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パスサッカーと渡邉晋監督の山口からジェフの補強を考える

 今年も選手個々の振り返りをしたいとは思っているのですが、その前に来季に向けてジェフの補強ポイントを考えていきたいと思います。
 補強を考えるにあたっては、まず来季目指すスタイルを理解しなければなりません。

 来季は小林コーチの監督昇格が決まっています。
 小林コーチは昨年コーチとして昇格すると、チームの攻撃面を任されパスワークを構築していきました。
 また、以前にはポゼショナルプレーを掲げる渡邉晋監督の下で、ヘッドコーチも務めています。

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 以上のことから、来季はパスサッカーを目指すのだろうと推測できます。

 となると、今年までの守備的なスタイルからは、また大きく変わる可能性がある。
 チームのスタイルが変われば選手への要求も変わることになるでしょうから、それを踏まえてオフの動向を見守りたいところ。 
 単純に現状をベースとしてそこに補填を行う補強ではなく、大きく見方を変えなければいけないところもあるかもしれません。


 来季の構想を考えるためにもパスサッカーそのものを学んでいかなければいけませんが、ポゼショナルプレーを意識したパスサッカーは、ここ数年J2でもトレンドとなっているためそこが参考の1つなるでしょう。
 数年前からその手法を取り入れようとしていたJ2チームはありましたが、理論はわかっても完全にモノに出来ていたチームは少なかった。
 しかし、今ではすっかりポジショナル志向のスタイルが、J2でも定着してる印象です。

 J2を優勝した新潟や山形、徳島などが筆頭で、その他にもパスサッカーを展開しているチームは多い。
 特に山形はその典型で、5レーンを意識したパスワークが特徴です。
 ジェフもそのサッカーに手を焼いて、今年9月には0‐2で敗れています。


 山形のスタイルを振り返ると、攻撃時に左右SBが中央前方に位置して、ボランチのような仕事をするいわゆる偽SBになります。
 左右SHはワイドに開いて高い位置で起点になることで、相手守備ブロックを横に広げて中央にスペースを作る。
 こうして出来た中央のスペースで、トップ下などが動き回って間で受けて、そこにボランチや偽SBも飛び出していく。

 以前も図を使ってまとめましたが、これが5レーンを使ったポジショナルサッカーの基本ロジックの1つといえるでしょう。

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 そうなると補強ポイントとして考えられるのは、ビルドアップに貢献できるSBではないでしょうか。

 新潟の藤原、堀米、山形の半田、川井、徳島の新井、山口の橋本など、パスを出せるSBの存在は現代パスサッカーの肝となっている印象ですし、カタールW杯でもSBがビルドアップの起点となるチームは多い。
 サイドにもパスを出せる選手を置ければ、より広範囲でパスワークを展開できる。
 さらに中央でハイプレスを受けた際にも外でかわすことが出来るし、相手のプレスを分散させることにも繋がります。

 尹監督は守備的なスタイルで高さのあるSBを好む傾向にありましたが、SBに求められるものは大きく変わる可能性がある。
 福満も技術力のあるSBですが、本来は2列目の選手で細かなビルドアップはそこまで得意ではない印象もあります。
 理想を言えば左右のSBにパス出しを要求したいところではないかと思いますが、片方だけでもパスを出せるSBが欲しいところではないでしょうか。


 あるいは、3バックにして技術力のあるCBを補強するか。
 3バックなら大分の三竿のような左効きのCBが欲しいところで、現状だと佐々木の成長もポイントとなるかもしれませんし、怪我の多かった鈴木大輔の状態も心配です。
 また、パスサッカーのチームはラインを上げプレスからのハーフカウンター狙いもセットになることが多いので、現在の構成だとCBの背後への対応にも不安があるように思います。

 また、山形のように、ワイドで縦に仕掛けられるSHを配置する形もトレンドの1つとなっています。
 今年の構成だと末吉、秋山などがいるわけですが、あまり人数は多くない。
 また、トップ下には縦横無尽に動き回って間で受けて仕掛ける選手が欲しいところで、欲を言えばそこも足りていないのかもしれません。


 なお、徳島は4‐1‐2‐3がメインで、右ウイングにCFもこなせる選手を置き、その分右SBが上下する形でした。
 そういった細部は監督によっても選手構成によっても異なるでしょうが、大枠は近いところがあると思います。
 ここまでは、欧州風のパスサッカーをしていた山形や新潟などを参考にした話。

 しかし、小林コーチと仙台でタッグを組んでいた渡邉晋監督の山口などでのサッカーは、5レーンを強く意識しながらもまた少し違う形になっていました。

 システムにもよりますが、上記の場合は4‐4‐2でスタート。
 1枚のボランチが最終ラインまで下がって、CBと3枚でビルドアップし相手のプレスを引き付けます。

 その分、左右SBは高い位置を取って、SHのような役割を果たす。
 そして、左右SHは中に入って、ハーフスペースにポジション取り。
 これによって5レーンのうち、4つのレーンで後方からのパスを受ける準備が出来ます。


 そこへ1ボランチ状態になった中央の選手から、左右前方へとパスを散らす。
 この選手がタクトを振るわけですが、2列目で4レーンに選手が位置取っているため、前へのパスコースが多いことがポイント。
 また、このボランチがうまく相手のFWとMFで受けられれば、相手のMFを引き付けられるので、それによって2列目が空く効果も狙った3‐1‐4‐2への可変システムだったのではないかと思います。

 また、渡邉監督の場合、仙台時代から2トップを選択することが多かった。
 FWの裏抜けの意識が高く、山形のようにSHを左右前方に張らせて相手を横に引っ張るのではなく、FWの裏への動きで相手を後方に押し下げ中盤を空ける発想だったのかもしれません。
 また単純に2トップにすることで、前線の厚みを大事にしたかったのかなとも思います。


 上記の図は4‐4‐2から3‐1‐4‐2に変化する例ですが、4‐1‐3‐2からSB1枚が後方に残って3‐1‐4‐2になったり、初めから3‐1‐4‐2でスタートする形もありました。
 最終的には攻撃時に3‐1‐4‐2になるわけですが、試行錯誤を繰り返してたように思います。
 そこは山口の選手層にも問題があって固定化できなかったのかもしれませんが、1ボランチスタートだと守備バランスに苦慮することも多かった印象があります。

 渡邉監督に近いスタイルを目指すのであれば、機動力と得点力のあるFWが欲しいところではないかと思います。
 現在横浜FMの西村も渡邉監督時代の仙台で活躍していましたが、見木の成長に期待しつつ、見木のライバルが欲しいところ。
 また、このスタイルでもぼらんちはもちろん、CBやSBにビルドアップの出来る選手が欲しいところだと思います。


 最後に小林コーチが就任してからのジェフのパスワークも振り返ると、同サイドにSHやボランチ、FWやCBなどの4人が集まって、ハーフスペースも使いながらパスを繋いでいきました。
 この場合でもパスを繋げる選手を集めることが大事で、左右に流れてもパスワークに参加できるFWやCB、SBなどが欲しいところでしょうか。
 細かなポジションに関しては、4バックか3バックかで状況が変わると思います。

 ただ、サイドでパスを回しても行き詰ることが多かった。
 その原因はワイドとハーフレーンを使っても2レーンしか使用していないことにあり、窮屈なパスワークになっていたことが大きかったのではないでしょうか。
 渡邉監督の山口は中盤の底から2列目の4レーンを狙える状況にあったわけですが、5レーン理論の大きなポイントはどのレーンも狙える状況を作り出すことによって、相手のマークを分散することにあると思います。


 また、パスワークの流れは出来たとしても、いかに素早く繋ぐことができるか。
 渡邉監督の流れもくむ今年の山口は、最終節でジェフと対戦し、前半に素晴らしい攻撃を仕掛けてきました。
 それもスピード感のあるパスワークが出来ていたからこそだと思います。
 
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 また、オシム監督の追悼試合でも取り上げたように、当時のジェフもワンタッチパスやスピード感ある動き出して攻撃を展開していました。

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 いくらポジショナルプレーで良いポジションを取ったとしても、前後のスピードが遅ければ相手に潰されてしまうわけで。
 パスワークを構築するベースを作った上で、いかにスピードを上げられるかが、現代パスサッカーにおいて重要なのではないかと思います。

 補強ポイントをまとめるとSBやCBなどにパスの出せる選手がもっと必要で、プレスに行けて裏抜けも出来るFWや縦に突破できるSHなども欲しいところでしょうか。
 理想で言えば動けるトップ下やパスを繋げるGKなども必要だと思いますし、基本的には細かなテクニックがあり機動力や運動量も持ち合わせたモダンな選手を多く配置したいところでしょう。
 過去を見ても監督交代の1年目は非常に大事だと思いますしチームのスタイルも変わる予定ですから、思い切ったオフの動きも必要なのではないかと私は思います。