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“巻のチーム”になりつつあるジェフ

 日本代表がW杯出場を決めたとき、ふと初めに考えてしまったのが巻とオシム監督の気持ちでした。
 ですので、昨日の京都戦で巻のゴールが見れた時は、素直にうれしかったです。
 嬉しかったというか、ほっとしました。
 これで少しは巻の気持ちも晴れたかなぁ…と。


 代表では運動量豊富でスピードもある岡崎が活躍し、フィジカルと高さが武器で前進力もある矢野がクローザーとしての役割を果たしています。
 それぞれ巻の良さに加えてプラスアルファの良さがある選手な上に(もちろん巻にも巻だけの良さがあるけど)、巻よりも若いく今の代表のコンセプトにもうまくフィットする特徴を持っている選手だと思います。
 その2人が今回のW杯予選で、自身の立ち位置をより確固たるものにしようとしています。
 そうやって考えると巻の代表復帰、そしてW杯出場への道は楽な道のりではないのかもしれません。
 それでも現役選手ならば、当然W杯への夢というものを強く持っているはずだと思います。
 昨年までは代表に呼ばれ続けていた巻なら、なおさら。
 当然W杯出場を決めた大事な試合に自分が選ばれていないことに対しても、とても悔しい思いがあったはずです。

 

 だから、この試合では水曜日に怪我をしたこともあって、ゆっくりと休むのかなぁなんて思っていました。
 1試合休んでメンタル面をリフレッシュするのかなと。
 でも、そこはやっぱり巻誠一郎ですね(笑)


 試合に出ることによって、むしろいろんなモヤモヤを跳ね飛ばしたかったのかなぁとすら感じました。
 それほどまでに激しく走りまわっていましたからね。
 本当に怪我をしたのかな?と思うくらい(笑)
 運動量だけでなく、谷澤など周りの選手に対して「ここでチェックにいくんだ!」という具体的な指示を出し、守備面でもリーダーシップを発揮していましたし、攻撃に移っても積極的に相手DFの裏を突くなどよりゴールを奪う意欲を見せてくれました。
 京都戦での巻には貫禄すら感じましたし、複数の意味で今のジェフは“巻のチーム”になりつつあるのかなと思います。
 もちろん悪い意味ではなく。
(まぁ、以前からそうだったという見方もあるかもしれないけれど、ほんの少し前まで巻を活かせないチームだったわけですからね。)

 
 当然夏の補強で物凄い選手が入ってくればその状況は変わる可能性もありますけど、それでも今の巻は戦術的にもメンタル的にも欠かせない存在になっているなと感じます。


■左で作って右で攻める
 さて、試合。
 前半はミラー監督のやりたい4-4-2がはっきりと見えてきたように感じました。
 左SHのアレックスと左SBの坂本がゲームを作って、右SHの深井と右SBの和田が前が仮になって積極的に攻める構図。


 SHが積極的に飛び出すサッカーを目指していますので、どうしてもSHの裏が空くことが多いジェフ。
 そこで京都戦でのジェフは空いたスペースには右ボランチの工藤が入り下村が右に少しよって、アレックスが中に絞ることが多かったですね。
 アレックスは攻撃ではゲームメイクが主だから、攻めていてもポジションは大きく変わらない。
 だから、守りにも移りやすい位置にいました。


 ただし、そうなるとどうしても今度は左サイドが開いてしまう。
 そこでポイントなのが、FW2人の守備ですね。
 サイドチェンジをさせないように、積極的に相手のボランチを潰しにかかる…あるいは相手DFラインに素早くチェックに行き、ボールの出所を押さえる。
 これが前半は非常に効いていました。
 そのプレスがうまくいかなかったら、中盤の守備のフォローに戻る仕事までしていて、2人のFWは非常に良く頑張っていたと思います。
 


 攻撃に関しても、本来は中盤の選手である谷澤が2トップの一角に入っているため、中盤の構成力を補ってくれていますね。
 ゴール前への飛び出しだけではなく、ゲームメイクやラストパスも期待できる。
 FWの一角に中盤のサポートが出来る谷澤を起用することによって、今までうまくいかないことが多かった4-4-2がようやく構成できるようになりつつあるのかなぁと思います。


 ちなみに、もしもこのままの戦術でFWに新戦力を補強するのであれば、大変難しいことになると思いますよ(笑)
 巻はプレッシングや運動量、守備能力やメンタル面を含めて不可欠な存在になりつつあります。
 そうなると谷澤の代わりにFWをということになると思われますが、谷澤はゲームメイク、チャンスメイクに加え、守備力や得点能力も要求されています。
 そんな穴のないスペシャルな選手を補強できるのかどうか。
 一方で戦術を変えるとなると、また一から攻撃を構築しなおさなければいけなくなるわけですし…。
 


 巻、谷澤のプレーも効いていましたが、前半は和田の攻撃参加も効果的でしたね。
 京都は前半、中盤より前の選手が中に入ってくる意識が強く、左サイドでためて右サイドに展開すると必ず和田が空くようになっていました。
 これによって深井と和田のところで、何度か数的優位が作れることに。
 1点目の深井のゴールも坂本の長いサイドチェンジからでしたし(かなりずれましたけどね)、和田の攻撃参加はやはりチームにとって効果的な働きを見せています。
 もう少しチーム全体でそこを狙う形が強まれば、もっとチャンスが作れていたんじゃないでしょうか。
 

 ちなみに、2点目はハーフカウンターの形から、工藤がスルーパスを出し巻が裏のスペースに抜け出してゴール。
 この得点もFWも含めた高い位置からのプレスが有効に機能していたから生まれた得点だったと思います。


■後半からは徐々に京都ペース
 2得点を奪った前半だけを見れば、ジェフがやりたいサッカーを見事にやり遂げた試合だったと思います。
 しかし、後半になって流れが変わってしまいました。
 後半開始と同時にアレックスに変えて新居を投入し、左SHに谷澤、FWに新居という布陣に。
 これがなかなかうまくいきませんでした。


 この試合での新居は、まずまず頑張っていたとは思います。
 ポストにもしっかり入っていたし、守備も遅れることが多かったけど守りに戻ろうとする意識は強く感じました。
 しかし、やはり谷澤と比べてしまうと、どうしても中盤へのサポートの効果は薄い。
 守備へ入るスピードも遅いし、ドリブルでのキープ力やパスセンスなどでも当然谷澤には及びません。
 谷澤も谷澤でサイドに入ると守備の負担が多くなるせいか、FWの時ほどの効果的な動きが出来ないのが現状です。


 この交代の結果、相手のボランチとDFラインからゲームを展開されることが増えてきて、徐々に押し込まれてしまいます。
 相手も2点先制されて後半頭からパウニーニョを投入し、一本でジェフの裏を狙う展開が増えてきました。
 
 

 しかし、DFラインは落ち着いていました。
 やはり、福元は期待できますね。
 ビルドアップの際もボールを受けてから考えるのではなく、受ける前から次に何をするか決めているから次への判断が早いし、視野も広くロングボールの質も高い(一本ミスはありましたけど)。
 そして、何よりも相手へのチェックが早い。
 一歩目の出だしが早いから、臆することなく相手へのチェックに行けます。
 スピードに難のあるCBが多かったのでどうしても相手に先手を取られ、1歩遅れて間合いを取るため下がりながらの守備が多かったわけですが、福元は相手に先手を取られる前にガンガン前から相手を捕まえてくれます。


 まだまだ経験不足なところもあるし細かな修正なども必要だと思うのだけれど、もしもミラー監督が怖がらずに福元を起用できるのであれば、シーズン後半に向けて面白い存在になるんじゃないでしょうか。


■スタミナ不足と逆サイドのスペース
 攻め込まれても粘ってはいたのですが、時間が経つにつれ徐々に綻びが出てきます。
 後半30分を過ぎたころから、全体のラインが下がってきてしまいました。
 1つはそれまで頑張っていた下村、工藤の運動量の低下。
 下村は現在絶好調で、前節清水戦でも得点を決めています。
 良い時の下村は足元のテクニックも安定し、運動量も切り替えの速さも良くなる傾向にあります。
 昨年も春の終り頃に調子がよかったので、この時期は調子がいいのかもしれませんね。
 この状況をフルシーズン続けられればいいのですが…。


 ボランチ2人に疲労が見えてきたのと、もう1つの問題はサイドのスペース。
 京都は選手交代で両サイドにウイングをはっきりと置くようになり、ジェフの「サイドを攻められると逆サイドの選手が空いてしまう」といういつもの課題が浮き彫りになってしまいました。
 ジェフはSBの2人がCBをフォローすべく中に絞る。
 そうすると、当然サイドのウイングが空く。
 特に遠くのサイドはブラインドになって空きやすい。
 その状態でクロスを上げられるから、中のマークは大混乱…といった感じでしたね。


 加えて、ボランチもゴール前にどんどん下がってくるんですよね。
 だから、何とかヘディングで跳ね返しても、相手のトップ下がフリーでボールを拾うことが非常に多くなってしまいます。


 今に始まったことではないのですが、クロスが上がった時の中央の守備。
 攻め込まれた後のマーキング。
 このあたりが、いまいちうまく整備されないですねぇ。
 もう少し等間隔に守る意識を強くするか、人につく意識を高めていかないと修正は難しいんじゃないでしょうか。
 そうなると、どうしても一対一の場面が増えるのでそれが怖いんでしょうか。
 でも、今の状況だとゴール前の外がどフリーになってしまって、そちらの方が怖いんじゃないかと思うんですけど…。



 サイドが開いてしまう問題に対して、ミラー監督が選んだ選択は6バックでした(笑)
 右SHの深井に代えて佐伯を入れて、相手ウイングを見る形に。
 これで通常は5バック。
 逆サイドの谷澤が下がってくると、6バックになる形でした。


 確かにサイドは空かないし、ある意味で等間隔でしたけれど、これではさすがに「良い形」とは言えないでしょう…(笑)
 なんとか1失点でしのぎ切ったから良かったですけど、もう少し効率的な選択肢を考えていきたいですね。


■浮かれずに後半戦へ
 ともかくシーズン前半の締めくくりを勝利という形で終えたことは、メンタル的にも良かったんじゃないでしょうか。


 ただし、相手はあまりモチベーションは高くなっかったように思います。
 グループリーグ敗退も決まっている上に、アウェーということもあって、やる気はあまり感じませんでした。
 2失点して入った後半は気持ちを持ち直した感じがしましたが、それまではかなりお粗末な内容だったように思います。


 だから、これで「よかった」と素直に喜べるような試合ではないでしょう。
 後半の出来は良くなかったわけですし、攻め込まれた後の守備や、90分間スタミナが持たない問題など、課題は課題のままシーズン前半を終えたことになります。



 そのあたりを真摯に受け止めることが重要です。
 昨シーズン終了時「終わり良ければすべて良し」といった感じで気を抜いてオフシーズンに入ってしまった結果、こんな有り様になってしまったわけですからきちんと現状を受けとめシーズン後半の準備にあたってほしいと思います。
 

 この勝利は確かに嬉しい勝利ですが、『このまま順当にいけばJ2に降格するんだ』という強い覚悟をもって、ここから戦っていかなければなりません。
 反省するところは、しっかりと反省して欲しいですね。