山形に1‐5と大敗し、4試合勝ちなしとなったジェフ。
次は9月末に布監督が退任し柴田監督が就任してから、4勝5分2敗と好成績を収めている松本とアウェイで対戦します。
それまで成績が低迷していたことを考えれば、ここまでは監督交代によって成功したケースといえるのでしょう。
柴田監督が就任してからの松本は、中盤が逆三角の3-5-2か3-6-1で戦っています。
基本的な戦い方は変わらないでしょうが、3-5-2の時は相手が後方や中盤でボールを持っている場合だと、WBが前に出て中盤をサポート。
相手がアタッキングサードに入ってきたら、5バックで守って中盤の3枚がスライドして守るなどして対処している印象です。
基本的にはそのシステムでの粘り強い守備からのカウンターサッカーで、セルジーニョなどが起点になって攻撃を作る。
または、遅攻では中盤がうまくポジショニングをして前線へのパスコースを作り、そこを使って鋭い楔のパスを狙う展開も面白さを感じます。
ただ、そこから中央での崩しはもう1つで、結局サイドからの攻撃が増えてしまう傾向にあるのが課題なのかなと思います。
それでも、ここ5試合は負けなしで3勝2分。
前節は優勝争いを演じている福岡相手に、1-0で粘り勝ちしています。
現在の19位の松本ですが、勝点36は17位のジェフと同数ですので、この試合で順位が入れ替わる可能性があります。
そのジェフに関しては、前節大敗したにもかかわらず、尹監督が会見で選手に厳しい言葉をかけなかったことが話題になっていたようです。
優しさともいえるのでしょうが、これは今回に限らずジェフの監督に就任してからずっとこの調子だと思います。
これは会見だけでないのではないかと思いますし、個人的には以下のような印象でした。
相変わらずユン監督批判はタブーなのね。私はむしろ選手に激怒するくらいの方が、ユン監督本来のイメージだし、それくらい厳しい方がチームのためにもなるんじゃないのって思うんだけど。
— arata (@aratasuzuki) 2020年11月8日
尹監督が丸くなってしまったのではないかという話は、以前から少しずつしていたところがあります。
もちろん、人間としては優しくなった方がいい場合の方が多いだろうし、通常なら丸くなっても問題はないのかもしれません。
しかし、尹監督の場合は厳しさこそが最大の武器だったのではないかと思いますし、"厳しくない尹監督"では特徴もなくなってしまうかもしれない。
あるいはジェフは長年甘さ、緩さを感じるチームで、クラブにとっても厳しさこそが求められるのではないかと思っていました。
ちなみに、パワハラなどが一時話題になったので微妙な話題ではあるのですが、より厳格に言えばルールや戦術などを守らせる”厳格さ"が必要なのではないかと思います。
その優しさがチーム作りにも出てしまっている印象もあり、それによって明確なスタイルが確立できていないところがあるのではないかとも思います。
例えばとして、「徹底して堅守速攻を貫き通す」という意気込みのようなものが感じられないところがあるのではないかということ。
江尻監督も監督としては優し過ぎるのではないかと話しましたが、尹監督も年齢や経験を重ねて性格が穏やかになってしまったところがあるのでしょうか。
試合におけるディテールに関してなら選手の問題が大きいことも多いでしょうし、その選手構成にしたフロントにも責任の一端はあるでしょう。
しかし、チームとして何がやりたいのか、チームの方向性が明確になっていないということになれば、それは現場責任者である監督に責任が生じてくる部分だと思います。
確かに尹監督が就任して要所での守備意識は高まっているようにも感じるし、若手を起用してくれていることもプラスだとは思うのですが、チーム全体をどう導くのかに関しては正直弱い印象があります。
今年は1年目ですし異例な日程でもある上、シーズン終了が伸びて来季への準備期間が短い状況となりますから、来年も監督継続ということになるのではないでしょうか。
ただ、一番気になるのは、このチームがどう転がったら成功できるのかということ。
チームが目指す勝ちパターンやスタイルが見えてこないため、どうしても成功するビジョンが見えにくいところがあります。
例えば前節対戦した山形ならボールを繋いで崩すサッカーとプレッシングを展開しているのだから、安定してパスワークを遂行でき、プレッシングを回避された後の対応を改善すれば成功できるかもしれない。
あるいは、長谷部監督の福岡ならリーグ最少失点を誇る守備をベースに、得点もさらに奪えるようになれば昇格しても戦えるかもしれません。
群馬ならバイタルエリアへの楔のパス、琉球なら間を狙ったパスサッカー、金沢ならカウンター…など、下位チームであっても、それぞれの狙いや特徴、目指すべきスタイルというものがあるはずです。
しかし、いまいちジェフはそこがぼやけている印象で。
守備に関してもリトリートなのか、プレッシングなのか、バランス型なのかはっきりせず、失点も多い状況。
攻撃もカウンターを安定して狙えず、パスで崩すでもないし、サイド攻撃も不発になることが多いため、どうやって勝ちたいのかが見えてこない。
チームの目指す方向性がはっきりしなければ、例え強化部が変わったとしても、どこをどう補強すべきなのか、はっきりしないのではないでしょうか。
いわば現場のPDCAにおけるPlan(計画)が不明瞭な状況ですから、その状況でDo(実行)に進み(評価)をしても、Action(改善)の部分もうまくいかないのではないかということ。
では、その方向性をどう作るべきなのかと考えると、監督が徹底した強い信念を持つことが大事なのではないかと思うのですが、優しい性格になって選手に委ねる部分、あるいは選手を活かそうという部分が増えてしまっているのでしょうか…。
もちろん、現状の成績に関しては監督の責任だけではないのは事実ですが、あまりにも尹監督擁護ばかりではそれはそれで淀みを作りかねないのではないかと思いますし、良いところとうまくいっていないところをはっきりさせるべきではないでしょうか。
イメージや雰囲気だけで「守備は良い」と言われている部分もあるかもしれませんが、総失点42はJ2で8番目に多い数字ですし堅守のチームとは言い難いと思います。
あるいは、過去の尹監督の実績や経験をもって批判しないということもあるのかもしれませんが、それをいうのであれば関塚監督や鈴木監督なども十分に実績はあったはずですしね。
これだけ多くの監督を変えてもうまくいかないだけに、監督を批判しにくいというのもわかります。
しかし、かといって、客観的に見ても現状の成績・内容は満足とは程遠いものだと思いますし、フラストレーションはたまるもの。
その状況で監督だけ批判がタブーとなって矛先が変われば、いびつな状況を作りかねないでしょう。
だからこそ、冷静にピッチ上で起こっていることを分析していかなければいけない。
それこそが、今のジェフに足りないものなのではないかなとも思います。
個人的には残り試合では尹監督にもっと厳しくチームを指導し、尹監督の我を出し徹底して自分のサッカーを貫いてほしいなと思いますし、現状ではそこが一番物足りなさを感じる部分ではないかなといった印象です。