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FWが前に出ず中央を固めるもサイドから失点

 試合後にも話しましたが、ジェフは琉球戦でも2トップがプレスに行かず、引いて守る守備を展開していきました。
 琉球がパスサッカーを展開するため、中盤中央のスペースを消す意識がより強かったところはあると思うのですが、基本的にはこの守り方がベースといった印象です。

 2トップが前に出ない分、相手後方3枚の左右にボールが入った時には中央に絞ったSHが前に出ていき、4トップのようになることも。
 といっても、アグレッシブな布陣ではなく、2トップが前に出ないため、結果的に両SHがFWを吸収し4トップになる形だと思います。
 SHが中央に絞って前に出る分、相手SBにボールが展開されると、ジェフのSBが外に出て対応していきます。


 図にすると、だいたいこんな感じ。

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 ポイントは黒いエリアで示した通り、2トップが前に出ず相手ボランチをケアすることだと思います。
 これは尹監督が就任した当初から見られる傾向で、FWの顔ぶれが変わっても、やり方は変わらない印象です。
 状況に応じて前に出ていくこともありますが、リトリート時はこの守り方が基本だと思います。

 しかし、2トップが前に出ないので、白い円で示したように、相手のDFライン中央へはプレッシャーがかからない。
 そうなると、相手がそのまま持ち上がってくるかもしれないし、そこから裏などへのパスが出るかもしれない。
 そのため、ずるずるとラインが下がりがちになってしまう。


 ちょうど日本代表対アルゼンチン代表戦の2戦目で、アルゼンチン代表のFWが守備に行かなかったため、CB瀬古から前線の林に一本で裏を取るラストパスが出ています。
 そのまま林が得点しているように、前線から守備に行かなければ、こういった失点は起こりうる。
 アルゼンチン代表は1試合目を1-0で勝利し、2試合目は0-3で落としていますが、この2試合は前線からのプレスに行けたか行けなかったかの差も大きいのではないでしょうか。

 Youtubeのハイライトにも、そのシーンが写されています。

 このように、前からプレスに行かないと、一本で裏を取られかねないから、ジェフは全体のラインを下げるしかない。

 しかし、全体のラインが下がってしまうと、SHやSBなどが前に出て行きづらくなる。
 琉球戦での2失点も、失点してジェフが守備的になり、琉球がより攻撃的になったこと。
 そして、疲労からスタミナが落ちてしまったこともあって、SHやSBが前に出られなくなったところからやられたのだと思います。
 
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 1失点目も2失点目も同じような形で、1失点目は一度ジェフが後方で相手の攻撃を跳ね返したところから、琉球にボールを拾われた。
 そこから岡崎、沼田とつないで、阿部がヘディングでゴールを決めています。
 この図は2失点目のシーンですが、ここも岡崎から沼田に繋がれ、クロスをあげられてやられています。

 どちらも右CB岡崎にプレスに行くことが出来ず、沼田への対応が遅れています。
 岩崎としてはもっと沼田に寄せたいところではあったのでしょうが、岩崎は岡崎へもプレスに行かなければいけない。
 岩崎が岡崎にプレスに行けていれば、相手の攻撃が遅れて小田が沼田へ行けていたかもしれません


 しかし、そもそも全体のラインが低いので、岩崎は猛ダッシュをしても岡崎には間に合わなかったでしょう。
 また、単純に岩崎の負担が激しいので、90分間CBもケアしつつ、SBも対応するというのは無理があったようにも思います。
 普通の守備ならFWもCBにプレスにいって、守備の負担を分散すべきだと思うのですが、これだとSHにプレスをまかせっきりな状況になります。

 確かに2トップがプレスに行けば中盤が空いてしまうし、左右CBまで追うと縦だけでなく横のスペースが出来かねない。
 さらにFWの守備的な負担を軽くすることによって、攻撃に専念させたいという思いもあるのかもしれません。
 けれども、その分サイドの選手の負担が、かなり大きいものになっている印象もあります。

 琉球戦では、そのサイドから2失点。
 岡崎、沼田への守備が遅れたのも当然といった印象も受けますし、同じ形で失点したということも含めてやられるべくしてやられたとも言えなくもないのではないでしょうか。
 中央を固めたことには成功し、サイドからクロスでやられたのだから仕方がないではなく、全体的なバランスを確立してこそ好守と言えると思いますし、そこを目指して修正を期待したいところではないかと思います。

右SH福満が逆サイドや中央へ流れてチャンスメイク

 今年ジェフに加入した福満。
 開幕戦での負傷の影響で欠場した第2節愛媛戦以外は、右SHでスタメン出場しています。
 福満は開幕戦から右サイドの位置から逆サイドや中央まで流れてプレーする動きを見せていましたが、ようやくその効果が発揮できたのが琉球戦だったのではないでしょうか。

 特に目立ったのは、39分のシーン。
 スローインからブワニカなどが競り合ってボールがこぼれた後、右サイドから斜め中央に走っていった福満が拾いスルーパスを出すと、岩崎が裏を走ってシュートまで持ち込んでいます。
 見木のゴールのアシストも、福満によるものでしたね。


 SHが逆サイドや中央に流れる動きは珍しくなく、ジェフもJ2に落ちてから何度かトライしてきたパターンでした。
 近年では江尻監督なども一時期試していましたが、ただSHが逆サイドに浮遊して行くだけでは効果的には作用せず、流れた先に人数を増すことでパスワークなどを構築できるかが重要でしょう。
 SHが流れることで本来のサイドは薄くなるし攻撃が偏るデメリットも考えられる上、守備時に戻りが遅れるなどのリスクもあるわけですから、SHが流れたことで明確な強みを作り上げる必要が出てくると思います。

 この福満の動きも新任した小林コーチの発想なのかなと思わなくもないですが、昨年のジェフも右SHは中央方向に流れる動きを見せていたので、単純にその延長なのかもしれません。
 しかし、昨年はその分右サイドからの攻撃が作れず、左サイドを警戒されると苦戦する傾向も見られました。
 もちろん必ずしも右サイドからの攻撃が作れなくなるわけではなく、例えば鈴木監督時代には右SHが絞ってあえて右サイドをオープンにしてSB米倉が走り込むコースを作れたわけで、いろいろな発想があると考えるべきでしょう。


 福満は狭いエリアでもうまくつなげる選手ですので、この動きに適しているのかもしれません。
 ポジショニングも良く特にサポートに入る動きがうまいので、他の選手の落としを受けたり、琉球戦でのアシストのように周りを活かすこともできる。
 さらに判断が早く、少ないタッチでパスを繋げる選手なので、密集したエリアでも機能するのだろうと思いますし、この辺りは水戸時代にも目立っていた部分ですね。

 ただ、テクニカルな選手なので、相手がスペースを消してきた時に効果的なプレーが出来るのか。
 また、鋭く縦へ突破するプレーなどは、あまり期待できないのかもしれません。
 さらに、福満のいなかった第2節では違うタイプの岩崎が右サイドに入っており福満の代役が気になるところなのですが、矢田あたりはもう評価されていないのでしょうか。


 琉球戦では、福満の逆サイドや中央に流れる動き、昨日も話した見木のトップ下に加えて、岩崎も縦への突破だけでなくパスワークやシュートなども狙える展開となりました。
 以前にも話した通り、岩崎はサイドアタックだけではもったいない選手だと思いますので、岩崎にとっても良い傾向なのではないでしょうか。
 ただ、以前から決定力は課題といった印象もあり、そこが今後の大きな壁となるのかもしれませんね。

yukkuriikou.hatenablog.com

 しかし、この攻撃が琉球戦以外でもうまくいくのかどうかが、一番の不安要素ではないかと思います。

 近年のジェフは攻撃面で課題を感じることが多かったですが、それでも対戦相手や状況によっては、時折いい攻撃が作れる試合もあった。
 そこは個人能力もあるし、相手があるのがサッカーですから、大事なのは安定して狙った攻撃が作れることでしょう。
 琉球はJ2の中でも攻撃的なチームですから、そこを差し引いて考えなければいけないと思います。


 このサッカーを目指していくのであれば、一番の課題は何よりもビルドアップだと思います。
 琉球戦でもビルドアップに関しては改善しておらず、長いボールからの展開や相手のミスなどからパスワークを展開することが多かった。
 だから、解説だった幸谷氏も、このサッカーをやるのならカウンターの質を高めなければいけないだろうと話していたのだと思います。

 けれども、攻撃面で可能性を見せたのは、2列目の岩崎、見木、福満といったテクニカルな選手が絡んだパスワークだった。
 このパスワークを安定して実行するためには、後ろから繋ぐ術を作っていかなければいけないのではないでしょうか。
 そこが出来ていないのが、試合後にも話した局所局所では可能性を感じたものの、全体的には課題を感じたと話したもう1つの理由でもあります。


 逆にこれだけ小柄な2列目を並べた状況で、尹監督が本来好むのではないかと思われる、ガテン系のサッカーをやるとなると不安が大きいようにも思う。
 ならば、そこは諦めて、テクニカルなサッカーを目指すということになるのか。
 小林コーチはその点で呼ばれた可能性もあるし、うまい具合に嚙み合えばいいのかもしれませんが、単純に考えるとミスマッチを生みかねないようにも思います。

 特にJ2のクラブはリソースが限られているわけで、中途半端なチームになるよりは一点突破の方が成功しやすい。
 それが昨年昇格した徳島であり福岡であり、秋田や琉球だったわけですし、例年ジェフは中途半端になりだと思います。
 確かに琉球戦や岩崎、見木、福満などの2列目にも可能性を感じた部分はありますが、最終的にはトータルで強いチームを作れるかが問われるわけで、そういった視点を忘れないようにしなければいけないのではないかなとも思います。