2005年J1第8節 ジェフ 3-1 G大阪 驚きの機動力と運動量でJ1王者を圧倒した一戦

 こちらはジェフユナイテッド市原・千葉アドベントカレンダー2022(https://adventar.org/calendars/8246)の記事です。

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 今年も開催、おめでとうございます。
 私は平日毎日更新が基本で参加者も増えているようなので、今年は参加を見送ろうかとも思ったのですが、今週末は空いていたので慌てて参加させていただきました。

 2022年を振り返ると、ジェフにとってはオシム監督の逝去が大きな出来事だったと思います。
 オシム監督を追悼する意味も込めて、今回はオシム監督時代のジェフ戦を、振り返る記事を書かせていただきます。
 勇人もオシム監督追悼試合の開催に際して、「オシムさんを知らない世代に伝えていく責任がある」と話していました。

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 その意思を組んで追悼試合後にも試合の分析をしてみたわけですが、やはり本来は当時の試合の方が望ましい。
 実は2015年のフクアリ10周年でも、こけら落としとなったジェフ対横浜FM戦を振り返ったり、コロナ中断中の2000年には日本代表対モンテネグロ代表戦を振り返ったりと、オシム監督時代のサッカーを見返す記事を何度かアップしてします。
 そのため二番煎じなところもありますが、当時のサッカーを知る人も少なくなっているだろう、記憶も薄れているだろうという意識があって定期的に取り上げているところもあります。

 映像なしの文字だけで伝えるのも難しいですし、私の手元にある動画も今見ると画質が悪く見にくいところがあります。
 それでも少しずつ伝え繋ぐことが、将来のジェフに向けて、少しでもプラスになればと思います。
 今回の試合は2005年4月28日、臨海で行われたG大阪戦です。

■前半ATに巻のヘディングで先制

 オシム監督3年目のジェフは巻、阿部、羽生、佐藤などが成長を遂げ、ハースやストヤノフといったオシム監督好みの選手が加入。
 村井、茶野などが移籍しましたが、1年前に水野、水本といった高卒ルーキーが加入し、この日は水野がスタメン。
 水本も前節はスタメンでしたがこの日は結城が選ばれており、明確にポジション争いをさせることで、若手の成長を促していた印象です。

 G大阪も当時は黄金期と言え、宮本、大黒、遠藤、橋本、シジクレイアラウージョなどがスタメン。
 この年のアラウージョは33試合に出場し、33ゴールで得点王に輝いています。
 監督はその後W杯でも指揮を執る、西野監督が務めていました。


 序盤から激しい展開で、3分にはジェフの水野が中盤で仕掛けアーリークロスを上げるも、G大阪山口智がクリア。
 オシム監督は強引なドリブルをともかく嫌う監督でしたが、優位な状況であれば積極的に仕掛けろという指示を出していましたし、その優位な状況を作ることを大事にしていました。
 しかし、7分には逆に二川が水野をかわしてクロスを上げ、アラウージョがミドルで狙い、GK櫛野がセーブ。

 ジェフはマンマークで守っているため1人かわされると、危険な状況になりがちでした。
 相手FWやトップ下が動くとそのままついていくので、バイタルエリアがぽっかりと空いたり、ラインが凸凹になることも珍しくない。
 現在はライン守備が基本なので今見るとビックリしますが、その分1人1人に責任感が生まれ、相手からボールを奪えば前が空いて攻撃に転じやすいというメリットがあったのだと思います。


 15分にはジェフのチャンス。
 巻が高い位置でバックパスを奪い、ハース、羽生と素早く縦へ繋ぎます。
 羽生がシュートを放ちますが、GK松代がセーブ。

 FWからの献身的な守備や速い攻撃は、カタールW杯で活躍している日本代表でも強みになっていますね。
 オシム監督は世界基準で日本の選手たちを見て、その良さを生かそうとしたからこそ、日本でも成功したのではないでしょうか。
 いくら知識のある外国人監督でも、その知識をそのまま押し付けようとする指導者は失敗してしまうし、最終的にはそこが指導力とも言えるのかもしれません。


 25分にもジェフのチャンス。
 GKからのショートパスを右サイドに流れていた羽生が一度叩いて受け直し、斜め中央の勇人へパス。
 勇人が右前方に送ると、水野がグラウンダーのクロスを上げ、ハースが走り込むも届かず。

 これもオシム監督らしい攻撃で、タッチ数が少なく、素早くゴール前まで侵入するので、GKからのパスワークでもいつのまにかゴール前に侵入していることが多い。 
 また、羽生が右後方に流れてトップ下のスペースを空け、そのスペースに勇人が上がっていくなど、流動的に動くことで守備の的を絞らせない。
 しかも、それが自然と出来ていたのが当時のジェフの強みで、普段からポジションに捉われない動きを要求されていたからこそ、出来ることだったのだと思います。


 37分にもプレスからボールを奪い、羽生、水野と右サイドで前を取ると、最後は左サイドを駆け上がった齋藤がクロスを上げています。
 改めてボールを奪った直後に、前へスプリントしていく選手が非常に多い。
 オフザボールで次々と相手の背後を取って優位な状況を作るという、当時の走るサッカーの凄みを感じますし、オシム監督も言っていたように走ってもすぐに止まらず、相手を走り抜けることで混乱させていたところがあったと思います。

 先制したのはジェフ。
 前半AT、中盤右でのパスワークで、下がっていた羽生が縦パス。
 これを前に出ていた勇人がワンタッチで右へ繋ぐと、水野が走り込んでクロスを上げて、ファーの巻が頭で決めています。

 羽生から勇人へのパスは今でいうハーフスペースに近い位置で、ここで繋ぐことで大外の水野が空いた。
 さらに、中盤後方の羽生が起点となっているため、相手のDFラインが前掛かりで、その裏を巻で巻が飛び込んで決めた流れでした。
 現在のサッカーにも近いものを感じる展開だったと思います。

■後半にも2ゴールを上げてジェフが完勝

 後半も激しいプレスをかけて行き、高い位置でボール奪い攻め込むジェフ。
 G大阪もそこをかわして、前線の攻撃力を活かそうとしていきます。

 2点目が生まれたのは56分。
 坂本、齊藤、佐藤などで左サイド内側を攻め込み、相手のクリアを拾ったところから、中盤右でハースがファーへのクロス。
 これに水野が走り込んで、ゴールを決めます。

 左サイドを攻めて空いた逆サイドを、ハースがしっかりと見ていて、そこに見事なボールを供給しています。
 まさに世界レベルのラストパスだったと思いますが、ハースはここまでのプレーで何度か細かなミスをしてオシム監督に怒られていました。
 オシム監督は出来る選手こそ試合中に叱ると言われていますが、確かに優秀な選手が怒られて必死になれば周りもやらざるを得なくなるし、本人も頑張らなければいけないわけですから一石二鳥ですね。

 
 後半に入ってからも、運動量が落ちないジェフ。
 一方のG大阪は中盤の構成力が武器ですが、ジェフのプレスをかわして長いボールが増える展開に。
 69分、ジェフは羽生を下げて、山岸を投入し、トップ下に水野が回りました。

 すると、72分。
 左サイドでハース、水野、佐藤などが絡んで、佐藤が逆サイドへグラウンダーのスルーパス
 これに反応した山岸のシュートは相手にかき出されますが、水野がつめて3‐0。


 しかし、74分には1点を返されます。
 後方で結城がパスカットをしますが、橋本に奪い返され右に展開。
 投入直後の前田がクロスを上げ、吉原がゴールを決め1‐3に。

 81分には足を痛めた巻を下げ、林を投入。
 前半からハイペースで戦っていたジェフですが、終盤まで足が止まりません。
 それだけ走れる選手を集めているのでしょうし、オシム監督が若い選手を多く選んだのも、スタミナ面を期待してのことだったのかもしれません。


 85分にも林がプレスをかけてボールを奪い、水野とのパス交換で林が抜け出しシュート。
 しかし、ポスト直撃。こぼれ球をハースが狙いますが、大きく吹かしてしまいます。
 その後、ハースを休ませ、滝澤を投入し水野との2シャドーに変更。
 90分通してジェフはイケイケな空気感で、プレーに自信を感じ、ダイナミックな動きも多く、3‐1でジェフの完勝でした。

オシム監督のサッカーに向き合う姿勢

 解説の話を聞いていて耳を疑ったのですが、この試合前までスタメンでゴールを決めていないのはストヤノフ、結城、水野の3人だけだったとのこと。
 これがシーズン終盤ならまだしも、この試合は4月に行われた第8節。
 確かに数えてみると、この試合を含めて8試合で19ゴールを上げています。

 しかも、1人のストライカーに頼らず、誰もがゴールを決められるチームだった。
 ジェフは流動的に選手が動き回るから、誰がゴール前に入っていっても不思議ではないし、いつの間にか3人目、4人目の選手が動いているということが多い。
 どこからでもゴールを狙えるから相手も捕まえにくいし、そこでゴールを量産できたのでしょう。


 当時のジェフ選手はテクニックはないけれども走れると言われていましたが、確かにテクニックを見せつけるプレーは少ない。
 しかし、鋭く相手の背後を取る動きをして、そこに素早くパスを繋ぐことで、優位に立っていく。
 シンプルな展開ではありますが、簡単な動きではないと思います。
 多少古臭く感じるかなとも正直思ったのですが、そんなことはなく今見ても見事なサッカーだったと思います。


 この年はWikipediaにもあるように、最終節までジェフも含む5チームにJ1優勝の可能性が残る混戦となり、G大阪が初優勝を飾っています。
 しかし、ジェフはこの年、ナビスコ決勝も含めてG大阪3戦全勝でした。
 当時のジェフは上位との試合に強くそこにコンディションを合わせていたようにも感じましたが、ただ上位いじめをしたかったわけではなく、上位チームには良い状態で戦って勝ち、下位チームには多少状態が悪くても勝つことで、優勝を狙おうという野望があったのではないでしょうか。

 当時のジェフは予算もなく、観客動員数も少ない状況でこの試合も、4,885人しか入っていません。
 しかし、だからこそ、反骨心を持ってビッククラブを叩きたいという強い気持ちを持つことが出来た。
 それが当時のジェフのアイデンティティだったわけですが、今のジェフはどういった立ち位置なのか、スタイルだけでなくクラブとしての志がはっきりしないところがある気がしますね。


 オシム監督も野心を持つことをとても強く語っていましたが、そこが今のジェフには足りないところなのではないでしょうか。
 なお、この試合では珍しくオシム監督が試合後に、「今日は選手が規律よく戦っていた」と褒めています
 しかし、「ただ、また失点してしまった」と苦言を呈することも忘れなかった。

 オシム監督は試合後のコメントなどを読んでも非常に細かいところにこだわる監督で、ストイックな指導者だった。
 それが選手やスタッフにも伝わり、徹底したプレーを目指す原動力となっていったのではないでしょうか。
 細部に関しては時代も違うし、状況も違うので難しいところもあるでしょうが、こういったサッカーに向かう姿勢に関しては今でも参考になるのではないかと思います。
 オシム監督に良い知らせを伝えるためにも、来季こそは浮上のきっかけをつかみたいですね。