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今週末からF1開幕 角田への大きな期待と現実的な目標

 先月、ホンダのF1撤退と角田裕毅のF1デビューに関して、以下のエントリーを書きましたが、今週末に始まるF1開幕戦バーレーンGPが近づくにつれ、さらに角田への注目が高まっているようです。
 今回はF1にあまり詳しくない人を対象に、角田の置かれた状況を話していきたいと思います。

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 角田には期待したいですが、F1はモータースポーツ界の中でもトップカテゴリ。
 世界でもトップ20のドライバーが集まって鎬を削る舞台と言っても過言ではないわけですから、簡単に結果が出せる世界ではありません。

 振り返ると、今までの日本人F1ドライバーは優勝経験もなく、大きな成功を遂げるまでには至っていません。
 それでも今回の角田こそは今までとは違うと期待したいし、期待できる要素も少しずつ集まっています。
 まずは、そこをまとめていきたいと思います。
 

1.日本人最年少デビューかつ2021年F1最年少ドライバー

 近年のF1は、ドライバーのデビューの低年齢化が言われています。
 現チャンピオンのハミルトンは22歳、元チャンピオンのベッテルは19歳、レッドブルのエース・フェルスタッペンに至っては17歳でデビュー。
 若くしてF1に参戦することが、成功において必須とも言える状況です。

 そういった状況や欧州文化に慣れる意味でも、日本では若い頃から欧州の下位カテゴリーに送り込むべきという発想が生まれていました。
 その中でも成功したのが、角田と言えるのでしょう。
 これはバルセロナカンテラに所属した久保建英などと似た境遇と見れば、サッカーファンにもわかりやすいのかもしれません。


 これまでの日本人最年少は中嶋一貴でしたが、一貴は2007年最終戦でデビューしたためフル参戦した翌年には23歳で、小林可夢偉も23歳での参戦。
 佐藤琢磨に至っては、モータースポーツスタートが遅かったこともあって、25歳での参戦でした。
 今回の角田は20歳で日本人での最年少はおろか、今年のF1ドライバーの中でも最年少。

 2000年生まれですので、2000年代初のF1ドライバーにもなります。
 角田は2019年に欧州に舞台を移し、FIA-F3、FIA-F2をともに1年で卒業しF1に参戦することになっており、F1は早過ぎるのではないかという意見もありますが、それだけ評価されているともいえるのではないでしょうか。
 特にレッドブルは積極的に若手を引き上げる傾向にあるため、角田が選ばれた部分もあるのだろうと思います。

2.日本企業以外からのバックアップ

 今までの日本人ドライバーは、ホンダやトヨタなどの自動車メーカーや大口スポンサーがバックについていることが多い状況でした。
 そのため実力だけではなく、日本企業の支援も込みで評価されていた面もありました。

 角田も同じようにホンダの支援を受けていたのは間違いありませんが、同時に若手育成に定評があるレッドブルアカデミーにも所属。
 それもホンダの意向が大きいのだろうと思われていましたが、先のホンダF1撤退発表後もレッドブルは角田を支持し続け、姉妹チーム・アルファタウリでの参戦が決定。
 ホンダのF1撤退で角田のF1参戦もなくなるだろうと思っていただけに、意外な展開でした。


 それだけレッドブルが実力で評価してくれたのかなと期待したいのですが、背景にはレッドブルも有力な若手が枯渇していると言われているところもあるのかもしれません。
 フェルスタッペンの次が見つからないレッドブルとしては、有力な若手がぜひとも欲しい。
 そこで期待を浴びているのが角田という状況にあります。

 ホンダは撤退後もエンジンの知的財産権レッドブルに譲ることになりましたし、そういった絡みもあるのかもしれません。
 しかし、辛口なレッドブルの顧問ヘルムート・マルコも角田には期待しているコメントを残していますし、本気で角田に期待している部分もあるのではないかと思います。

2.欧州メディアからの評価も高い

 上記の通り、今までの日本人は企業のサポートが大きかったため、低く評価されることも少なくありませんでした。
 日本人差別的な部分もあったのかもしれません。

 しかし、角田に関しては昨年のF2での活躍もあって、海外メディアも高く評価され、昨年までF1戦っていたグロージャンなどドライバーからも評価を得ています。
 リップサービスなども含まれてることはあるでしょうが、馬鹿にされる傾向すら見られた日本人ですから、それだけでも変化と言えるのではないでしょうか。
 こうして状況が変わったのは角田の昨年の活躍が一番大きいと思うのですが、これまでの日本人の努力もあったのではないかと思います。

 近年では世界3大レースであるインディ500ル・マン24時間耐久レースのうち、インディ500佐藤琢磨が2度も制覇し、ル・マン中嶋一貴が3連覇。
 それぞれメーカーのサポートも大きかったとは思いますが、それ以外のカテゴリでも日本人はコツコツと頑張ってきました。
 モータースポーツ界もグローバル化が進み様々な国のドライバーが増えてきた中で、日本はモータースポーツとの歴史が長いこともあって、一定の信頼を得られるようになってきたのかもしれません。


 もちろん、周りの評価ではなく最終的に大事なのは実力となるわけですが、F1では明日からの開幕に先立ち、2週間前にバーレーンで3日間のテストを行い、ここで角田は総合2番手タイムをマーク。
 順調なスタートを切ったといえるでしょう。
 それによって、日本でもF1ファン以外から大きな期待が高まっているように思います。

 ただ、一部では誤解しているように感じる報道もあり、大きな期待に反して実際のレースで肩透かしを食らっては逆効果にもなりかねません。
 テストでも2番手タイムを出せたのだから、本番でも2位前後を走れるのかと言うとそう簡単なものでもない。
 そのあたりも、以下にまとめていきます。

1.環境が違う中でのテスト

 まず、テストに関してですが、現在はコスト削減を理由に1チーム1マシンしか走らせることができません。
 そのため、角田のアルファタウリも午前と午後に分けて、違うドライバーを走らせています。

 モータースポーツは少しの環境の違いでも、タイムが大きく異なってきます。
 直線で300km/hを超えるマシンですから、コンマ数秒差など本来は一瞬なわけですが、そこを徹底して争うのがF1。
 だからこそ、環境の差が大きく気温、風、路面状況などで大きく変わってきます。

 さらに、テストでは複数のタイヤが用意されましたが、角田がタイムを出した時のタイヤは最も一発のタイムが出やすいもので、今回は使っていないドライバーもいました。
 チームによっては、まず決勝レースの準備をし、予選を想定したタイムは出していないところもあります。
 セッティングや燃料搭載量も大きく異なっていたかもしれないわけで、テストだけではわからない部分が大きいというのが実情です。 

2.トラブルや三味線を弾くチームも

 今回テストで話題になったのが、7年連続チャンピオンとなっているメルセデスの不発で、トラブルが多くほとんど走行できなかった。
 ただ、あくまで初期トラブルかもしれないし、無事に走れれば速いかもしれない。
 他にもトラブルでタイムを出せていないチームがいた状況で、角田のアルファタウリは中堅チームですので、普通に走ればより上位に行くであろうチームは少なくないと思われます。

 さらに近年は、テストで三味線を弾くチームも多い。
 テストで本気で走ってしまえば、その走行を分析されかねないし、実力もわかってしまう。
 上位チームほど手の内を明かさない余裕もあるだけに、角田が本番でも2番手を維持するのは簡単ではないでしょう。

 特にメルセデスはテストでタイムを出さない傾向があったのですが、今年こそは本格的に厳しいのではないかという噂もあります。
 そうなればレッドブルにチャンスが巡ってくるわけで、ホンダラストイヤーに絶好のチャンスが巡ってくるかもしれません。
 しかし、それもメルセデス一強時代においての希望的観測かもしれません。

2.目標はチームメイトとポイント獲得

 F1は自由競争が売りである故、チーム間の差が出やすい競技で、現状でも上位、中位、下位の力関係がはっきりとしています。
 近年はメルセデスに加え、レッドブルフェラーリがトップ3と言われており、若干フェラーリが下降気味でしたが、今年復活できるかが見どころの1つ。

 それに加えて、マクラーレンも昨年から改善しており、トップ3に割って入るかもしれません。
 その後にルノーから名前の変わったアルピーヌ、レーシングポイントから名前の変わったアストンマーチンも来れば、アルファタウリは7番手になってしまう。
 ドライバーでいえば14位、15位を争う位置ということになるし、アルファタウリはチームとして5番手以降を争うことになるのではないでしょうか。


 このチーム間の差は如何ともしがたいわけで、角田はまずチーム内で存在感を発揮できるか、チームメイトのガスリー相手にどこまでやれるかが勝負。
 昨年ガスリーはアルファタウリで荒れたレースを制し、優勝に導いているドライバーですから、チームもガスリー中心に回っているでしょうし、手強い相手となるのではないでしょうか。
 また、レースではポイントを確実に獲得していくことが大事だと思います。

 角田の最終目標は、レッドブルに昇格してチャンピオンを争うことでしょう。
 今年いきなり上位争いをするのは現実的ではないわけで、まずはアルファタウリ内で評価を上げることだと思います。
 優勝を争えるチームの直下にいることは大きいですし、レッドブルに昇格できれば日本人初優勝の夢も見えてくるかもしれません。


 モータースポーツはお金もかかる競技ですし、サポート体制も重要です。
 ホンダが撤退すればF1ドライバーを支援する企業もいなくなるかもしれないし、角田は非常に貴重な希望の光と言えるでしょう。
 まずは今週末のバーレーンGPで、良いスタートを切ってほしいと思います。

 F1はレース数も増加傾向にあるとはいえ、23GPしかありません。
 サッカーのリーグ戦と比べても半数程度しかないわけで、1つのミスが命取りになるのがF1の怖さ。
 昔から日本人ドライバーがF1に参戦するとハラハラドキドキしていたものですが、それが帰ってくることを喜びつつ、角田を応援していきたいと思います。