当ブログはプロモーションを含みます

2020シーズンを振り返る 小島秀仁・熊谷アンドリュー編

 田口の加入などもあり苦労するだろうと思われた2020年の小島ですが、予想よりもチャンスを得た1年でした。
 昨年の20試合出場は前年の16試合出場を上回るもので、スタメン15試合出場も田口に次ぐボランチ2番目の数字でした。

 昨日も話したように、思ったよりも尹監督はボランチにビルドアップ能力を求めていた。
 現在のトレンドとなっている、ボランチが下がって2CBと3人でビルドアップを開始する動きも取り入れていない分、ダブルボランチの個の能力でゲームを作ってほしいという意図なのではないでしょうか。
 田口のパートナーも本来は守備的なボランチの方が相性は良いと思うのですが、2人がパスを出せればマークも分散するしボランチのところでゲームを作る以上は、パスセンスの方を優先せざるを得ないところがあるのではないでしょうか。


 シーズン前半は出番の少なかった小島ですが、後半から出場機会を伸ばしていきました。
 小島のプレーも当初は細かくパスを繋ぐプレーが多かった印象ですが、徐々に中距離のサイドチェンジが増えていき、個人技での展開が目立っていったように思います。
 これが尹監督の求めるビルドアップなのでしょう。

 本来の小島はショートパスを繋いで周りとの連携から自らも動き出し、隙を見つけてスルーパスなどを狙うプレースタイルだと思います。
 しかし、尹監督のサッカーは細かいパスを繋いで崩すようなサッカーではないだけに、今までの小島のプレーでは厳しかった。
 そこで戦術眼とテクニックを、大きな展開に生かすことで出場機会を増やしていったのだと思います。


 また、守備においても、以前よりは頑張れるようになった印象があります。
 ただ、小島の守備は局面局面での瞬発的なもので、継続的な守備という点においては課題が残るし、フィジカルにも弱さがある。
 さらにビルドアップ面でも、本来はショートパスを繋ぐ展開の方が持ち味は出せるのでしょう。

 尹監督のサッカーに何とか合わせて戦った1年だったという印象で、無理をしていた部分もあったのかもしれない。
 だからこそ、違うタイプの小林が補強されたところもあるのでしょうが、小林も自ら展開できるタイプではないようですしうまくはまるかどうか。
 小林が変わるのか、尹監督が折れるのか、そこに小島などがどう絡んでいくのか、注目のポジションですね。


 逆に期待以上に苦しんだのが、熊谷でした。
 怪我などもあったとはいえ、熊谷より小島が優先される試合もあり、出場数は21試合どまり。
 これはジェフ加入後のみならず、2016年の金沢時代を含めて、過去5年間で最低とになります。

 小島、高橋、見木など、他のボランチは対人守備に課題があり、フィジカルの強い熊谷が入れば、ピッチの中央に強さを加えることができる。
 ただ、運動量豊富に動き回る、スペースを消す、バランスを取るといった点においてはそこまでのうまさはなく、黒子に徹することができるタイプでもない。
 それだけに守備の強みが、ポジション争いの決定打にはならなかったのだと思います。


 さらに、上記した通り、尹監督はボランチにビルドアップを求めた。
 加入当初から話していますが、熊谷もパスを出すテクニックはあるものの、先を読んだパスを出せるタイプではなく、ゲームメイクがそこまでうまい選手ではない。
 その点で、小島に先を行かれたのではないかと思います。

 また、エスナイデル監督体制で、熊谷は後方に下がってパスを散らすタスクを任されていた。
 これによって、プレスの緩いエリアで左右に振るだけのプレーに慣れてしまった結果、余計に厳しいエリアでゲームが作れない、縦にパスをつけられないという悪癖が生まれてしまったのかもしれません。
 ボランチが下がってパスを繋ぐこと自体は珍しいことではないですが、エスナイデル監督は中央で縦にパスをつながないため、結果的にチャレンジしないことに慣れてしまったのではないでしょうか。


 田口がいる以上、司令塔は田口となるでしょうし、今年の選手構成を取り上げた際にも話しましたが、熊谷のSH起用も面白いのではないかと思います。
 熊谷は細かなビルドアップが得意なタイプではないですが、金沢時代にSHで活躍したようにフィジカルがあるから2列目でも前を向けて、そこからスルーパスを出せる選手だと思います。
 さらに守備重視のボランチにしては課題が残る上に小林も加入したわけで、ボランチでは厳しい状況に立たされる可能性がある。

 とはいえ、尹監督はSHにパサータイプを置いても機能しないことが多いので、現体制では現実的ではないのかもしれません。
 ボランチで起用された時にビルドアップだけでなく、前に出ていって攻撃に絡めるか。
 ビルドアップだけなら田口や小島の方が上でしょうから、他の強みを作らなければいけないのではないでしょうか。


 米倉もフィジカルはあるものの不器用で使いにくい選手となっていますが、熊谷も近いものを感じるところがあります。
 あるいは、今年熊谷はキャプテンを外された形になりますが、状況からすると2010年に工藤がキャプテンになったものの勇人が復帰したことで、工藤の立場がなくなったパターンも思い出します。
 あの時もピッチ上での存在感は勇人の方が上で、工藤はお飾りのようになってしまいましたが、熊谷も昨年田口が加入したことで立ち位置が難しくなってしまった印象です。

 クラブとして熊谷中心のチームでは厳しいと判断され、田口や小林の補強があったのか。
 そうであるのなら、ますます熊谷は自分の強みを明確にして、より攻守に実行力のある選手になっていかなければいけないと思います。
 フィジカルが強い、テクニックがあるだけではダメで、それをどう試合中に使って優位に立てるか。
 このままでは移籍もあり得るかもしれませんし、熊谷にとって大事な1年となるのかもしれません。