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勇人「引退する意味を残った選手に感じてほしかった」

 昨日、勇人の引退会見が行われました。
 昨日のエントリーで勇人の引退に関してはひとまずお終いと思っていたのですが、興味深い話をしていたので取り上げたいと思います。

 特に気になったのは、日刊も取り上げているこの部分。

「成績がよくなくて、なにか変化が必要だと思っていた。試合にでたら誰よりも走れている。毎日の練習でも誰より走って誰より戦えてる。その状態で引退するという意味を、残った選手に感じてほしかった」

 「走ること」にこだわりを持ってプレーしていたようですが、その点において現在の選手たちに対して、ふがいなく思っているところもあるのではないかと感じました。
 献身的に走ること、球際で激しく戦うことが、一時はジェフのスタイルとなっていたはずですが、なぜそれを継続できず、今ではむしろ真逆なチームになってしまったのか。
 選手構成もそうだし、クラブのメンタリティなども含めて、そこが大きな問題となっているように思います。


 また、アカデミーの重要性に関しても話していました。

「自分の背中を見てアカデミーの子どもたちが将来のジェフのために『俺らがトップを強くしてやるんだ』という思いを少しでも持ってくれたら。1人でも多く昇格できる選手が出てきたときに、自分のサッカーキャリアは後悔から喜びに変わるかもしれません」

 アカデミーに関してもジェフの強みとなっていたわけですが、それに関してもJ2に降格してからは正反対となっている印象で、他から補強するクラブになってしまっている。
 チームのスタイルも180度変わってしまい、運営面でも全く違うクラブになって、新たなスタイルや強みが見い出せていないと考えれば、苦戦するのも当然のこと。
 現在のジェフの低迷の要因が、改めて感じられた会見だったようにも思います。

 勇人に関しては、会見の模様を見ても意志の強さを感じました。
 決して器用な選手ではないと思うのですが、その意志の強さでこれだけ長く選手としてプレーできたのかなとも思います。
 引退後もジェフのために力になりたいという話を聞けたのは嬉しいものの、指導者を目指すわけではないそうなのでどうなるのかは読めませんが、今後は内部からチームを変えていってほしいですね。


 さて、長崎戦に関しても、すで少し書いていたので取り上げておきたいと思います。
 勇人の引退発表直前に行われた長崎戦は、工藤や鳥海といったアカデミー出身の選手が活躍した試合だと思います。
 それも運動量や周りのために黒子になって貢献するといった、勇人などが得意とする、現在のジェフには欠けている要素だったと言えるのではないでしょうか。

 江尻監督も工藤に関して、「最近のほとんどの試合で彼がディフェンスのスイッチをやってくれている」と話しています
 ほとんどというか、工藤がトップ下に入ってからは全試合で工藤がその役割を果たしていると思います。
 工藤がキックオフ直後から激しく走り回って、チェックをすることによって、ジェフの守備が成立していると言えるでしょう。


 その分、工藤の足が止まると全体的に苦戦してしまう傾向があり、長崎戦でも前半の30分以降や後半も一時的に苦戦していた時間があったと思います。
 ただ、長崎戦は18時キックオフでしたし、公式記録でも気温は22度と低くなっていた。
 それによって工藤はもちろん、クレーベなどその他の選手もいつもより動けて、戦えた試合となったのではないでしょうか。

 さらに長崎戦では、勇人に代わってボランチに入った鳥海も守備で効いていたと思います。
 56分には、こんな場面が。

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 為田がいなされて亀川から秋野にパスを繋がれたところで、秋野への下平の詰めが遅く中盤の間で前を向かれてしまいます。
 秋野が前を向いた状況で、翁長が白円で示したハーフスペースに走り込みます。
 これに対して鳥海が反応して翁長についていくことによってフリーな状況を作らせず、選択肢の減った秋野は玉田へのパスを選んだものの精度を欠いて新井がクリアしています。

 鳥海はこの前の場面でも、カイオがジェフの左サイドのハーフスペースを走り込んでいったのに対して、右ボランチの位置から走って行ってカバーしています。
 ボールを奪ったわけでもクロスを跳ね返したわけでもないわけですが、こういったプレーが守備を構築する上で大事になってくるはずです。
 鳥海のカバーリングに関しては先日も取り上げていますが、ジェフはSBなどが外に出ても全体がスライドする意識が薄いだけに、その間を埋める動きが重要となっている印象です。


 さらに現在のジェフは、ボランチ二人が棒立ちになって横関係のまま守ることが多い。
 しかし、それだけではバイタルエリアを埋めきれないし、ボランチボランチの間のパスコースを消すことも出来ない。
 だから、先週も取り上げた山形ように、全体で動いてパスコースを消しつつ、1人がカバーに下がってもう1人が前に出て寄せに行くというような関係が1つの理想なのだと思います。

 図のシーンでも、ピッチ全体で言えば、甘さも残る守備ではないかと思います。
 熊谷は前に出ていって戻りが遅いし、為田と下平は外に出て守備をしているのに、寄せが甘く突破されてしまっている。
 しかし、鳥海がその裏を埋めるカバーリングをしたことによって、大きく波状せずに済んだと言えるのではないかと思います。

 
 現在のジェフは攻守において局面局面で強い選手はいるものの、こういった地味でも気の利いた動きが出来る選手は非常に少ない印象です。
 だから、今年も勇人のようなベテランが必要となったのでしょう。
 しかし、今年の勇人はさすがに大ベテランの域に達して衰えを感じる部分があり、カバーリングでの反応などm遅く、スペースを埋めきれない試合も多かった印象です。

 それだけに勇人の後輩にあたる、鳥海の良さが感じ取れた試合だったようにも思います。
 ただ、鳥海の活躍には可能性を感じる一方で、改めてこういった地味でも真面目にプレーする選手の少なさが、大きな問題となっているようにも感じます。
 直接的にはやはり2列目のアタッカーばかりを補強した、選手構成の問題が大きいのでしょう。

 一方で先週も話したように、クラブのメンタリティとして地味な選手やプレーを評価できていない。
 それもあって、一発芸が得意な選手ばかりが集まっている部分もあるのではないでしょうか。 
 以前にも話しましたが、現在のチーム運営とは別の流れにある、工藤や勇人といったジェフ復帰組が貴重な存在になっているのも偶然ではないように思います。


 勇人の引退で改めて、クラブの問題を感じた部分があるように思います。
 強かった頃のジェフの特徴を考えると、「献身的に走ること」、「球際で激しく戦うこと」など、すぐに当時のサッカーを表現する言葉が出てくると思います。
 しかし、今のジェフにはそれが全く浮かんでこない。

 「走ることがジェフのスタイルである」と巻き戻すには、あまりにもあれから時間が経ちすぎましたし、問題なのはどんなスタイルにせよ強みを築けていないことではないでしょうか。
 ただ目の前を試合に勝利する、短期的な結果を期待するというだけでなく、チームとしての強みをいかに作っていくのかが、今のジェフに足りないことだと思います。
 その辺りをしっかりと踏まえて、来季以降に向けての運営を考えていかなければいけないように思います。