長谷部監督も守備的なサッカーと言えるでしょうが、北九州戦ではプレスを強めたことによって守備を改善しています。
守備的な両チームの戦いではありましたが、後方で守るだけでなく前からのプレスの重要性が感じられた試合だったと思います。
尹監督のサッカーは、考え方ややり方が違う…という見方も出来なくはないのかもしれませんが、現代サッカーにおいてプレスをかけないで守るというのは相当に厳しいものではないかと思います。
そのためにクレーベと山下を前線で試したりしているのかもしれませんが、それだけでは工藤を起用した昨年と変わらないかもしれません。
ジェフがこの問題にどう対処するのか、見ていきたいところですね。